なんでだろう?
やわらかい輪ゴムを勢いよく回転させると、まるでかたい車輪のように転がっていきました。
そうなんだ!
ぐにゃぐにゃした輪ゴムは、そのままではなかなか転がりません。ところが、輪ゴムに十分な回転を与えると、コロコロと車輪のように転がります。回転する輪ゴムは、なぜ簡単に転がるのでしょう? 輪ゴムが自立して転がるのには、2つ理由があります。まず、回転する輪ゴムには回転運動の慣性力が外向きにはたらきます。 慣性力とは、動いている物体が外から力が加わらないかぎり、同じ速度で一直線に(円運動では接線の 方向に)動き続けようとする結果、生じる力です。回転する輪ゴムには、全体に等しく慣性力がはたらくので、外に向かって均等に引っぱられている状態になり、かたい輪のようになります。次に、回転している物体には、なるべく同じ姿勢のままで回り続けようとするジャイロ効果もはたらき ます。コマや自転車が倒れないのと同じ理由です。上手に回転を与えると、輪ゴムよりもっとぐにゃぐにゃしたボールチェーンも転がせるので、挑戦してみましょう。
①スチレンボード(厚さ1cm、4cm角)
②ペットボトルのふた
③キリ
④料理用ようじ(長さ9cm)1本
⑤発泡スチロール用接着剤
⑥ストロー(直径4mm)1本
⑦ビニールテープ
⑧輪ゴム(#16、直径約3.8cm)1本
⑨ボールチェーン(12cm)1個
・定規
・鉛筆
・カッターナイフ
・はさみ
実験で使用した材料の詳細
・スチレンボード ヤマト カラーボード(300mm×450mm×10mm)
・料理用ようじ 大創産業 料理用ようじ 約200本入
・発砲スチロール用接着剤 コニシ ボンド発砲スチロール用
・ストロー 大創産業 ミニストロー 口径4mm×長さ130mm
・ビニールテープ ヤマト ビニールテープ 黒 (0.2mm×19mm×10m)
・輪ゴム 共和 オーバンド#16(100g)
・カラー輪ゴム(ビジュアル用) 大創産業 ファイブカラーゴムバンド
・ボールチェーン 大創産業 K9ボールチェーン金・銀
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
4cm角のスチレンボードに対角線を引き、中心を求めます。さらに、角を4mm程度切り落とします。
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2
ペットボトルのふたの内側の中心に、キリでくぼみをつけます。 料理用ようじをスチレンボードの中心に垂直に突き刺します。 ようじの先がペットボトルのふたの中心に当たるように、ボード、ふた、ようじを接着剤で固定します。
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3
4cmに切ったストローをようじに通します。ビニールテープを図のように巻きつけてストッパーにします。
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4
幅1.2cmに切ったビニールテープを図のようにペットボトルのふたとスチレンボードに巻きつけます。
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5
ふたに輪ゴムをかけ、ストローを持ってコマを回す要領で軸を強く回します。
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6
強い回転力がついた輪ゴムを下に落とすと、コロコロと転がります。
※切り売りの場合は約11cmに、既製品(12cm)の場合は端を切って少し短くすると最適なサイズになります。
実験を成功させるコツとヒント
・回転装置は、中心の位置を正確に合わせて工作してください。偏りがあると、なめらかに回転しません。
・輪ゴムをあまり高い位置から落下させると、衝撃で回転の勢いがそがれます。
・ボールチェーンを使う場合は、輪ゴムより難易度が上がります。輪ゴムのとき以上に十分な回転を与え、低い位置からそっと下に落としてください。
意外なところで利用されている回転の効果
ぐにゃぐにゃなものを回転させると、しっかりした輪や円盤のような性質を持つことは、昔の人も経験的に知っていたようです。たとえば、西部劇などで目にするカウボーイの投げ縄。ぐにゃぐにゃのロープを上手に回転させ、大きな輪にすることで遠くの牛などを捕まえます。漁師が使う投網(とあみ)も、同じ原理で不定形の網を丸い形にして効率よく魚を捕まえます。さらに、ピザ職人がやわらかいピザ生地を空中に放り投げ、形を整えていく工程でも回転の効果が利用されています。
遠心力は実際には存在しないの?
今回の実験のテーマは「回転の効果」というあまりなじみのない言葉でした。「それって遠心力のことじゃないの?」と思った人もいるのではないでしょうか。実は、遠心力は一定の条件のみで成立する見かけの力なので、科学的に厳密な表現では使われなくなっています。簡単な例で、その理由を考えてみましょう。 ひもにオモリをつけて回転させると、オモリは飛び去ることなく円運動をします。このときオモリに小さな虫が乗っていたら、虫は外に向かって引っぱられるように感じるはずです。この、虫が感じる力を遠心力と呼んでいます。ところが、近くでこのようすを観察する人から見ると、慣性によってオモリがまっすぐに進もうとする運動と、飛び去らないようにひもが引っぱる力しか観測できません。遠心力はオモリに乗っている虫にしか感じられない見かけの力なので、存在しないと考えた方が合理的なのです。とはいえ、遠心力は便利な言葉なので、比喩的な表現や一般向けの説明では使われることもあります。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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