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もしも人類が不老不死になったら!?(#10 生態系)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「生態系」のバランス

古来より、人類の夢として挙げられる不老不死。でもそれは本当に良いことでしょうか?
今回は「不老不死」のベニクラゲや、一定の周期で発生する「素数ゼミ」を取り上げながら、限りある地球資源の中で多様な生物たちが共存していくために大切なことは何か考えてみましょう。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

不老不死は、人間にとって永遠の夢でした。でも、不老不死は本当に良いことでしょうか。今回は、それを生物学的に考えてみたいと思い、テーマに選びました。人間が老いもせず、死にもしなければ地球上に人間があふれてしまいます。

不老不死の説明画像

一見、不老不死に見える生物は存在しています。例えば今回取り上げたベニクラゲ。でも正確にいうと、同じ個体がずっと不老不死なわけではありません。ベニクラゲも老化していきます。老化したベニクラゲは、ポリプという赤ちゃんの状態の細胞をつくり、そこからもう一度、生き直すのです。老化した細胞は死んでいき、一方、ポリプとなる若い細胞が生き残ります。若返りといってもいいですね。
これはいうならば、植物が一旦枯れるものの、また新芽を出して成長することに似ています。
しかし幼生のベニクラゲには天敵も多く、ほとんどが他の魚などのえさになってしまいます。なので若返りの技を持っていてもベニクラゲが増えすぎることはありません。自然のバランスはうまく保たれているのです。

ベニクラゲの成長過程

自然のバランスが保たれる例として、素数ゼミを取り上げました。13年周期と17年周囲で発生するセミです。二種のセミが同じ年に出現するのは、13と17の最小公倍数である221年に一回だけです。こうすることで同じ森林で資源をめぐって競合することをできるだけ避け、棲み分けているのです。また、同じ種が一気にたくさん発生することでパートナーを見つけるチャンスも増えます。

素数ゼミの写真

日本には素数ゼミはいません。そのかわりニイニイゼミ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシなどは少しずつ季節をずらして出現します。また好みの木や生息場所もすこしずつ異なると考えらます。このセミたちも自然のサイクルをうまく利用して棲み分けているわけです。

素数の説明図

このように自然界では生物はお互い譲り合って、バランスをとって生存しています。
一つの世代が寿命を迎えることで、次の若い世代に場所や資源をバドンタッチしているのです。
つまり生物の死は、ある意味で利他的(他の生物のためになる)なのです。
これは限りある地球資源の中で多様な生物たちが共存していくための、長い時間をかけて形成されたバランスです。あとから来た人間は、地球資源がすべて自分たちのものだと思っているかもしれませんが、人間も、環境全体や他の生物のことを考え、もう少し利他的に振る舞うことが大切なのです。

不老不死の問題点はもうひとつあります。もし、ずっと生きていることができれば、人間はきっとみなすっかり怠け者になってしまうことでしょう。だって今日できることは明日でもできるからです。今日は今日しかないからこそ生きがいが生まれるのです。

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