試してフシギ

減圧沸騰50℃で水が 沸騰!?(No.280)

50℃で水が 沸騰!? 50℃で水が 沸騰!?

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

注射器のピストンを強く引っ張るとぬるま湯が沸き立つように見えます。

そうなんだ!

約50℃のぬるま湯を注射器に閉じ込め、ピストンを一気に引くとブクブクと沸き立って、沸騰状態が確認できます。水が沸騰する温度はおよそ100℃とされているのに、いったい何が起こったのでしょう?実は、水が100℃で沸騰するのは、その場所の大気圧が1気圧という条件での話です。大気圧が変われば、水が沸騰する温度も変わります。沸騰は、液体が表面からだけでなく内部からも連続的に気化する現象です。水が沸騰するためには、気化した水蒸気の圧力が大気圧を超える必要があります。
水を加熱すると分子の運動がさかんになり、水蒸気の圧力が高まります。約100℃に達すると、水蒸気の圧力が1気圧を超えて沸騰が始まるのです。注射器に水を閉じ込めてピストンを引くと、水にかかる圧力が大きく下がるので、100℃よりかなり低い温度でも沸騰します。その状態から、力をゆるめて引っ張ったピストンを元に戻すと、水にかかる圧力も元に戻るので沸騰が収まります。

①注射器型スポイト(20mL) 1個
②4mmストロー
③目玉クリップ 1個
④耐熱性の器に入れたお湯
⑤あれば棒温度計

実験で使用した材料の詳細

・注射器型スポイト DAISO 化粧品用スポイド
・ストロー DAISO ミニストロー 口径4mm×長さ130mm
・目玉クリップ DAISO 目玉クリップ シルバー 狭口25mm
・棒温度計 シンワ測定 棒状温度計H アルコール -20~105℃
〈ビジュアル・動画用〉
・注射器 シータスク 実験用注射器 ポリ製<JMS> 100mL 針なし

※実験材料の一例です。準備する際の参考にしてください。

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    熱いお湯に水を混ぜて約50℃のぬるま湯をつくります。

    ※棒温度計がない場合は、沸騰したお湯に同量の水道水を入れます。
    水温が高いときはやや多め、水温が低い時はやや少なめにします。

  • 2

    長さ4cmに切ったストローをスポイトの口に強くねじ込み、余った部分を半分に折り曲げます。
    ※空気がもれないように細めのストローを使ってください。

  • 3

    いったんストローをのばし、お湯を5mLの目盛り付近までスポイトで吸い込みます。

  • 4

    スポイト内の空気を抜きながら、お湯の量を3mLまで減らします。

    ※小さな気泡は指でコンコンとたたいて追い出します。

  • 5

    ストローを折り曲げてクリップではさみます。

  • 6

    ピストンを一気に引き下げ、お湯の状態を観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・お湯の温度が50℃を下回ると、沸騰させるのが難しくなります。うまく沸騰しないときは、お湯の温度を少し高くして試してください。部屋の温度が低い場合も、お湯の温度を高めに設定してください。
・ピストンはまっすぐに引っ張り、すぐに戻さずに減圧された状態をキープしてください。

水が100℃で沸騰するのは、実は特殊なケースです

約70℃、88℃、120℃。この数字は、地球上で実際に水が沸騰する温度です。70℃はエベレストの山頂、88℃は富士山の山頂でお湯を沸かしたときに沸騰するおおよその温度です。エベレストや富士山は標高が高いので地上より気圧が低く、100℃より低い温度で水が沸騰します。標高が300m上がるごとに沸騰する温度は約1℃下がっていくので、計算上は高度15000mまで上がれば約50℃で水が沸騰します。
一方、気圧が高くなれば水が沸騰する温度は高くなり、圧力鍋の中では約120℃で沸騰します。圧力鍋は水蒸気を閉じ込めることで圧力を高め、高い温度で調理して食材を短時間で柔らかくします。圧力鍋は気圧の低い高地での調理にも利用されており、科学の知恵が身近な暮らしにも役立っています。

真空の宇宙では、予想外の現象が水に起こります

高度が高くなるにつれて気圧はどんどん下がり、水が沸騰する温度も低くなります。それでは、気圧がゼロの真空の宇宙空間に放り出された水は、どうなるか考えてみましょう。
気圧がゼロですから、液体の水は水温に関係なく、ただちに沸騰します。沸騰している水は、液体を気体にするために熱エネルギー(気化熱)を使うので、水温が急速に下がっていきます。不思議な感じがしますが、地上でお湯を沸かすときは外部から加熱しているので一定の温度を保っており、熱エネルギーが供給されない状態では、沸騰するほど水温が低下するからです。気化熱によって温度が下がった水は、約0℃に達すると凍結します。つまり、宇宙空間に放出された水は一瞬で沸騰し、直後に氷になるという不思議な変化をすると予想されるのです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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