みるみるふくらむ
カラメルドーム(No.2 ボイルの法則)
- 調理時間30分


監修:ケーキデザイナー・芸術教育士 太田さちか、東京理科大学 教授 山本貴博 ※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社
吹きガラスのような透明感と艶感。
まるでスノードームみたい!
ラップをかけたボウルの中央にカラメルをとろり。タイミングをはかって両手で一気にセルクルを押せば、あら不思議! カラメルが風船のようにふくらみます。デコレーションしたカップケーキにかぶせれば、ずっと眺めていたくなる琥珀(こはく)色の小宇宙のできあがり。
Science point
圧縮された空気が生み出す
大きな力
セルクルを押し込むとカラメルがふくらんだ理由は、空気のかさ(体積)と圧力の関係を知ると分かります。
気体には、体積と圧力が反比例する性質があり、体積を半分に圧縮すれば圧力は2倍に、体積を3分の1にすれば圧力は3倍になります(温度が同じ場合)。
普段はあまり意識することのない空気の圧力ですが、平地では1cm²あたりおよそ1kg重もあります。今回のカラメルドームでは、仮にボウルの中の体積が半分になれば1cm²あたりおよそ2kg重の圧力になります。そして、高温のカラメルを流したラップは、熱によって伸びやすくなっています。そこに高い圧力がかかると、息を吹き込んだ風船のようにふくらむのです。
気体の圧力とは、自由に動き回る分子が壁などにぶつかったときの力を示したものです。体積が小さくなると満員電車のような状態になり、分子が壁にぶつかる力が大きくなる、つまり圧力が高くなります。高温で柔らかくなったラップがふくらんだのは、満員電車でドアが開いて一気に人が流れ出る様子と似ています。


気圧差をつくりだしドームをふくらませる
ドームといえば、ドーム状の屋根を備えた球場が思い出されますね。その代表ともいえる「東京ドーム」の屋根がふくらむ理由も、カラメルドームと同様に内外の気圧差です。東京ドームでは、ドーム内の空気の圧力を外気よりも1cm²あたり3g重ほど高くしています。この気圧差は、マンションの1階と10階を移動する程度の違いで、ドームの中にいても、ほとんど差を感じません。しかし、わずかな気圧差でも、屋根全体の面積に換算すれば数百トンもある屋根を押し上げるほど、大きな力になるのです。
気体の圧力と体積の関係は、物理学者ロバート・ボイルによって1662年に発見されました。空気の正体が明らかでなかった時代に、ボイルは「空気は小さな粒の集まり」と仮定し、温度が一定の状況では、気体の圧力が体積に反比例することを見つけたのです。
実はボイルよりも数十年も前に、空気が物質であることに気づいていた日本人がいます。江戸時代初期に活躍した禅僧で、漬物の「たくあん」の考案者ともいわれている沢庵宗彭です。沢庵和尚は子どものおもちゃである竹筒鉄砲の仕組みに関心を持ち、先端に詰め込んだ球が勢いよく飛び出すのは、筒の中に「気が充ちてある故なり」と考えたそう。それまでは魂のようなものとして認識されていた空気を「実態」として捉えて、実験を行いました。身近な現象を観察し、そこから気づきを得ることは科学の入り口といえますね。
スキューバダイビングとボイルの法則
スキューバダイビングでは、体積と圧力が反比例するボイルの法則を知っていないと大変なことになります。海の中に潜ると、水圧が強くかかって、肺の中の体積が小さくなります。そこから急浮上すると、圧力が下がって肺の中の体積が急に大きくなり、息苦しさを感じることがあります(減圧症や潜水病といいます)。それを防ぐため、肺の中の体積が大きくならないように、息を吐き続けながら浮上するように指導されています。
空気は温まるとふくらむ
加えて、空気は温まるとふくらみ、冷えるとしぼむ性質があります(シャルルの法則)。溶けたカラメルの温度は130~140℃もあるため、周りの空気があたためられ、ふくらんだのです。
ジャムなどのビンを冷蔵庫に入れておくと、容器内の空気が冷えてしぼみ、圧力が下がるため、ふたが開かなくなることがあります。そんなとき、ふたを温めれば、中の空気がふくらみ、圧力が上がるので、簡単にフタが開く、というわけです。
材料

直径5cmカップケーキ2個分
- グラニュー糖
- 100g
- 水
- 20g
- カップケーキ(市販)
- 2個
<デコレーション用>
ホイップクリーム
- - 生クリーム
- 100g
- - グラニュー糖
- 10g
- ミント、お好みのフルーツなど
- 適量
つくり方
- ・カラメルがふくらむ様子を下から観察したいときは、ガラス製の耐熱ボウルを用意してください。
- ・耐熱温度140℃のラップを用意し、耐熱ボウルにピンと張るようにラップをかけます。セルクルで強く押してもラップが外れたり、空気が漏れたりしないように、しっかりとラップをかけてください。
- ・ボウルの直径の半分ぐらいのサイズのセルクルを用意し、ラップをかけたボウルの中央に置いておきます。
(今回は直径12cmのセルクルを使用)
下準備

-
鍋にグラニュー糖と水を入れて弱火にかけます。黄色く色づいたら鍋を回して全体の色を均一にし、カラメル色になるまで煮詰め、火から下ろします。
砂糖が結晶化してしまうため、かき混ぜないようにしましょう。鍋を回して水分を全体に行き渡らせます。
-
粗熱がとれたら、ラップの上に置いたセルクルの中央に、約10g(500円玉くらいの大きさ)のカラメルを注ぎます。
ハチミツの固さ程度のとろみがついたら、粗熱がとれた証拠です。
カラメルをたくさん注ぎすぎると、広がってセルクルにくっついてしまいます。セルクルの直径の半分ぐらいを目安に、カラメルを注ぎましょう。 -
カラメルが固まらないうちに、速やかに両手でセルクルを垂直に下方へ押します。
ボイルの法則によって、
カラメルが風船のように膨らみます。 -
カラメルがふくらんだ後もセルクルを押さえた状態を保ち、カラメルが固まるまで2~3分待ちます。カラメルが固まったら、セルクルとラップをカラメルからそっと外します。
カラメルの薄い部分は2~3分で固まりますが、底の厚い部分までしっかり固まったことを確認してからラップを外しましょう。
-
ボウルに生クリームとグラニュー糖を入れ、氷水に当てながらハンドミキサーで泡立て、7分立てのホイップクリームを作ります。
-
カップケーキに、⑤のホイップクリームを絞り、ミントやベリーを添えます。
-
④のカラメル風船を被せます。
注意事項
- 必ず手順を読んでから調理を行ってください。
- 調理器具、特に火気などの取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
- 小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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