フシギなTV

地球の宝物 土の真実(No.17 土壌)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「土壌」のサイエンス

秋になると土の上に降り積もる落ち葉。いつの間にかなくなっているのを不思議に思ったことはありませんか?
実はこれ、土のおかげなんです。今回は、地球の生命を支える土について解説します。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

今回のテーマは「土」です。土は単なる砂粒の集まりではありません。土をさわるとほんのり温かく、湿り気があり、独特の匂いがします。なぜなら土は生きているからです。今回はそのことをぜひ知ってもらいたいので取り上げました。

土の上に降り積もった落ち葉はいつの間にかなくなってしまいます。またセミなどの死骸も姿を消してしまいます。これは土の分解力によるものなのです。

土の解説図

その主役は、ミミズや線虫(線虫というのは数ミリの透明な生物です)、小さな昆虫、それから微生物たちです。一握りの土の中にはこれら生物たちが何万、何億匹もすんでいます。彼らが、落ち葉や死骸を食べて分解してくれています。分解されてできたもの(これを有機物といいます)が土の主成分です。これはまた別の生物の栄養分になります。なので土は栄養素のかたまりです。土の中では生物による栄養素の代謝が常に行われているので、土は温かく、湿っており、匂いがします。有機物は最後は植物の栄養になります。これを使って植物は葉っぱを茂らせ、果実や種を実らせます。これがまた虫や鶏、動物たちの餌になります。もちろん私たち人間の食料にもなります。地球の生命は土によって支えられているのです。

土の解説図

ですから地球の最初には、土はなかったのです。岩石と砂しかありませんでした。生命が誕生し、生き物たちの活動によって土はつくられました。土は貴重な生物資源なのです。

土の中の生物は、意外な形で人間に役立っています。線虫は、細胞の数が少ないので(人間に比べて、という意味です。人間はおよそ37兆個の細胞で出来ていますが、線虫は約千個の細胞から出来ています)、受精卵から多細胞生物がどのように形作られるかを研究する上で格好のモデル生物になっています。線虫の研究で、ノーベル賞をとった学者さんもいます。
また、土の中にすんでいる微生物たちもすばらしい能力を持っています。感染症の治療に使われる抗生物質のほとんどは微生物がつくり出す有機物として発見されました。ペニシリンやストレプトマイシンなどです。
日本の大村智先生が見つけたイベルメクチン(寄生虫を駆除する薬)もそうです。この研究で大村先生は、2015年のノーベル賞に輝きました。土は、人間にとって無限のリソースなのです。

このサイトが気に入ったらシェアしてください

page top