試してフシギ

電流と磁界コンパスを持って電車に乗ると…(No.244)

コンパスを持って電車に乗ると… コンパスを持って電車に乗ると…

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

電車の中でコンパス(方位磁針)を見ると、磁針の指す方向がくるくる変化します

そうなんだ!

方位磁針は常に南北を指すので、一定の方向に移動していると磁針の向きは変わりません。ところが電車の中で方位磁針を見ると、一定の方向に走っていても磁針の指す方向が変化することがあります。 磁針の動きを観察すると、電車が動いたり止まったりすると針が大きく動いているようです。
実は方位磁針を動かしているのは、電車のモーターを動かすために流れる電流です。導線に電流が流れると一定の向きに磁界が発生し、磁界の中の磁石は力を受けます。多くの電車は、変電所から送られる電流を空中の電線(トロリー線)から車両に取り込み、モーターを動かした後に線路を経由して変電所に戻しています。電流は、この回路の中をいつも同じように流れているわけではなく、モーターの動きにつれて変化します。電車が動き出すと電流が流れて磁界が発生し、磁針の向きを変えます。また、モーターが止まると電流も止まって磁界が消えるので、磁針は本来の向きに戻ります。

動いている電車と同じ状態を作り、コンパスの動きを確かめてみましょう

トロリー線と線路による回路を模して導線で枠を作ります。一般的な電車は直流で動いているので、変電所から送る電力の代わりに乾電池を使います。回路の中に方位磁針を置き、電流を流したり切ったりして磁針の動きを観察します。

①方位磁針(コンパス)
②アルミワイヤー(太さ3mm)40cm
③紙やすり
④単3形乾電池 1個
⑤リード線 2本
・定規
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細

・方位磁針(コンパス) SODIAL ハイキング、キャンプやアウトドア活動の黒い油入りのコンパス
・アルミワイヤー 大創産業 アルミ自在ワイヤー(太さ:約3mm) ゴールド
・紙やすり 大創産業 木工用 カラーサウンドペーパー(♯100 粗目)
・単3形乾電池 パナソニック アルカリ乾電池 単3形

※実験材料の一例です。準備する際の参考にしてください。

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

観察してみよう

  • 1

    方位磁針を持って電車に乗ります。電車の動きにつれて磁針がどのように変化するか観察します。

工作・実験の手順

  • 1

    アルミワイヤーを図のように曲げて枠を作ります。ワイヤーの両端を紙やすりで磨いて塗装をはがします。

  • 2

    ワイヤーの枠を机などにセロハンテープで固定します。
    枠の中に方位磁針を入れ、リード線で電池をつないで電流を流します。

実験を成功させるコツとヒント

・交流電化された区間ではコンパスは動きません。JR線では、新幹線と北海道の全線、東北地方の大部分、常磐線・水戸線の一部、北陸本線の一部、九州地方の大部分の電化区間が交流です。東北地方や北陸地方、九州地方の第三セクター線にも交流電化区間があります。私鉄や地下鉄はほとんど直流電化ですが、つくばエクスプレスの一部区間は交流電化です。
・ワイヤーは太めのものを使用してください。電気抵抗を小さくして大きな電流を流すためです。
・電源は内部抵抗が小さめで、大きな電流を取り出しやすいアルカリ乾電池が適しています。

地下鉄や新幹線でもコンパスは動くでしょうか?

地下では方位磁針が南北を正しく指さないことがあり、空中に電線(トロリー線)のない地下鉄もあります。その場合でも、電車の動きによって磁針の向きが変化することが観察できます。トロリー線のない地下鉄では給電用の特殊なレールが設置されていて、通常のレールとの間で電気回路が作られています。モーターが動くときは、その回路に電流が流れて磁界が発生するので、車内の方位磁針が影響を受けます。
一方、新幹線の車内では方位磁針は動きません。その理由は、主に郊外を走る電車や、大きな電力が必要な新幹線などは交流電源で動いているからです。交流は1秒間に50~60回もプラスとマイナスが入れ替わり、発生する磁界の向きも正反対に変化します。急速で周期的な磁界の変化は方位磁針にかかる力を打ち消し合うので、動かないように見えるのです。

実験と観察で、電流と磁界の関係を学びましょう

導線に電流が流れると、導線の周りに磁界が発生します。磁界は導線に対して垂直な面に、電流の流れる方向に向かって右回りに生じます。これを「右ねじの法則」といい、右手の親指を真っ直ぐ伸ばして残りの指を軽く曲げると、親指が電流の向きを、残りの指が磁界の向きを表すのでよく理解できます。また、磁界の強さは電流の大きさに比例し、電流からの距離に反比例します。
実験装置のワイヤーの枠を南北方向に向けると、磁針の動きが最も大きくなります。これは、南北を向いた導線には垂直な東西方向に磁界が発生するので、本来なら南北を向いている磁針に大きな力がかかるからです。ここで電池の極を入れ替えると、電流の向きが反対になり、磁針も反対方向に動きます。電池を2個直列につないだり、コンパスをワイヤーに近づけたりすると磁針の動きがさらに大きくなります。
実際の電車でも、南北方向に走っているときに大きく磁針が動くことが観察できます。また、電車は加速するときに最も大きな電流が流れるので、そのときに磁針が最も大きく振れることもわかります。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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