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あなたは感じる!? フェロモンの世界(No22 情報伝達)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「情報伝達」のサイエンス

魅力的な人を指して「フェロモンが出ている」なんて例えますが、それって本当? 多くの生物の行動がフェロモンに支配されている一方、実は人間に関しては科学的によく分かっていません。今回は、フェロモンなどの科学物質を介した、生物のさまざまなコミュニケーションを紹介します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

百聞は一見に如かずということわざがあるくらい、人間は視覚から多くの情報を得ています。
ところが人間以外の生物にとっては、必ずしも視覚が第一優先の感覚とは限りません。
特に、熱帯のジャングルに生息する生物は、葉っぱや大木が視覚を遮ってしまうので、忍び寄る敵や、隠れている異性を目で発見することは容易なことではありません。番組で紹介したシロアリのように、巣の内部が暗い場合も視覚はあまり役に立ちません。
そんなとき活躍するのが嗅覚です。餌のありか、天敵の存在、あるいは味方やパートナーの発見に匂いが重要な手がかりとなっていて、嗅覚も発達しています。
同じ哺乳動物でも、ヒトの何倍もの数の嗅覚受容体遺伝子を持っている生物がいるのです。

フェロモンの解説図

ファーブル昆虫記にも、雌の蛾が発する匂い物質(フェロモン)に引き寄せられて、視覚では到底確認できないほどはるか遠くから雄の蛾が集まってくる話が出てきます。
蛾は空気中に漂うフェロモンの濃い薄いが嗅ぎ分けられるので、どちらに飛んでいけば、そのフェロモンの源があるのか察知できます。
このような濃度の段階的な差異のことを「濃度勾配」といいます。

もうひとつ、蛇の舌の先は二股に分かれていますが、これは何のためでしょうか。
実は、蛇は空気中の匂い物質やフェロモンを舌でキャッチしてそれを喉の奥の両側に対になっている匂い検出器官に送り届けているのです。これを鋤鼻(じょび)器官といいます。
蛇にはちゃんと鼻もあるのですが、鼻では感知できない匂いをこの鋤鼻器官で察知しているようです。
実は、ヒトの喉の奥にも鋤鼻器官の痕跡があります。実は、痕跡というよりも一部はまだ機能を持っている可能性があるといわれています。
つまり、ヒトも鼻では分からない匂い物質(あるいはフェロモンのような物質)を知らず知らずのうちに察知しているのかもしれません。

コンピューターやインターネットの発達に伴い、視覚や聴覚、味覚、触覚(振動や座席の揺れのような動き)による情報伝達は素早く、スムーズにできるようになってきました。
今後、センシング技術などのテクノロジーの発展によって、わたしたち人間も、動物たちのように、より繊細な匂いを察知できるようになり嗅覚による新たなコミュニケーションの手法が開けるのでしょうか。

フェロモンの解説図

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