試してフシギ

実像と虚像実は兄弟!?カメラと望遠鏡(No.236)

実は兄弟!?カメラと望遠鏡 実は兄弟!?カメラと望遠鏡

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

カメラに写る像と、望遠鏡で見る像にはどんな関係があるのでしょう。

そうなんだ!

カメラは、ものや風景の像を写すことができます。望遠鏡は、遠くの像を拡大して見ることができます。どちらもレンズが使われており、何か関係がありそうです。
カメラと望遠鏡の機能を一台で確かめられる装置を作って、両者のはたらきを比べてみましょう。
まず、カメラのしくみを実験します。実際のカメラは、レンズで集めた光をフィルムやセンサーでキャッチして写真にします。実験では、フィルムやセンサーの代わりに半透明のスクリーンを使います。レンズの筒をスライドさせてスクリーンとの距離を調節すると、逆さの像がくっきり映るところがあります。いわゆるピントが合った状態です。この像は、そこに実際の光が集まってできているので「実像」と呼ばれます。
次に、望遠鏡に変身させます。スクリーンをルーペに置き換えてのぞくと、逆さの像がカメラのときより大きく見えます。スクリーンに映っていた像を拡大して見ているのです。この像は、人間の視覚のはたらきでつくられたものなので、見える場所に実際の光の集まりは存在しません。そのため「虚像」と呼ばれます。

1. 虫めがね 1個
2. 黒い厚紙(A4) 3枚
3. 半透明のポリ袋
4. デスクルーペ 1個
(小さめの虫めがね2個でも代用できます)
・白い紙
・定規
・カッターナイフ
・はさみ
・セロハンテープ
・両面テープ

実験で使用した材料の詳細

・虫めがね:大創産業 拡大鏡(小)拡大率約2倍 レンズ径 約75mm
・黒い厚紙:協和紙工 黒ボール紙(A4)
・半透明のポリ袋:大創産業 冷凍用ポリ袋(小)
・デスクルーペ:大創産業 ミニルーペ 拡大率約3倍

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

工作の手順

  • 1

    虫めがねの焦点距離「f」を定規で測ります。
    太陽の光を白い紙に集めて最小になる距離を測ります。

    ※紙を焦がさないように長時間光を当てないでください。

  • 2

    黒い厚紙で、虫めがねのレンズの直径と同じ太さ、長さがfの筒を作ります。その筒を虫めがねにセロハンテープで固定します。

  • 3

    厚紙でカメラ型の部品と、スクリーンの部品を作ります。

    ※筒が7.8cmの場合の参考サイズ。
    筒の大きさに合わせて、窓が筒の内側に納まるように調整してください。

  • 4

    スクリーンの部品に半透明のポリ袋を両面テープで張ります。

  • 5

    厚紙で手順2の筒より一回り太い、長さfの筒を作り、カメラ型の部品をセロハンテープで固定します。

  • 6

    カメラ型の部品にスクリーンの部品をテープでとめ、スクリーンを開閉できるようにします。手順2の虫めがねの筒を差し込めば完成です。

実験の手順

  • 【カメラの原理】

    虫めがねを遠くの明るい物体に向けます。
    スクリーンに物体の像がはっきり映るように、筒を出し入れして調節します。

    ※太陽は絶対見てはいけません!

  • 【望遠鏡の原理】

    スクリーンを上げ、スクリーンのあった位置にルーペをかざしてのぞきます。拡大された大きな像が見えます。

実験を成功させるコツとヒント

・望遠鏡の接眼レンズは、倍率3倍以上ものが適しています。倍率が低いレンズしかないときは、2枚重ねにして使用してください。
・対象とする物体は、虫めがねの焦点距離の2倍より遠くに設定してください。
・対象とする物体が焦点距離の2倍より十分遠い場合は、筒の長さを短くできます。

鏡に映った像や映画の映像は実像? それとも虚像?

日常よく目にするさまざまな像について、実像か虚像か考えてみましょう。像が見える場所に実際の光の集まりがあれば実像。なければ虚像です。
まず、鏡に映った像はどちらでしょう? 鏡に映ったあなたの像は、あたかも鏡の向こう側にいるように見えます。しかし、鏡の向こう側にあなたの姿を描く光は存在しないので、鏡の像は虚像です。めがねで見る像は実際にそこにあるように見えるので、いかにも実像のような気がしますが、たとえば近視用では実際のものより近くに引きよせて像を見せているので、これも虚像です。
一方、映画やプロジェクターで映し出す映像は、どんな架空の物語であっても、スクリーンに実際の光の集まりとして像をつくっているので、実像です。

意外に古くて新しい。カメラと望遠鏡の歴史

遠くを見るのに欠かせない望遠鏡と、さまざまな記録を確実に残せるカメラ。便利で役立つふたつの道具は、どちらの歴史が古いのでしょう。望遠鏡は2枚のレンズを組み合わせればできるので、結構古くからありそうですが、発明されたのは1608年です。
このときの望遠鏡は対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使ったものでした。実験で作ったような2枚の凸レンズを使ったものは1611年に誕生します。
一方カメラの歴史を調べると、フイルムに像を写すものは望遠鏡より少し時代が新しく、1826年の発明です。
ところが、実験でやったスクリーンに像を写して見るタイプは、なんと紀元前から存在していたようです。「カメラ・オブスキュラ」と呼ばれ、壁に開けた穴から外の風景を壁に映して楽しんだそうです。レンズを使わないピンフォールカメラの原理によるものです。
結局、兄弟のようなカメラと望遠鏡は、どちらがお兄さんか判定が難しいですね。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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