今回のテーマ「バイオマス」のサイエンス
光合成によって酸素や栄養物質を作り出してくれる藻類に、カーボンニュートラルの救世主として注目が集まっています。自然界に30万種類も存在しているといわれる藻類の可能性を紹介します。
地球上で生物が存在できるのは、太陽からエネルギーが降り注いでいるからです。太陽は地球を温めてくれますが、温かいだけでは生物は生きていけません。太陽のエネルギーをため込んだ栄養物質が必要です。この栄養物質は特別な生物でないと作ることができません。それが植物です。植物だけが光合成によって太陽のエネルギーをため込んだ栄養物質である糖をつくることができます。
さらに植物は糖を材料にして、アミノ酸やタンパク質、あるいは脂質(油)などの栄養物質をつくり出すこともできます。
そして、この光合成は地上の植物だけが行っているわけではありません。藻類も重要な光合成の担い手です。
藻類は水陸問わずあらゆるところに生息しています。藻類による影響は大きく、地球の表面のうち約70%が海であり、彼らはそこに降り注ぐ太陽のエネルギーを栄養素に変えてくれているのです。また、藻類は食料としても利用されつつあります。沿岸の浅い海に生息するワカメや昆布などさまざまな海藻は食料としておなじみですが、植物プランクトンなどの微細藻類はサプリメントなど一部の用途を除いてはあまり活用されていませんでした。
ところが最近になって、微細藻類は人間の食料供給と競合しないことや少ない資源で培養可能であることから、世界中が注目しています。
近年では、人間が石油や天然ガスを燃やすことで、大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が増加していることが地球温暖化の原因になっています。
従来使われてきた石油に代わる、モノづくりの原料が模索されていますが、藻類に頑張って光合成をしてもらいつつ、オイルを生産させてバイオ燃料として用いたり、藻類の体内で食品や医薬品、工業製品の原料をつくらせたり、藻類自体を食料や飼料として利用したりできれば、カーボンニュートラルの目標により近づくことができるのです。