なんでだろう?
液体の入った筒をぶんぶん回転させると、濃い部分と薄い部分に分離しました。
そうなんだ!
ストローにトマトジュースを入れて円板に取り付け、ぶんぶんゴマのように回転させると、両端が濃く、中央部が薄い3つの層に分かれました。実は科学や工業のさまざまな分野で活躍する遠心分離機と同じ原理で、液体中に分散している比重(密度)の異なる物質を、分離することができます。トマトジュースには、せんい質などの細かい固体成分が含まれていて、長時間放置すると、液体成分と固体成分に分かれます。これは重い固体成分が重力によって沈殿するからです。筒状のものにトマトジュースを入れて高速回転させると、回転運動の慣性力(いわゆる遠心力)によって両端に重力よりも大きな力がかかり、急速に沈殿が進みます。ぶんぶんゴマの回転速度は意外に速く、条件によっては遠心分離機なみの回転を得ることも可能です。
①牛乳などの紙パック
②キリ
③太め(直径1.5mm)のたこ糸 1m
④透明ストロー 1本
⑤調べたい液体
⑥注射器型スポイト
⑦布テープ
・定規
・はさみ
・セロハンテープ
・コンパス
・ティッシュペーパー
実験で使用した材料の詳細
・紙パック ファミリーマート 牧場うまれの牛乳 1000ml
・たこ糸 ユタカメイク たこ糸 A-301 綿(約1.5mm×約190m)
・透明ストロー 大創産業 ストレートストロークリア (約直径5mm×180mm)
・調べた液体 カゴメ カゴメトマトジュース 食塩無添加
・注射器型スポイト 大創産業 化粧用スポイト 20 ml
・布テープ アスクル 現場の力 布テープ 幅50mm×長さ25m
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
開いて洗った紙パックに図のような円と点を描きます。円板を切り抜き、点の部分にキリで穴を開けます。同じものを2つ作ります。
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2
ストローを3cmの長さで2個切り取り、セロハンテープで固定して間隔を保つスペーサーを作ります。
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3
円板の穴にたこ糸を通し、端を結んで輪にします。輪の両端に布テープを3重に巻き付け、持ち手を作ります。
※たこ糸を直接引っぱると手を傷つける恐れがあるので、必ず布テープを巻いてください。 -
4
残ったストローを11cmの長さに切り、一端を5mmの長さに2回折り曲げ、セロハンテープをしっかり巻き付けます。
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5
調べる液体をスポイトでストローに入れ、開いている端を(4)と同様に折り曲げます。はみ出た液体をふき取り、テープを巻き付けます。
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6
スペーサーの間に(5)のストローを置き、もう一枚の円板ではさんでセロハンテープで固定します。
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7
ぶんぶんゴマの要領で円板を回転させます。50回程度回転させたらストローを取り出して観察します。いろいろな液体で実験してみましょう。
円板を10回程度回して糸を巻きつけ、一気に引っぱります。その後、力をゆるめたり引っぱったりを数回繰り返すと、ぶんぶん音を立てて回りはじめます。
※回転している円板に顔などを近づけないでください。
実験を成功させるコツとヒント
・液体を入れるストローは必ず端を2回折り、セロハンテープをしっかり巻き付けてください。端の処理が不十分な場合、回転によって液体がもれ出す恐れがあります。
・最初に円板を回して、たこ糸に十分によりをかけてから引っぱってください。円板が回り始めたら、回転の勢いを利用して、ゆっくり引っぱったりゆるめたりして徐々に回転を上げてください。
・調べる液体は液体と固体が混ざったものを使用してください。コーヒーや牛乳のように成分が完全に溶けているものは、この装置では分離できません。
実際の遠心分離機は何と何を分けて、どう使われるの?
遠心分離機は構造上の違いからから大きく2つに分類されます。分離するものを入れる容器に穴のある「遠心ろ過機」と、穴のない「遠心沈降機」です。遠心ろ過機は、洗濯機の脱水機能と同じ原理で、金属や布などの「ろ材」を使って固体成分を素早くこし取り、液体と分離します。でんぷんや砂糖の結晶から水分を抜く工程や、汚水の処理などに使われています。遠心沈降機は、今回の実験と同様に、筒状の容器内に比重の異なる液体や固体を層状に分離します。牛乳をクリームと脱脂乳に分けたり、油脂から不純物を分離したり、血液を液体成分と固体成分に分けたりするのに欠かせません。遠心分離機は、世界中の工場や研究室でぶんぶん回りながら、私たちの暮らしを支えています。
ぶんぶんゴマが命を救う。電気のいらない手動遠心分離機
マラリアなどの診断には血液を遠心分離機にかける方法がとられますが、医療用の遠心分離機は高価なうえ、動かすためには電力が必要です。そのため、アフリカやアジアの発展途上国では十分に普及していません。そこで、アメリカのスタンフォード大学の研究チームが、ぶんぶんゴマを応用した手動遠心分離機を開発しました。わずか数十円の材料費で、マラリアの病原体を分離することに成功したそうです。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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