試してフシギ

土の微生物自然の土は生きている(No.274)

自然の土は生きている 自然の土は生きている

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

土を入れた容器の管にシャボン液をつけると、黒い土だけ速い速度で膜が下がりました。

そうなんだ!

さまざまな種類の土を容器に入れ、密閉してしばらくたってからストローのついたふたに替えます。ストローの先端にシャボン液で膜をつけると、膜の位置に変化が生じ、黒い土は他に比べて速く膜が下がっていきました。土によって膜の下がり方が異なるのはなぜでしょう。
この実験は、二酸化炭素がシャボン膜に溶けやすい性質を利用して、土の中の微生物を調べるものです。土の中の微生物が活動すると、人間や動物と同様に呼吸して二酸化炭素を排出します。微生物の活動が活発になるほど二酸化炭素も多く発生し、シャボン膜を通って外に出ていきます。すると、容器内の圧力が低下するので膜の位置が下降するのです。 黒い土は畑や野山でよく見られる土で、赤い土はグラウンドなどで見られる土です。この実験から、植物が多い土の微生物は活発に活動し、植物が少ない土や砂の微生物は不活発なことがわかります。

①タレビン(33mL) 4個
②透明なストロー直径5mm
③キリか千枚通し
④先の細いはさみ
⑤プラスチック用接着剤
⑥畑や花壇の黒い土
⑦砂や赤い土(比較用)
⑧白い紙
⑨つまようじ
⑩シャボン液
⑪綿棒
・定規
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細

・タレビン DAISO タレビン 33ml 4個入
・ストロー DAISO ストレートストロークリア 直径約5mm×180mm
・はさみ プラス fitcut フィットカット
・プラスチック用接着剤 コニシ ボンドGPクリヤー 速乾 20ml
・つまようじ DAISO 料理用ようじ 約200本入
・シャボン液 DAISO シャボン玉セット 4コ入ノズル付 内容量50ml
・綿棒 DAISO 紙じく抗菌綿棒 〈ビジュアル用〉
・透明ボトル 無印良品 小分けボトル ワンタッチキャップ・50ml

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    白い紙の上で、土に混じった小石や枯れ葉などを取り除きます。

  • 2

    6cm×5cmに切った紙を円すい形に丸めます。先端をタレビンの口より少し小さく切り、じょうごを作ります。

  • 3

    紙のじょうごを使ってタレビンの半分まで土を入れ、ふたをします。比較用も同様にし、そのまま半日から1日程度おきます。

  • 4

    別のタレビンのふた2つにキリなどで穴を開け、はさみの刃を差し込んで回転させて穴を広げます。

  • 5

    ストローを6cm×2本切り取って④の穴に差し込み、すき間から空気がもれないように接着剤でふさいで乾かします。

  • 6

    綿棒を使って、シャボン液をふたにさしたストローの内側に塗ります。

  • 7

    タレビンのふたをストローつきのものに替え、しっかりしめます。

  • 8

    綿棒でストローの先端をこすってシャボン液を塗り、できた膜の変化を観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・土を採取する際は表面の乾いた部分を避け、採取後も乾燥しないように保存してください。
・実験に必要な二酸化炭素をためるために、土を容器に入れてから半日以上置いてください。
・急激な温度変化は実験結果に大きな影響を与えます。放置中や実験中は、なるべく部屋の温度を一定に保ってください。
・ストローの内側にシャボン液を塗ってから膜を張るようにしてください。シャボン膜を割れにくくするためです。

土に生息する無数の微生物が地球環境を支えています

植物がよく育つ肥えた土には、細菌をはじめ原生動物やカビの仲間など、1グラム中に数億匹もの多種多様な微生物が生息しているといわれています。これらの微生物は、ミミズなどの土に住む小動物と連携して死んだ動物や植物を分解し、植物の生長に欠かせない窒素・リン酸・カリウムなどの養分を生み出します。もし、土の中に微生物がいなくなると、落ち葉や動物の死がいはそのまま積み重なっていき、植物は生育することができません。すると、その植物を食べる動物も人間も生きられなくなってしまうでしょう。目に見えない土の中の微生物は、地球の生態系の中で非常に重要な役割を果たしているのです。

人類を救う!? 私たちの暮らしにも有用な土の微生物

土の中に住む微生物の中には、私たちの暮らしに直接役立っているものもいます。ダイオキシンやPCB(ポリ塩化ビフェニル)、残留農薬などの分解されにくい化学物質を無害な物質に分解し、汚染された土壌を修復してくれるのです。この原理を利用した技術をバイオレメディエーション(生物修復)と呼び、低コストで省エネルギーなため、近年世界中で盛んに研究されるようになってきました。
また、土の中では非常に厳しい生存競争が繰り広げられているので、ほかの微生物をやっつける物質を生産するものもいます。このような物質を抗生物質と呼び、医薬品として利用され多くの命を救ってきました。2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教は、静岡県のゴルフ場近くの土の微生物から発見した抗生物質を改良しイベルメクチンを開発しました。イベルメクチンは失明を引き起こす寄生虫病の特効薬として世界中の患者を救うとともに、犬のフィラリア症の予防にも使われています。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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