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フェルメールと浮世絵の青(#5 青色)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「青色」のサイエンス

フェルメールと葛飾北斎の絵に共通する美しい青色。同じような色に見えてもその原料や特性は全く違うものだったんです。今回は2人の天才画家が愛した「青色」の秘密についてサイエンスの視点で紐解きます。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

鮮やかな青を絵画の中に表現したい、というのは古来、芸術家の夢であり、挑むべき課題でもありました。というのも、青は、海や空、遠い山並みなど自然界にはいくらでも存在するのに、そこから青い絵の具を取り出してくることはできなかったからです。
青い染料としては植物の藍(インディゴ)やツユクサの青が知られていましたが、退色しやすく、また絵の具として塗るのには向いていませんでした。わずかにコバルトや銅の化合物が青い絵の具として用いられるばかりでしたが、薄い空色にしかなりませんでした。しかし時代を経ると、青が高貴で重要な意味を持つ色になってきました。例えば宗教画では、聖母マリアの象徴である青いマントを表現するために鮮やかな青が必要になりました。そこで登場したのが、フェルメールが使った青です。別名、フェルメールブルーと呼ばれるこの鮮やかな青は、ラピスラズリという鉱物を細かく砕き、その中から特に青い粒子を集めたものでした。フェルメールはこの青を使って、青いターバンや衣類を見事に描き出しました。ただし、ラピスラズリは鉱物なので、粒子が重く、水には溶けません。つまり薄く引き伸ばしたり、にじませたりすることはできなかったのです。

説明画像

それができるようになったのは、フェルメールから100年以上が過ぎた頃、ドイツで発明されたベロ藍(プルシアンブルー)でした。ベロ藍は鉄イオン化合物で粒子が非常に細かく、水中に分散させることができます。これにより、青の濃淡を作ったり、にじませたりといった表現が可能となったのです。ベロ藍を活用したのが江戸の絵師、葛飾北斎です。大波や富士山の空を鮮やかに描き出しました。

説明画像

現在では人工的な化学合成によってさまざまな青い絵の具や染料が作られ、活用されています。ちなみに、食品用には合成着色料だけでなく、天然の藻類から抽出された青い天然色素フィコシアニンがあります。皆さんも食べたことのあるアイスなどに利用されています。

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