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ここにもあそこにも?だけじゃないヘリウム(No24 He)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「He」のサイエンス

声が変わるパーティーグッズとしてよく知られるヘリウムですが、実は私たちの生活に欠かせない半導体や医療機器など、さまざまなところに使われているのを知っていますか?
今回は、身近なようで意外と知られていないヘリウムの特性や用途を紹介します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

皆さんは「元素の周期律」をご存じでしょうか。中学校の理科あるいは高校の化学で習います。水兵リーベ、僕の船・・・という暗記用の語呂合わせもあります。水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素/ボロン(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、ネオン(Ne)・・・をつないだものですね。周期表は元素を重さ(正確には質量数といいます)順に並べたものです。周期表の最初の方に登場するヘリウムはそれだけ軽い(質量数が小さい)ということです。元素の重さは、元素の中心にある原子核の大きさによって決まります。

周期表を縦に見ると、同じ性質を持った元素が並んでいます。これは最外殻の電子の数が一定の周期で循環しているからです。周期表の一番右側の縦列には、順に、ヘリウム、ネオン、アルゴンがあります。これらは希ガスと呼ばれる仲間で、今回、番組で取り上げたヘリウムは、ここに属しています。 そして貴ガスに属する元素は、原子核と電子のバランスが均衡をとっていて、とても安定した元素である、という特徴があります。

Heの解説図

安定している、というのは、他の元素と反応を起こしにくい、ということです。軽さの点では、ヘリウムよりも水素の方が軽いのですが、水素は不安定な元素で酸素と結びつきやすく、酸素と水素を混ぜたものに点火すると爆発が起こります。水素風船もヘリウム風船も空気より軽く、浮かび上がるという点は同じですが、広告用のアドバルーンなどには安全なヘリウムが利用されます。
ヘリウムは1立方メートルで約1kgの浮力があります。私は『ドリトル先生ガラパゴスを救う』という小説を書きましたが、この中でドリトル先生一行は、 ヘリウムを利用して特大の気球を作り、探検にでかけることになります。

ただしヘリウムを集めてくるのはなかなか大変です。大気中にはごくわずかにしか存在しないからです。動物と会話できるドリトル先生は、コウモリが教えてもらい、鍾乳洞の中に発生する高濃度のヘリウムを発見することができましたが、私たちは地下の天然ガスの中に微量に含まれるヘリウムを工場で精製しなければなりません。ヘリウムは医療や工業など、さまざまな分野で重要な元素ですが産出国は限られており、日本は全量を輸入に頼っています。そのため近年では使用済みのヘリウムを回収し、再利用する取り組みに注目が集まっています。

Heの解説図

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