試してフシギ

眼のしくみ眼に映る本当の風景(No.202)

眼に映る本当の風景 眼に映る本当の風景

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

虫めがねと金魚ばちで、眼のしくみに似せたものをつくりました。金魚ばちを見ると、風景が逆さまに映っています。これは、いったいどういうことでしょう? また、遠くのものははっきり映りますが、近くのものはぼやけています。虫めがねを2個重ねると、今度は近くのものがはっきり映りました。

そうなんだ!

人間の眼は、レンズ型の水晶体、透明な液体で満たされた硝子体(ガラス体)、硝子体の奥にあるスクリーンのような網膜などで構成されています。眼に入った光は水晶体で屈折し、硝子体を通って網膜に像を結びます。網膜の映像は、レンズで写した映像のように上下左右が逆さまです。網膜は映像を電気信号に変えて脳に送ります。脳で映像信号を正しい向きに戻しているので、私たちは逆さまでない風景を見ることができるのです。また、水晶体は厚みを変えることによって屈折の仕方を調節し、遠くから近くまでピントを合わせています。虫めがねは厚みを変えられないので、近くを見るために2個重ねました。

1.球状の透明容器(小型の金魚ばちや丸底フラスコなど)
※向かい合った面が球面であれば、その他の部分が球面でなくてもかまいません。
2.虫めがね 2個
3.半透明の薄いポリ袋
・はさみ
・水

実験で使用した材料の詳細

・透明容器 大創産業 金魚鉢アソート
・虫めがね クリアー光学 カナ枠ルーペ
・ポリ袋 大創産業 冷凍用ポリ袋(小)

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    ポリ袋を容器の大きさに合わせて四角く切り、2cm~3cmの切れ目を4すみに入れます。

  • 2

    容器の側面に水を少しつけて①を貼りつけます。
    しわが寄らないように切れ目を重ね合わせて貼ってください。

  • 3

    容器に水を入れ、1m以上離れたものや景色が見える場所にポリ袋が手前に来るように置きます。
    容器の向こう側で虫めがねを前後に動かしてピントを合わせると、ポリ袋に遠くのもの(上のイラストでは外の風景)が逆さに映ります。

    ※太陽を映さないでください。

  • 4

    映したいものを容器から15cm以内に置きます。虫めがねを2個重ねると、近くのもの(上のイラストではミニカー)が逆さに映ります。

実験を成功させるコツとヒント

・虫めがねと透明容器の大きさが極端に違うと、映像をうまく映せません。虫めがねのレンズは、容器の直径より少し小さいくらいが、バランスの良い組み合わせです。
・ピントの合う距離は、虫めがねの焦点距離と透明容器の大きさによって変わります。一般的に小さいレンズは近くのものにピントが合いやすく、大きいレンズは遠くのものにピントが合いやすくなります。ピントが合いにくい場合は、レンズと容器の距離を変えて調整してください。

デジタルカメラは人の眼にそっくり!?

眼のしくみをもう少しくわしく見ると、カメラ、とくにデジタルカメラにそっくりです。水晶体の前にある虹彩は、眼に入る光の量を調節する絞りの役目をします。ピントを調節するオートフォーカスにあたるのが、毛様体と呼ばれる筋肉です。毛様体は水晶体を引っぱったりゆるめたりして厚みを変え、レンズの焦点距離を変化させます。網膜は光を電気信号に変えるセンサーのはたらきをします。実は、デジタルカメラは人の眼をまねて設計されているのです。

めがねやコンタクトレンズのはたらき

近視や遠視の人がめがねをかけると、ものがはっきり見えるようになるのはなぜでしょう?近視や遠視は水晶体の厚みを変えて焦点距離を調節しようとしてもうまくできない状態です。近視は網膜より前でピントが合い、遠視は網膜の後ろでピントが合ってしまいます。そこで、めがねやコンタクトレンズで水晶体を補って網膜にピントが合うようにします。近視用には焦点距離を伸ばす凹レンズを使い、遠視用には焦点距離を縮める凸レンズを使います。

「見る」は、眼と脳の共同作業

今回の実験で、私たちが見ている風景が実際は逆さまに眼に映っていて、その映像を脳が正しい向きに直していることがわかりました。このように、眼と脳が協力し合って、人はものを見ているのです。眼は、視覚情報を取り入れるカメラなどの役割。脳は、その情報を処理するコンピューターの役割をしています。眼から送られた視覚情報を脳は瞬時に処理し、使いやすいように加工します。たとえば、風景の中から重要なものだけを選んで強調したり、実際には見えない部分を補うことも自動的にやってくれるのです。人は、脳を使うことで効率よくものを見ていますが、ときには脳がだまされることもあります。同じ長さのものが違って見えたり、凸凹が反対に見えたりする錯視がその例です。また、実際は止まった画像が動いて見える映画やテレビも、脳を上手にだましていると言えるでしょう。錯視や動画はNo.190No.200も参考にしてください。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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