なんでだろう?
ペットボトルを強く押してぱっと放すと、白い雲ができました。
そうなんだ!
空に浮かぶ雲を手の中でつくってみましょう。雲は空気中の気体の水(水蒸気)が冷やされて、小さく細かい水滴に変化したものです。実験では、水のかわりに気体になりやすいアルコールを使います。ペットボトルにアルコールを入れて密閉し、強く押してから急に指の力をゆるめると、白くくもります。このときペットボトルの中は、実際に雲ができる空の上と同じ状態です。
空気などの気体は外部から熱の影響がない状態で圧縮すると温度が上がり、膨張させると温度が下がります。これを断熱圧縮と断熱膨張といいます。また、空気が含むことのできる水蒸気の量は温度が高いと多く、温度が低いと少ないという性質があります。ペットボトルを押して断熱圧縮すると温度が上がり、アルコールは気体になります。力をゆるめて断熱膨張させると温度が下がり、空気中に含みきれない気体のアルコールが液体の細かい粒になります。つまり、アルコールの雲ができるのです。
①炭酸飲料のペットボトル(500mL)1本
②消毒用アルコール(エタノール)
③消臭スプレー
実験で使用した材料の詳細
・ペットボトル アサヒ飲料 ドデカミン PET500ml
・アルコール 小堺製薬 消毒用エタノール 100ml
・消臭スプレー 大創産業 靴・ブーツのにおい消し 消臭スプレー
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
ペットボトルにアルコールを少量(5mL程度)入れます。
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2
消臭スプレーをひと吹き注入し、しっかりふたを閉めます。
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3
ペットボトルを両手で温めながら、くもりが取れるまでゆっくり動かします。
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4
ペットボトルを強く押して中が透明であることを確認し、指の力を瞬時にゆるめます。この動作を繰り返し、中の様子を観察します。
実験を成功させるコツとヒント
・ペットボトルは炭酸飲料が入っている弾力の強いものを使ってください。
・雲をつくるときは、一気に力をゆるめてペットボトルを膨張させるときれいにできます。
雲ができるためには、水以外にも必要なものがあります
実験の材料として、水のかわりのアルコール以外に消臭スプレーを使いました。実は自然界でも、雲ができるためには水以外にもうひとつ必要なものがあります。それはエアロゾルと呼ばれる空気中の細かいちりです。空気の温度が下がって水蒸気を抱えきれなくなっても、ちりひとつない状態では、水蒸気はなかなか水滴になりません。水滴の核となるものが必要なのです。
空の上には、海水に由来する塩の粒や火山の噴出物、工場や自動車から排出された微粒子など、さまざまなエアロゾルがただよっています。それらを核として水蒸気が水滴になり雲ができます。消臭スプレーの微粒子も、水滴をつくる核の役割を果たしていたのです。エアロゾルをはじめ、雲の中で起こる現象には解明されてないことも多く、気象予報や防災のために研究が続けられています。
実際の雲のでき方は? 自然界の断熱膨張と断熱圧縮
少し意外に感じるかもしれませんが、空気のかたまりは別の空気と混じりにくい性質があります。ある空気のかたまりが急に気圧の低い上空に持ち上げられると、まわりの空気の温度の影響をほとんど受けずに体積が膨張します。すると、その空気のかたまりの温度が一気に下がり、空気中の水蒸気が雲になります。これが、自然界で起こる断熱膨張です。地表付近の空気が強い日射で温められて軽くなり、上昇してできる入道雲がその代表。低気圧に周囲の空気が吹き込んでできる雲や、山の斜面に風がぶつかってできる雲などもこのしくみで生まれます。
断熱膨張とは逆に、上空にある雲を含んだ空気のかたまりが急に気圧の高い地表付近に降ろされると、体積が圧縮されて全体の温度が一気に上がり、雲が消える断熱圧縮が起こります。強い気流が高い山脈を越えるときに発生するフェーン現象や、高気圧の中心部で見られる晴天は自然界の断熱圧縮によるものです。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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