試してフシギ

全反射と乱反射平面に浮かび上がる光のアート(No.279)

平面に浮かび上がる光のアート 平面に浮かび上がる光のアート

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

透明なプラスチック板を横からライトで照らすと、光の線で描かれた絵が現れました。

そうなんだ!

プラスチック板をよく見ると、表面にごく細い線が見えます。これは、先の尖ったもので、表面をひっかいてつけたキズです。ライトの光によってプラスチック板の細かいキズが明るく光り、絵が浮かび上がったようです。
透明なプラスチック板に横から光を当てると、空気とプラスチックの屈折率の違いから、境界面ですべての光を反射する全反射という現象が起こります。進入した光は全反射を繰り返しながら、プラスチック板の中を放射状にまっすぐ進みます。プラスチック板の端が強く光っているのがその証拠。ところが表面に細かいキズがあると、そこで光は乱反射を起こしてプラスチック板の外にも出てきます。そのため、細いキズが明るく光って絵が現れたのです。

①カードスタンドなどの透明なプラスチック製品
②コンパス
③小型のLEDライト
④黒いビニールテープ
・ 下絵にする絵や写真
(図案PDFをダウンロードしてください)

・はさみ
・濃い色の紙や布

実験で使用した材料の詳細

・透明なプラスチック製品 DAISO T型SHAPE カードスタンド
・コンパス DAISO コンパス えんぴつタイプ 最大直径26cm
・LEDライト DAISO 明るいランチャーライト メタリック(1LED)
・ビニールテープ ヤマト ビニールテープ 黒 (0.2mm×19mm×10m)
〈ビジュアル・動画用〉
・透明なプラスチック板 モノタロウ ノーブランド アクリル板(透明) 3×210×297 mm
・LEDライト 三菱電機 懐中電灯 CL-4601

※実験材料の一例です。準備する際の参考にしてください。

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    透明なプラスチック製品にコンパスの芯を使ってやや強めにキズをつけ、絵や文字を描きます。

    ※下絵を置いてなぞると上手に描けます。

  • 2

    LEDライトに黒いビニールテープを貼って幅2mm程度のスリットをつくります。

  • 3

    部屋を薄暗くし、濃い色の紙などの上で①の端に光を当て、絵や文字の見え方を観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・大きな絵を描くときは、ある程度厚みのあるプラスチック製品を使ってください。
・カッターナイフでつけたような鋭く深いキズよりも、針状のもので細かくひっかいたキズの方がよく光ります。また、広い面を光らせたいときは、紙やすりが効果的です。
・光源のライトは、プラスチック製品の広い面になるべく平行に当ててください。

全反射で光を閉じ込める。乱反射で光を拡散する。

全反射と乱反射は身近なところでも利用されています。全反射が活躍しているのが、インターネットなどの高速通信に欠かせない光ファイバーです。光ファイバーは、透明なガラスやプラスチックのケーブルを使い、光信号に変えた情報を運びます。光がもれないように全反射の原理で閉じ込め、光信号を遠くまで効率よく届けます。一方、乱反射は電球や照明器具に応用されています。照明の光はまぶしくなく、均一に拡散させた方がよいので、すりガラスのように乱反射する加工を施した素材が使われます。全反射と乱反射という正反対に見える光の現象が、用途によって上手に使い分けられているのですね。

光のもれをおさえて効率よく情報を伝えるために

実験でプラスチック板に現れた美しい光のアートは、全反射による光の伝送という観点から見ると、大きな損失です。まるで、水を送るホースの途中から水がもれ出して、噴水をつくっているようなもの。そのため、実際の光ファイバーでは、光のもれによる損失を防ぐために、反射面にキズやゆがみができにくい製造法が工夫されてきました。
また、全反射を起こすためには、境界面に進入する光の角度が一定の値より浅くなる必要がありますが、光ファイバーが鋭く折れ曲がっていると光の進入角度が変わり、一部の光が突き抜けてしまいます。そこで、ケーブルの被覆や施工法の工夫で、急な折れ曲りが起こらないように注意がはらわれています。さらに、光ファイバーの中に多数の穴を開け、全反射しやすい空気を利用して、もれ出す光を閉じ込めるユニークな形状の製品も開発されています。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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