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実は最新技術にも!? それ、なぜくっつくの?(No21 接着)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「接着」のサイエンス

くっつく能力を持つ生き物はさまざまですが、それぞれ方法や原理が異なっています。
今回はオナモミ、ムール貝、ヤモリを例にした生物のくっつく能力やその応用技術と、さらに強力に接着する化学結合技術をご紹介します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

生き物はさまざまな方法で、くっつく(どこかに自分の身体を接着する)ことができます。くっつくことによって、虫など小さな生物は、鳥などの外敵についばまれてしまわないよう、また、風や水に流されてしまわないよう、自分を守っているわけです。あるいは、ヤモリのように、垂直面や天井面にくっつきながら、歩くことができると餌を探したり、仲間を見つけたりする行動範囲が広がります。

今回は、そんなくっつく能力を持っている生物の例として、オナモミ(くっつき虫)、ムール貝、ヤモリを取り上げてみました。それぞれ、くっつくための方法と原理が異なっており、これを応用することによって人間のテクノロジーに役立てることができます。オナモミのトゲトゲがくっつく原理からは、面ファスナーが生まれました。

接着の解説図

最近注目されているのは、ムール貝の接着剤です。ムール貝は、波打ち際の岩などに貼り付くことで、自分は流されないように、それでいて流れてくる餌を食べながら、成長することができます。ムール貝の分泌液を分析することによって、水の中でもはがれない接着剤を開発する研究が進んでいます(ばんそうこうや切手などは水にぬれるとはがれてしまいますよね)。

接着の解説図

生物がつくり出す接着剤と、人間がつくり出す接着剤の大きな違いは、はがしたいときに、自由にはがせるかどうかという点です。人工的な接着剤の多くは、強力に接着するものの、一度接着すると固まってなかなか取れず、ゴミとして捨てた後も残ってしまうという課題があります。生物の接着剤は、タンパク質などの有機素材でできていて、強力ではあるものの、特別なタンパク質分解酵素を加えると、たちまち分解されて、はがせるようになるものが多いのです。つまり、生物の接着は、くっつくことだけでなく、はがすことまで前もって考えられているところがすごいところですね。このあたりも未来の環境素材の開発に応用したいポイントです。

接着の解説図

一方、ヤモリがガラスや壁に貼り付けるのは、接着剤でも吸盤でもなく、指に生えている微小なヒゲ構造がもたらす分子間力のおかげです。
さらに、接着剤を用いずに、原子を直接結合して異素材をくっつける技術は最先端のものづくりで実用化されています。
詳細はこちら ▶ 日本ガイシの解決テクノロジー

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