食べちゃうスライム(No.11 デンプンの糊化と老化)
- 調理時間20分
監修:ケーキデザイナー・芸術教育士 太田さちか、東京理科大学 教授 山本貴博 ※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社
伸ばして見つめて味わって
縦にも横にもびよーんと伸びるスライムの正体は、カラフルに進化した「わらび餅」。
つくるプロセスをたっぷり楽しんだ後は、もっちりとした心地よさを召し上がれ!
Science point
びよーん ↔ ぷるるん
【デンプンの糊化と老化】
このわらび餅が、加熱して混ぜる過程ではとろりと伸びるのに対して、水にさらして冷やすと伸縮性がなくなり、ぷるるんと弾力のある食感に変わるのは、わらび餅粉に含まれるデンプンにあります。
デンプンを水に溶かして加熱すると、デンプン分子の構造が崩れてすき間に水が入り込み、ネバネバした状態になります。この現象を糊化といいます。さらに、糊化したデンプンを冷やすと水分子が抜け出し、粘りが失われてゲル状の固体になります(老化)。デンプンの持つ性質が、楽しく変化する食感を生み出したのです。
モチモチとパサパサの秘密
デンプンは主にアミロペクチンとアミロースによって構成されています。アミロペクチンは糊化に対して働き、アミロースは老化に対して働きます。例えば、アミロペクチンを多く含む餅米は粘りがあり、つけばお餅になりますが、アミロースを多く含むタイ米は粘りがなく、パラリとしたチャーハンに向いています。どちらも同じお米ですが、含まれているデンプンの質によって、食感や水分量などが違うのです。ただ、どちらも冷めると硬くなってしまうのは共通しています。
では、焼いたお餅は冷めると硬くなるのに、大福が冷めても硬くならないのはどうしてでしょうか。その秘密は砂糖にあります。砂糖は水と結合しやすい性質を持つため、デンプンが吸収した水分を逃すことなく保つことができるのです。
老化を防ぐもう一つの方法として急乾燥があります。糊化した状態で水分を10%以下に急速に乾燥すると老化しにくくなります。この性質を応用してつくられたのが保存食として知られるアルファ米です。水分を足すだけで軟らかくなり食べられるアルファ米は、いざという時の防災食として知られています。
がん治療に応用!?
おもちゃのスライムは、デンプンではなく、洗濯糊にもなるポリビニルアルコール(PVA)という長い高分子が原料です。PVAにホウ砂を加えると網目構造になり、そのすき間に水を蓄えることができるため、いつまでもネバネバした状態が保たれるのです。最近では、このスライムの仕組みが、がん治療に応用されたことが話題になりました。放射線治療で投与する物質が抜けやすいという問題点を、スライムを模倣することで解決策を導き出せそうだというのです。楽しく遊べるおもちゃが、未来の医療につながるとは夢のあるお話ですね。
材料
1人分
- わらび餅粉
- 25g
- グラニュー糖
- 10g
- 水
- 110g
- かき氷シロップ(※)
- 10g
※青くしたいときはブルーハワイ、赤はイチゴ、緑はメロンなどお好みで
<シロップ>
- 水
- 100g
- グラニュー糖
- 50g
つくり方
- ・シロップを準備する。耐熱容器にシロップの水とグラニュー糖を入れ、電子レンジ(600w)で1分加熱して溶かし、冷ましておきます。
下準備
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鍋にわらび餅粉、グラニュー糖、水、かき氷シロップを入れて、ゴムベラでよく混ぜて溶かします。
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①を中火にかけて、ゴムベラで混ぜながら焦がさないように加熱します。
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透き通るまで加熱したら火を止めます。
透明になると徐々に粘りが出てくるため、焦げつかないようにムラなく混ぜ続けてください。
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皿にあけて、スプーンでよく混ぜます。
水と熱を加えて混ぜることで、デンプンの糊化が起こり、よく伸びます。
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絞り袋に入れて、一口大ずつ冷水の中に絞り出し、水の中にさらして冷まします。
冷やすとデンプンの粘りが失われ、弾力のある食感に変化します。水分を保つため、水中で冷やします。
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注意事項
- 必ず手順を読んでから調理を行ってください。
- 調理器具、特に火気などの取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
- 小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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