なんでだろう?
2本の傘の間で、電話のように音が伝わっています。
そうなんだ!
アルミシートを貼った2本のビニール傘を向かい合わせに置き、一方の傘の中に顔を入れて話すと、もう一方の傘の同じ場所で声がはっきり聞こえました。周囲の人にはほとんど聞こえないような小声でも、傘と傘を10mくらい離しても聞き取ることが可能です。傘に向かって話しているだけなのに、携帯電話のように通話できるなんて不思議ですね。
遠く離れた傘の間で音を伝えられるのは、傘の形に秘密があります。開いた傘は大きなおわんのような形をしています。これは、放物線(パラボラ)という曲線に近い形です。パラボラ面に平行に入ってきた音や光は反射して一点(焦点)に集まり、反対に焦点から発した音や光はパラボラ面で反射して平行に出ていく性質があります。図のように、一方の傘の焦点(F1)で声を出すと、反射した音は柄の方向にまっすぐ進み、もう一方の傘で反射して焦点(F2)に集まります。お互いに焦点で会話をすれば、音が空中で拡散することなく伝わり、さらに届いた音が一点に集まるので、小さな声でも遠くで聞こえるのです。
パラボラ形は電波も効率よく送受信できるので、衛星放送の受信アンテナや電話局の中継アンテナなどに利用されています。

①透明ビニール傘 2本
②キッチン用アルミシート(90×45cm・裏のり付き) 3枚
③50cm以上の定規
④スマートフォンなどの音源とイヤホン
⑤背もたれつきのいす 2脚
・カッターナイフ
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細
・透明ビニール傘 武田コーポレーション POEビニール傘 約55.5cm
・アルミシート DAISO キッチンアルミシート 90×45cm
・定規 DAISO 幅広タイプ 方眼直線定規 50cm
・イヤホン DAISO STEREO EARPHONE カナル型イヤホン
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
アルミシートを切って底辺30cm、高さ45cmの二等辺三角形を16枚つくります。
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2
アルミシートのはくり紙をはがして、2本のビニール傘の内側に貼ります。
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3
傘の柄に耳を近づけ、テレビなどの音を受けて大きく聞こえる位置を探して印をつけます。
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4
1本の傘の③で印をつけた位置に、イヤホンをテープで固定します。
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5
いすを5m〜10m程度離して向かい合わせに置きます。傘をいすにのせ、柄が一直線に向かい合うように調整します。
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6
スマートフォンなどで音楽を再生し、イヤホンから小さな音を出します。
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7
もう1本の傘の印をつけた場所に耳を近づけると、音楽がはっきり聞こえます。
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8
2人で実験できる場合は、印をつけた位置で話したり聞いたりして通話してみましょう。
実験を成功させるコツとヒント
・アルミシートが入手できない場合は、大きめの傘を使えばある程度の集音効果が期待できます。
・音が集まる焦点の位置は傘の形状によって変わります。また、焦点から離れると音が急に小さくなるので、焦点を正確に求めて、その位置で送受信を行ってください。
・周囲の雑音が大きいと実験の音が聞き取りにくくなります。なるべく静かな場所で実験してください。
・低い音より高い音の方が反射しやすい傾向があります。聞こえにくい場合は高めの音で試してみましょう。
「パラボラ傘電話」で音の性質を調べよう
音は、音源の振動が空気の波として伝わる現象です。これを音波といい、自然界の他の波と共通の性質があります。「パラボラ傘電話」を使うと、そのうちいくつかの性質を確かめることができるので、ぜひ調べてみましょう。
音の反射
波は硬い面にぶつかるとはね返ります。これを波の反射といい、平らな面では波が入ってくる角度(入射角)とはね返る角度(反射角)は等しくなります。「パラボラ傘電話」を向かい合わせに置くのではなく、壁などに音を反射させて確かめてみましょう。
また、波は硬くなめらかな面ではよく反射しますが、やわらかい材質や凹凸のある面ではあまり反射しません。波のエネルギーが吸収されたり乱反射を起こすからです。実は、ビニール傘だけでもある程度音を反射して通話できますが、アルミシートを貼ると表面が硬くなめらかになるので、より効率よく音を反射させることができます。普通の傘でも、生地によって音の反射具合が異なるので、いろいろな傘で試してみると面白いですよ。
音の回折(かいせつ)
通話中の2つの傘の間を板などでさえぎると、音はどうなるでしょう。音は2つの傘の間をまっすぐに伝わっているはずなので、聞こえなくなったり小さくなったりしそうなものですが、実際にやってみるとほとんど聞こえ方は変わりません。
波長の長い波は障害物があっても回り込んで進む性質があり、これを回折といいます。光は1mmの1000分の1にも満たない波長の短い波なので板でさえぎられますが、平均的な人の話し声は1m前後の波長の長い波なので板を回り込むのです。見えない場所からの騒音や、物陰で話している声が聞こえてしまうのは、音の回折が原因です。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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