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昆虫の羽が人間に知恵を授ける?(No.8 バイオミミクリー)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「バイオミミクリー」のサイエンス

既知の生物種の約半数を占めるといわれる昆虫は、あらゆる環境に適応できるよう進化を遂げてきました。
今回はそんな昆虫たちをイノベーションのヒントにしたバイオミミクリーやバイオミメティクスを紹介します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

昆虫は、およそ300万種といわれる全生物種のうち150万種、つまり半数を占めるといわれています。地上だけでなく、樹上、水中、空中、高山、寒冷地、乾燥地など、あらゆる環境に適応できるよう進化を遂げてきました。
今回紹介した「バイオミミクリー」や「バイオミメティクス」は、イノベーションのヒントとして、自然に学ぼう、進化の成果を取り入れようという考え方で、ここ20年ほどの間で発展してきました。
人間の発想には限界があることに対して、自然は無限のデザインリソースであることが背景にあります。

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例えばトンボの羽は、細くて強靭な筋肉繊維で胴体とつながれています。この筋肉繊維は、ぎゅっと絞り込まれた、ごくわずかな部分で胴体と頑丈につながるヒンジのような構造をしています。ここが細いため、トンボは羽を自由に回転させることができます。しかも柔軟、軽量ながら強く、そのため激しい羽ばたき運動に耐えることができるのです。このように、絞り込んだヒンジで、繊維を編む方法は、腕時計の胴体部分とベルトをつなぎ合わせる部分に応用されています。耐久性があり、かつ柔軟で、デザイン的にも優れています。

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生物素材は、すべてリサイクル可能な有機物で構成されています。そして生分解性があります。身体の素材、巣、繭など硬いものでも、他の生物の餌や資源になるようにできています。つまり、生物素材は、あらかじめ分解されることを予定されて作られています。これは最も環境に優しいリサイクル方法です。人間だけが自然のサイクルに戻せない、一度つくったら壊せない・壊しにくいものを量産しています。このためゴミ処理が大問題になっているのです。これを大いに反省し、昨今では環境にやさしい素材や暮らしが見直されています。

サーキュラー・エコノミー、リサイクルという視点からも、バイオミミクリー技術が注目されています。生物多様性は、長い進化の過程で環境に適応するため獲得されてきた自然の合理化といえます。特に、生物多様性の約半分は昆虫が占めています。それだけ昆虫は、あらゆるニッチに進出し、千差万別に適応しているのです。これは人間のテクノロジーにとって、無限のアイデアの宝庫といえます。昆虫の仕組みに学ばない手はありません。このように自然界の素材を模範としたデザインは、人間のイノベーションにとって大きな可能性を持っているのです。

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