試してフシギ

酸素の常磁性強い磁力にひかれます(No.266)

強い磁力にひかれます 強い磁力にひかれます

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

シャボン玉の近くで磁石を動かすと、すっとついてきます。

そうなんだ!

鉄でもないシャボン玉が磁石にくっつくのはなぜでしょう? 実は、このシャボン玉の中に入っている気体は、 普通の空気ではなく、純度の高い酸素です。酸素は強い磁石を近づけると、ごく弱く磁石に引き寄せられる性質があり、このような物質を常磁性体と呼びます。この実験のように、酸素より密度の高い二酸化炭素で容器を満たし、その上に酸素でふくらませたシャボン玉を浮かべれば、酸素の常磁性を手軽に確かめることができます。
常磁性体は、通常の状態では磁性を持ちませんが、強力な磁界(磁場)の中では磁界と同じ向きに磁化されます。
つまり、常磁性体に磁石のS極を近づけると、磁石に向いた側はN極に、反対側はS極になり、磁石に引き寄せられるのです。
常磁性を持つ物質は、酸素のほかにアルミニウムやナトリウム、宝石のルビーなどが知られています。

①バケツや水槽などの深さのある容器
②重曹
③クエン酸
④計量スプーン大さじ
⑤計量カップ
⑥シャボン液
⑦シャボン液に付属の吹き具
⑧携帯酸素缶
⑨ネオジム磁石(直径約16mm、厚さ約2.5mm) 6個
・水
・厚紙などのふた
・はさみ

実験で使用した材料の詳細

・深さのある容器 大創産業 8リットルバケツ
・重曹 大創産業 落ち落ちV 重曹350g
・クエン酸 大創産業 落ち落ちV クエン酸200g
・計量スプーン大さじ エコー金属 計量スプーン3本組
・計量カップ 大創産業 計量カップ(容量250ml)
・シャボン液/吹き具 大創産業 12本入吹き棒しゃぼん玉
・携帯酸素 PIP SPORTS 携帯酸素 ACTIVE-MAX
・ネオジム磁石 大創産業 超強力マグネット 16mm 2個

※実験材料の一例です。準備する際の参考にしてください。

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    シャボン液に付属の吹き具を先から3.5cm程度の長さに切り、携帯酸素缶のノズルに差し込みます。

  • 2

    二酸化炭素をつくります。
    重曹とクエン酸を大さじ4杯ずつ容器に入れ、水200mLを注いで軽くかき混ぜ、ふたをします。

  • 3

    反応による泡立ちが落ち着いたら、吹き具にシャボン液をつけてノズルを軽く押し、容器の上に酸素のシャボン玉を飛ばします。

    ※火の近くで実験しないでください。

  • 4

    空中に浮いているシャボン玉に 連結したネオジム磁石を近づけ、ゆっくり引いてシャボン玉の動きを観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・二酸化炭素を発生させる容器は、バケツなどの深さのあるものを使ってください。深さが足りないと二酸化炭素が空気で薄まり、シャボン玉がうまく浮かびません。
・シャボン玉は酸素を少しずつ出して、なるべく大きくふくらませてください。
・酸素の常磁性はごく弱い磁性です。磁石をぎりぎりまで近づけ、できるだけゆっくり動かしてください。
・風や、冷暖房による空気の対流がない場所で行ってください。

宇宙でロウソクをともす? 酸素の常磁性に意外な利用法

無重量の宇宙空間では、たとえ酸素があっても炎が丸まってうまく燃焼が起こりません。重力が無いと対流が起こらず、酸素がスムーズに供給されないからです。この問題を、酸素の常磁性を利用して解決しようという研究が行われています。強い磁力によって酸素を動かし、人工的に対流を生み出すのです。そうすれば、重力の無い宇宙でも、地上と同じようにロウソクやガスを燃焼させることが可能です。
地上でも、燃料電池への応用が期待されています。
また、この酸素の常磁性を利用して、すでに製品化されているものに酸素濃度計があります。ボイラーなどの燃焼を監視、制御することで、環境や省エネルギーにも貢献しています。
酸素濃度計には、磁力を利用した製品の他に、酸素イオンを通すセラミックスであるジルコニアを利用した方式もあります。

鉄が磁石にくっつかなくなる不思議な温度

物質は磁界による影響の受け方(磁化)の違いで分類され、おもなものに強磁性体、反磁性体、常磁性体があります。(No.171「トマトは磁石がキライ?」参照)磁石によくくっつく鉄やニッケルなどは、強磁性体です。強磁性体の温度をどんどん上げて一定の温度以上にすると、ほとんど磁石にくっつかなくなります。つまり、強磁性体が常磁性体に変化するのです。この温度をキュリー点といい、鉄の場合は約770℃です。また、永久磁石も温度が上がることによって磁力を失います。
あらゆる物質は、ごく小さな磁石が集まったような状態です。常磁性体は、その向きがバラバラなために強い磁力を持てません。永久磁石は小さな磁石が常に同じ向きにならんでおり、強磁性体は磁石を近づけたときだけ向きがそろいます。物質の温度を上げると原子の動きが活発になり、永久磁石や強磁性体でも小さな磁石の向きがバラバラになります。そのため強い磁性が失われるのです。強磁性体が常磁性体に変わるキュリー点を発見したのは、放射能の研究で有名なキュリー夫妻の夫、ピエール・キュリーです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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