フシギなTV

聞こえる音 聞こえない音(No30 音)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「音」のサイエンス

音の正体は波のような振動です。そして音は生物たちにとって重要な情報源です。
私たち人間に加えて、地中や水中を伝わる、人間には聞こえない生物たちの音の使い方についてもご紹介します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

生物の「五感」と呼ばれる感覚は外界の様子を知るために進化してきたセンサーです。
中でも聴覚、つまり音は、振動をキャッチしています。例えば人間は、音の発生源から出発した振動(波)を、耳の鼓膜がキャッチして耳の奥に伝えます。
なお、伝える媒体、つまり空気や水、土、金属などがないと、振動は伝わりません。そのため、媒体が何もない宇宙空間(真空)では、音が聞こえないのです。

音が伝わる速度は、光が伝わる速度に比べると、かなり遅めです。振動が空気や水の中を伝播してくるのに時間がかかるからです。みなさんも、雷や花火が、ピカッと光ってから、ドーンと音がするまでに間があることを経験したことがありますよね。音の速度は一秒間におよそ340メートルですが、光の速度は一秒間におよそ30万キロメートルで、音の100万倍の差があるのです。

水の中は密度が高いので、空気よりも5倍早く音が伝わります。音を発して、その反響から対象物との距離や形、方向などを確かめる「エコーロケーション」という方法を使って、仲間の位置を感知したり、獲物を探したりできます。ただしイルカやクジラは声帯がないので、人間のように声を出すことはできません。その代わり、鼻の穴の奥のひだを震わせて、歯ぎしりのようなクリック音、笛のようなホイッスル音、ギャアギャアという威嚇音など、いろいろな音を出すことができます。光が届きにくい海の中で、音によるコミュケーションは大活躍しているのです。

音の解説図

視界が遮られる暗闇やジャングルでも、音によるコミュニケーションが生物を繋いでいます。鳥のさえずり、セミやコオロギの鳴き声、カエルの合唱などはどれもパートナーを呼ぶための大切な手段になっています。

最近は、歳をとって難聴気味になった人でも、骨からダイレクトに聞くことができる骨伝導補聴器や、ほほの骨に到着する骨伝導ヘッドホンなども活躍しています。NGKサイエンスサイトでも、耳をふさいでいても音を聞くことができる骨伝導の工作「試してフシギ(No.151)骨で聞くラジオ」の工作を紹介しています。

音の解説図

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