今回のテーマ「色覚」のサイエンス
色が見えるという現象は、非常に不思議で複雑なものです。
人間の目は青、赤、緑の色を区別して捉え、それが脳の中で合成されることで多彩な色調として認識しています。
一方で犬や猫、昆虫など他の生物は人間とは異なる色の見え方をしています。
今回は、そんな色の見え方について解説します。
色が見える、というのは考えてみると不思議な現象です。
光の中にはいろいろな色の成分が含まれていますが、私たちが普段見ている色は、物質に当たって反射された光なのです。
人間の目の奥には網膜という構造があり、ここで光の色を感じとっていますが、人間の場合、青、赤、緑という3つの色を区別して捉えることができます。
それが脳の中で合成されることで、様々な色調として認識しています。
例えば、りんごが赤く見えるのは、りんごの表面に当たる光の成分のうち、赤い光だけが反射され、他の色の光は吸収されているということです。
白はすべての光が反射され、黒はすべての光が吸収されることでそれぞれの色に見えるのです。
虹が七色に見えるのは、太陽光に含まれるさまざまな色の成分が、空気中の水滴を通り、波長ごとに分解されて光のスペクトルを作るからです。
一方で、犬や猫の場合、青と赤しか見ることができません。
つまり赤と緑を区別することができないのですが、犬も猫もそれで別に不自由を感じているわけではありません。
人間が赤と緑を区別できるようになったのは、人間の祖先であるサル以降のことと考えられています。
サルが森の中で生活するようになり、緑の葉っぱが生い茂る中で、赤く熟した果物や実を見つける能力を獲得することが進化の上で有利だったからだ、と説明できるのです。
このような過程で進化を遂げてきた色覚ですが、人間は特に色に敏感な生き物です。
そのため、文化や芸術という観点でも豊かな色覚が育まれてきました。
古代の人たちは、布をきれいな青に染める方法を探し求め、タデ科の植物の色素インディゴを見つけ出しました。これが今もジーンズの染色などに使われる藍染です。(フシギなTV No.35「青は藍より出でてイロイロ変化」)
しかしインディゴは布の繊維に結合し、空気にさらされて初めて青くなるという特性を持っているため、画用紙やキャンバスの上で使用する絵の具としては不向きでした。
絵の具としての青色は、17世紀にオランダの画家フェルメールが作り出したものがよく知られています。
フェルメールは当時、金よりも高価だったと言われるラピスラズリを砕いて作った青い粉を使って「真珠の耳飾りの少女」という絵の青いターバンを描きました。(フシギなTV No.5「フェルメールと浮世絵の青」)
この絵の少女のターバンは、今も鮮やかな青で世界中の人々に愛されています。