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人間も発電?電気が世界を動かしている(No37 生体電気)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「生体電気」のサイエンス

私たちの体の中に電気が流れている、というと驚くかもしれませんが、例えば筋肉は運動神経に電気が流れることによって動きます。
体内のさまざまな活動のエネルギーになっているのがATPという物質です。今回は、生物のエネルギー通貨であるATPと一般の電池との共通点について解説します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

身体における情報伝達のしくみには、体液性の方法と神経系の方法があります。前者は、インシュリンやアドレナリンのようなホルモンや伝達物質が血液中を流れて情報を届けるもの。後者は、ニューロンという神経細胞が連結してできた神経回路を微弱な電気が流れて情報を届けるものです。この方法の利点は、目的地にいち早く情報を届けられることと、情報のオン・オフがすばやく切り替えられることです。

今回は、身体の中に電気が流れていることを体験する実験を行ってみました。筋肉の動きは運動神経に電気が流れることでコントロールされます。キャッチャーをめがけてボールを投げるときも、とっさにブレーキを踏む動きもこのしくみが働きます。

生体電気の解説図

一方、意識しなくても神経回路の電気のオン・オフでコントロールされている身体機能があります。それは寝ている間でも肺が動いて呼吸ができること、心臓が動いて血液が流れることなど、生きる上でなくてはならないものです。

では電気の源は何でしょうか。

動物にとってのエネルギー源は食料です。人間の場合、摂取した食料は細胞の中のミトコンドリアで燃焼され、そのとき発生するエネルギーは、ATPという物質に手渡されます。ATPは、アデノシン三リン酸の略号です。リン酸が3つ連結しており、動画内でも説明したように、ごくわずかな時間ではありますが、リン酸の結合の中にエネルギーを貯めることができます。ATPのエネルギーは、タンパク質やDNAなど体内のさまざまな生体物質の合成や代謝に使われます。そしてなにより神経回路を流れる電気を発生させ、筋肉を動かすことなどに使われます。
また、ATPは人間だけでなく、ホタルの発光や鳥の羽ばたき、植物の光合成など、あらゆる生物に存在するエネルギーなのです。

生体電気の解説図

電気をリチウム電池に貯めて、電気自動車や携帯電話を利用している人間から見ると、生命体の中でATPももっと長持ちすればいい、と思ってしまいがちですが、むしろATPの寿命が短いことが生命の活動を支えています。生命は、たえず分解と合成を繰り返しながら、ゴミや老廃物を捨て続け、細胞の活動と秩序を維持しています。これをわたしは動的平衡と呼んでいます。動的平衡とは、物質とエネルギーの絶え間のない流れです。動的平衡をとどめないために、ATPはどんどん作られつつ、どんどん消費されていきます。この流れの上にバランスをとっているのが生命というものです。

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