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なぜ光る!? 生物の光が未来を救う?(No25 発光)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「発光」のサイエンス

燃料も電気も使わずに光を生み出すホタル。光へのエネルギー変換効率は97%ともいわれ、白熱灯などの照明と比較して驚くべき省エネルギーなのです。
今回は、そんな生物発光のメカニズムや、なぜ光るのか?などを紹介します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

暗い夜を照らし、何が潜んでいるかわからない闇を消し去りたい――。光に対する人類の積年の願いは、古くはミツバチの巣や獣脂、松やにを原料とするろうそくを生み、あるいは、植物油や鯨油を燃やしてランプとする時代を経て、石油ランプなどが開発されました。
しかし、ものを燃やすと二酸化炭素も発生します。ものを燃やさずに光が得られるようになったのは、120年前、エジソンが白熱電球を発明して以降なのです。
白熱電球は電気をフィラメントに通じることで光りますが、光とともにたくさんの熱が生じます。つまり、燃料や電気のエネルギーのうちかなりの部分が熱に変わってしまうのです。
近年登場したLED電球は、電気を光に変える効率が高いものの、それでも熱は発生します。

発光の解説図

しかし自然界を見渡すと、燃料も電気も使わずに光を生み出すことのできる生き物が存在します。その代表例は、番組でも取り上げたホタルです。ホタルは、細胞内で、酵素タンパク質ルシフェラーゼの働きによって、発光物質ルシフェリンを分解し、発光します。海洋微生物の夜光虫も同じ原理で光ります。これらの発光生物が光る理由は、オスとメスとのコミュニケーションのため、と考えられています。

発光の解説図

もし、このような仕組みで光を取り出すことが人間の生活にも応用できれば、熱も二酸化炭素も出さないエコな照明器具を作り出せます。しかし、ホタルの光は弱く、ルシフェリンがなくなると光らなくなる、つまり発光時間もごく短いので、照明として使用するのは容易ではありません。

一方、ルシフェラーゼとルシフェリンの組み合わせは、医学や生物学の研究で大いに役立っています。細胞の中で、特定の遺伝子のスイッチがオンになったりオフになったりする瞬間は、ふつうは目に見えませんが、これを可視化できるのです。
まず、研究対象の遺伝子にルシフェラーゼの遺伝子を組み込んで、細胞にルシフェリンを注入しておきます。
その遺伝子のスイッチがオンになると、ルシフェラーゼが生産され、ルシフェリンが酸化されることで細胞を光らせることができます。
この光を測定することによって、遺伝子の発現(スイッチがオンになること)の程度を観察できるようになったのです。
このように、今後も生物発光は興味深い研究対象として発展することは間違いないでしょう。

発光の解説図

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