試してフシギ

アトウッドの器械このあとオモリはどう動く?(No.265)

このあとオモリはどう動く? このあとオモリはどう動く?

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

糸の両端にオモリをつけて滑車にかけると、 重力を無視したような不思議な動きをします。

そうなんだ!

同じ重さのオモリを糸でつないで滑車にかけると、2つのオモリがどんな位置関係にあっても、静止したままで動きません。したがって、クイズの答は③が正解です。また、片方のオモリにごく小さい力を加えると、一定の速度でするすると動き続けます。まるで、重力のない宇宙空間で実験しているように見えますが、そんなことが実際にあるのでしょうか? 静止している状態で、オモリにはたらく力を考えてみましょう。2つのオモリは同じ質量なので、同じ重力を下向きに受けます。また糸でつるされているので、糸から上向きの張力を受けます。糸の両端にはたらく張力は等しいという法則があるので、2つのオモリにはたらく張力も同じです。糸に質量がないと仮定すれば、どんな場合でも力がつりあって動きません。そこで、一方のオモリに一瞬だけ力を加えるとオモリは動き始めますが、その後は力がつりあったままなので、加速も減速もしない慣性の法則にしたがって一定の速度で動き続けます。

①ハンドスピナー(直径約7cm)
②プラスチックのコップ (口径7.8cm・275mLタイプ) 2個
③細字の油性サインペン
④プラスチック用接着剤
⑤厚みのある(1mm程度)強力両面テープ
⑥単3乾電池 2個
⑦ゼムクリップ 2個
⑧細めのたこ糸 150cm
・カッターナイフ
・はさみ
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細

・ハンドスピナー 久野貿易商会 HAND SPINNER(直径約7cm)
・プラスチックのコップ 大創産業 クリアカップ275ml(口径7.8cm)
・油性サインペン ゼブラ マッキー 細字/極細 黒
・プラスチック用接着剤 コニシ ボンドGPクリヤー 速乾 20ml
・強力両面テープ 大創産業 超強力 アクリルフォーム 両面テープ(15mm×1.2m×1mm)
・単3形乾電池 大創産業 マンガン乾電池GP 単3形
・ゼムクリップ アスクル ゼムクリップ大(28mm)
・たこ糸 大創産業 たこ糸 約40m 20/5×3

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    プラスチックのコップに油性ペンで1つは口から5mm、もう1つは10mmの高さに線を描きます。

  • 2

    ①の線にそってカッターナイフとはさみで口の部分を切り取ります。

  • 3

    5mmの輪の内側に接着剤をつけ、10mmの輪に差し込んで乾かします。

  • 4

    接着剤が固まったらセロハンテープで補強し、両面テープでハンドスピナーを輪の内側に 固定したら滑車の完成です。

  • 5

    クリップを図のように曲げて乾電池にセロハンテープで固定します。同じものを2個作り、クリップに糸の両端を結び付けます。

  • 6

    滑車にオモリの糸をかけ、さまざまな位置関係を試してみましょう。
    また、一方に軽く力を加えて動きを観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・写真では、見やすいように太い糸を使っています。実際の工作では、糸の質量や摩擦が実験に影響をあたえないように、なるべく細めで丈夫な糸を使ってください。
・大きいハンドスピナーの場合は、プラスチックのコップも大きいサイズを使えば同様に作れます。
・プラスチックのコップは、切り口が凸凹にならないように、なるべく正確に5mmと10mmに切ってください。

現代のエレベーターにも応用されている18世紀の発明

この装置は、イギリスの物理学者ジョージ・アトウッドが、重力加速度を測定するために1784年に考案しました。重力加速度は物体が落下する距離と時間を計測すれば求められますが、物体の落下スピードは非常に速いので、当時の技術では正確に計測できませんでした。そこで、アトウッドは滑車とオモリを使って落下速度を小さくし、正確な重力加速度を求めたのです。実はこの装置、現代でもエレベーターやケーブルカーに応用されています。同じ重さの物体をケーブルでつなぐと、少しの動力で動かすことができるからです。エレベーターは、つりあいをとるオモリとつながっています。

アトウッドは、どのようにして重力加速度を測定したのでしょう?

重力加速度とは、物体を自由落下させたとき、一定の時間ごとに、どれだけ速度が変化するかを表すものです。加速度は、一般に速度の変化を時間で割って求めることができます。現代なら、落下する物体をストロボ撮影するなどの方法で、比較的簡単に測定できますが、アトウッドの活躍した18世紀では、撮影装置も精密な時計もありませんでした。そこでアトウッドは、今回の実験のように、2つの同じ重さのオモリと滑車を利用して重力を打ち消し合う装置を作りました。さらに、片方だけに小さなオモリを追加して、一定の距離を落下させた後に追加のオモリを取り除くしくみを考えました。追加のオモリが外れた後は等速度運動になるので、測定が容易です。不十分な環境や道具であっても、工夫しだいで大きな成果が出せることを教えられますね。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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