試してフシギ

ゴフ・ジュール効果ゴムの不思議な性質(No.261)

ゴムの不思議な性質 ゴムの不思議な性質

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

ゴムを温めたり冷やしたりすると、壁に映った光が上がったり下がったり。

そうなんだ!

鏡に光を反射させて、小さな変化を拡大して見る「光てこ」というしくみで、ゴムの性質を調べてみましょう。壁に映った光の動きでゴムの伸び縮みが分かります。ゴムに温風を当てると光は上に動き、氷を近づけると下に動きます。光の動きから考えて、ゴムは温めると縮み、冷やすと伸びているようです。
金属などの多くの物質は温めると膨張し、冷やすと収縮します。ところがゴムは、実験で分かるように逆に変化しています。ゴムのこの不思議な性質は、ゴムの弾性を生み出す構造と関係しています。ゴムはたくさんの分子が立体的な網のようにつながり、変形しやすく元に戻りやすい構造をしています。そのため、ゴムが伸びた状態では分子は手を伸ばしきった不自由な形しかとれませんが、縮むと自由な形をとりやすくなります。一般に物質は温度が上昇すると、より自由度の高い状態になるため、伸ばしたゴムを温めると縮むのです。ゴムの不思議な性質は、発見した人にちなんでゴフ・ジュール効果と呼ばれています。

①懐中電灯
②黒い画用紙
③小型の手鏡 1枚
④台にする板(30cm×5cm程度)
⑤布テープ
⑥注射器型スポイト
⑦虫めがね 1個
⑧ドライヤー
⑨氷
⑩プラスチックコップ 1個
・カッターナイフ
・セロハンテープ
・壁などの光を映すもの

実験で使用した材料の詳細

・懐中電灯 ジェントス GENTOS 懐中電灯 DF-007DB
・黒い画用紙 大創産業 色画用紙/くろ(10枚入)
・ゴムバンド 大創産業 ワイドゴムバンド30本 #420
・手鏡 大創産業 折り畳みミラー(小)
・台にする板 コーナン アガスチ工作材 5×60×600mm
・布テープ アスクル 現場の力 布テープ 幅50mm×長さ25m
・虫めがね 大創産業 拡大鏡(小)拡大率約2倍 レンズ径 約50mm
・ドライヤー 泉精器 IZUMI Allure マイナスイオンドライヤー DR-RM77-W ホワイト
・プラスチックコップ 大創産業 クリアカップ545ml

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    黒い画用紙に幅1mm、長さ1cmのスリットを開け、懐中電灯にかぶせてセロハンテープで固定します。

  • 2

    鏡の裏面を布テープで板の中央に貼りつけ、図のようにゴムバンドを掛けます。

  • 3

    壁などのスクリーンから1m程度離れた場所に、(2)をテープで下に固定し、懐中電灯、虫めがねを図のように配置します。

    懐中電灯の光が虫めがねを通って鏡に反射し、壁などにくっきりと映るように、鏡の角度と虫めがねの位置を調整します。

  • 4

    ゴムにドライヤーの温風を当てたり止めたりして、光の位置の変化を観察します。

  • 5

    プラスチックのコップに氷を入れ、ゴムの上にかざして光の位置の変化を観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・ゴムの張りがゆるいと変化が分かりにくいので、板の長さを変える場合はゴムの長さを調節してください。ゴムを掛けてセットしたときに、鏡が固定され容易にぐらつかないのが適正な状態です。
・ゴムの微小な変化を拡大して見せる装置なので、ドライヤーの風などで動かないように、台をしっかり固定してください。
・虫めがねは光を絞り、ピントを調節するために使っています。

盲目の科学者ゴフの実験を体験してみましょう

ゴフとジュールはイギリスの2人の科学者の名前です。ゴムの不思議な性質は1805年にゴフが現象を発見し、1859年にジュールによってくわしく研究されました。ゴフの記録によると、「細いゴムを軽くくちびるに当て、急に引き伸ばすと温かく感じ、縮ませると温かさが消えた」とあります。ゴフは盲目であったために感覚が鋭く、普通なら見逃してしまうような小さな変化に気付いたといわれています。輪ゴムを使って、縮んだ状態(自由度が高く、高エネルギー)から、引き伸ばした状態(低エネルギー)にすると放熱することを確認してみましょう。一方のジュールは、熱力学の発展に大きく貢献した物理学者であり、今もエネルギーや仕事の単位としてその名を残しています。

きちんと並ぶとエネルギーが低く、乱雑だとエネルギーが高い?

まるで校庭の子どもたちのようですが、分子と熱エネルギーの話です。熱はその物質を構成する分子の運動なので、分子が自由に動き回れる状態では高いエネルギーを持ち、動きづらい状態では低いエネルギーになります。水を例にとると、気体である水蒸気は液体の水より分子が動きやすいのでエネルギーが高く、固体の氷は水より分子が動きづらいのでエネルギーが低い状態です。
それでは、ゴムの場合はどうでしょう。ゴムはたくさんの分子がつながり、立体的な網目のような構造をしています(No.68参照)。ゴムが伸びると、網目構造が伸びきって分子が自由に動きづらいので、エネルギーが低くなります。縮むと、網目構造がゆるんで分子が動きやすいので、エネルギーが高くなります。縮んだゴムを引き伸ばすと、エネルギーの高い状態から低い状態になるので、余った熱が放出されます。また、今回の実験のように、伸ばしたゴムを加熱するとエネルギーが増加するので、分子の自由度が増して縮むのです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

NGKサイエンスサイトは日本ガイシが運営しています。ご利用に当たっては、日本ガイシの「プライバシーポリシー」と「ご利用条件•ご注意」をご覧ください。
本サイトのコンテンツ利用に関しては、本サイトお問い合わせ先までご相談ください。

このサイトが気に入ったらシェアしてください

page top