なんでだろう?
つないだ2本の銅線の一方を冷やし、 もう一方を熱すると電流が流れました。
そうなんだ!
太い銅線と細い銅線を一点で接合し、その両端に電流が流れると針が振れる手作りの簡易電流計をつないでいます。太い銅線を氷で冷却し、細い銅線を炎で加熱すると針が振れ、加熱をやめると元に戻ります。なぜ加熱すると電流が流れるのでしょう?
電流を発生させたのは、2本の銅線の温度差です。半導体や、2種類の金属をつないで閉じた回路を作り、接合部の両側を異なった温度にすると、回路に電流が流れます。温度の高い側では電子の動きが活発になり、温度の低い側に向かって電子が移動するからです。この現象はゼーベック効果と呼ばれ、特殊な発電装置や冷蔵庫、温度センサーなどに応用されています。
この実験では、銅線の接合部をあぶって酸化させ、表面を半導体化しました。また、温度差が大きいほど発電量が大きくなるので、低温側の銅線を太くして伝導熱による影響をおさえ、氷で冷やしています。
①エナメル線(0.35mm) 11m
②銅線(太さ0.9mm、0.45mm) 各15cm
③ストロー 1本 糸
④ネオジム磁石(直径16mm) 2個
⑤プラスチックコップ 小さめ 1個
⑥つまようじ 1本
⑦厚紙などの台紙
⑧ガス式着火ライター
⑨氷 さいばし 1本
⑩ブックエンド 1個
⑪洗濯バサミ 1個
・紙やすり
・画びょうなど
・軍手
・コイルを巻く筒
・セロハンテープ
・カッターナイフ
・定規
実験で使用した材料の詳細
・エナメル線 八幡ねじ エナメル線0.35mm
・銅線 八幡ねじ 銅針金 0.9mm、銅針金0.45mm
・ストロー 大創産業 ストレート カラーストロー(長さ約210mm、直径約5mm)
・糸 大創産業 家庭用手ぬい糸(太口)
・ネオジム磁石 大創産業 超強力 マグネット 16mm
・プラスチックコップ 大創産業 クリアカップ275ml
・つまようじ 大創産業 料理用ようじ 約200本入
・厚紙 大創産業 A4厚紙 両面白色 厚さ0.58mm
・ガス式着火ライター 東海 CRチャッカマン
・さいばし 大創産業 竹菜箸4組(33cmを使用)
・ブックエンド 大創産業 ブックエンド(ベーシック、四角、19×13.3×16.3cm)
・洗濯バサミ 大創産業 Wバネ竿ピンチ 5個
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
はじめに電流計をつくります。
エナメル線を100回巻いて直径3cm程度のコイルを作り、セロハンテープで台紙に固定します。 -
2
ネオジム磁石にテープで糸を貼り、たて方向に1/4に裂いたストローを長さ15cmに切ってもう一つの磁石ではさみます。
※磁石で指をはさまないように注意してください。 -
3
プラスチックコップの側面を図のように切り取り、画びょうなどで底の中心に穴を開けます。
②の糸を穴に通し、つまようじに結びます。 -
4
③を①のコイルにかぶせ、磁石がコイルの真ん中にくるように糸の長さを調節します。
ストローが水平になるように角度を調整します。 -
5
太い銅線の両端を折り曲げて輪状にします。
一端だけをライターで赤熱するまであぶります。 -
6
エナメル線の両端の皮膜を紙やすりではがします。⑤が冷えてから、図のように太い銅線、細い銅線とつなぎます。
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7
台紙に目安にする基準の線を描き、ストローが基準線を指すように台紙を回転させます。
※磁石は平らな面が南北に向きます。 -
8
ブックエンドにさいばしをテープで固定します。図のように太い銅線をつり下げ、磁石がブックエンドやライターに影響されないよう20cm以上離します。
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9
太い銅線に氷を取り付け、ライターで細い銅線を加熱して電流計の動きを観察します。
※ライターの使用上の注意に従い、長時間加熱し続けないでください。
実験を成功させるコツとヒント
・マイクロ電流計は磁力の影響を強く受けます。磁石や鉄、スピーカーや家電製品などの近くで実験しないでください。
・加熱するときは、接合部に近い細い銅線だけに炎が当たるようにし、なるべく太い銅線に熱が伝わらないようにしてください。
・長時間加熱し続けると太い銅線も温まって温度差が小さくなるうえ、やけどや火災の危険があります。電流計が反応しなくても、ライターの使用制限時間を超えたらいちど火を消してください。装置が完全に冷えてから銅線やエナメル線の接続を確認し、氷を取り替えてもういちど試してみましょう。
捨てられている熱を活用して電気を起こす
温度差によって電流が生じる現象は、1821年にドイツの物理学者トーマス・ゼーベックによって発見されたので、ゼーベック効果と呼ばれます。この原理による発電は、他の発電方法に比べて効率がよくないため、長い間特殊な用途でしか使われていませんでした。ところが、環境意識の高まりと情報化社会の進展により、近年大きな注目を集めるようになってきました。
実験でもわかるように、ゼーベック効果による起電力はごくわずかです。しかし、温度差を電気に変える部品(ゼーベック素子)の材料として、発電効率の高い新素材が次々に開発されています。それによって、人間の体温や電子機器の廃熱など、利用されてない身近な熱エネルギーを活用できる可能性がでてきました。また、あらゆるものがインターネットにつながるIoT(もののインターネット)時代を迎え、メンテナンスが容易な超小型電源が求められています。ゼーベック効果による発電は、IoTを支える電源技術として期待が高まり、世界中で研究が進められています。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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