フシギなTV

昨日と今日のあなたは違う!?(#4 PCR)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「PCR」のサイエンス

ここ数年でウィルス検査の方法としてもよく聞くようになった「PCR」という言葉。でもどんな技術か知っていますか?今回はそんなPCRの仕組みを紐解きながら、生き物の体内で日常的に繰り返されるDNAの複製について、実験を通して解説します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

人間の身体は約37兆個もの細胞でできています。細胞はたえず消滅しつつ、たえず生成されています。たとえば消化管の細胞は2〜3日で入れ替わります。古い細胞が剥がれ落ち、新しい細胞が押し上げられて置き換わります。新しい細胞は、幹細胞が分裂することによって作られます。幹細胞は分裂するときに、DNAをコピーして新しい細胞に手渡します。細胞内でDNAがコピーされる際には、まずDNAの二重らせん構造がほどけて、2本の鎖が一本ずつになります。その一本を鋳型にして、もう一本が合成され、二重らせんが二組できます。これが新しい細胞に分配されるのです。細胞の中では、DNAをほどく酵素やDNAを合成するポリメラーゼ酵素など、複雑な仕組みが働いて、DNAがコピーされます。

DNAの比較

生きている細胞の中でしかコピーできなかったDNAを試験管の中で人工的に素早くコピーする画期的な技術が1980年代に開発されました。これがPCR法です。PCRとはポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)の略称です。PCR法を発明したのは、キャリー・マリスという人で、もともとサーファーだったという変わり種の科学者でした。PCR法は、ウイルス検査の他、親子鑑定やDNA指紋法(犯行現場から採取された髪の毛などからDNAをコピーし、犯人を突き止める方法)、ゲノム研究などに広く応用されています。

キャリー・マリスの書籍表紙
著者:キャリー・マリス(福岡伸一訳)
出版社:早川書房

ところで、細胞はなぜ常に入れ替わっているのでしょうか。それはエントロピーの増大に抵抗するためです。エントロピーとは乱雑さのこと。細胞内には老廃物が溜まったり、酸化が起きたり、タンパク質が変性したり、あるいはDNAが変異したりして、いつも乱雑さが増大しています。この流れに抵抗して生き延びるために、細胞は率先して自らを壊し、作り変えているのです。人間の社会や組織も、生物の仕組みを手本に、絶えず柔軟にリニューアルを行うことができれば、サスティナブル(持続可能)なものに生まれ変わることができるはずです。

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