試してフシギ

鋳造の原理溶かして固めて、大変身!(No.234)

溶かして固めて、大変身! 溶かして固めて、大変身!

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

複雑な形のものを何個も作りたい…
そんな時、あなたならどうしますか?

そうなんだ!

チョコレートなら簡単ですね。溶かして型に入れて固めれば、同じものが何個でも作れます。では、プラスチックはどうでしょう。一見難しそうですが、少し工夫すればチョコレートと同様にできるのです。材料のプラスチックは、比較的低い温度で溶ける手芸用のグルースティックを使います。型には料理用のシリコンカップを利用しましょう。シリコンの型に凸凹の絵柄をつけ、熱で溶かしたグルースティックを入れて冷やすと、プラスチックのメダルができあがります。この作業を繰り返せば、同じ形のものが何個でも作れます。実はこの方法、金属加工で広く使われている鋳造という技術と同じ発想です。

1. グルースティック
(手芸や工作で使うグルーガン用の樹脂)
2. シリコン製の料理・菓子用カップ 2個
3. 小さめの鍋かフライパン
・カッターナイフ
・ニッパー
・コンロ
・水
・はさみ

実験で使用した材料の詳細

・グルースティック 大創産業 グルースティック(太さ7.5mm 24本入)
・シリコンのカップ 大創産業 シリコンおかずカップ6号
・小型の鍋 大創産業 アルミ製鍋 (直火専用)約18cm

※実験材料の一例です。準備する際の参考にしてください。

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    シリコンカップの平らな面をカッターナイフで切り、メダルの絵柄を作ります。

  • 2

    ①をもう一つのシリコンカップの底に置き、グルースティックをニッパーで細かく切ったものを5mm程度の厚さに敷きつめます。

  • 3

    鍋に水を深さ1cmほど張り、②のシリコンカップを入れてコンロにかけます。沸騰したら弱火にしてグルースティックが完全に溶けるまで加熱します。

    ※鍋が空だきにならないように注意してください。
    ※カップに入れたグルースティックを 電子レンジで直接加熱したり、グルーガンで 溶かしてカップに流し込む方法でも作れます。

  • 4

    火を消してシリコンカップを取り出し、冷まします。溶けたグルーが固まったら型から外し、はみ出した余分な部分をはさみで切り取れば完成です。

実験を成功させるコツとヒント

・グルースティックはなるべく細かくした方が早く溶け、仕上がりもきれいになります。
・湯せんでグルースティックを溶かす場合は、室温などの条件にもよりますが、20分程度かかります。
・電子レンジで加熱する場合は、600Wで2分を目安にし、溶け残っている場合は様子を見ながら30秒ずつ加熱時間を増やしてください。

身のまわりには、溶かして固めて作ったものがいっぱい!

金属を溶かして型に流し入れ、固める技術が鋳造(ちゅうぞう)です。その鋳造で作った製品を鋳物(いもの)といいます。古くから使われている技術なので、身のまわりにも鋳物製品はたくさん見つかります。家の中では鉄鍋や鉄の風鈴、家の外に出ると門の鉄扉やマンホールのふたが鋳物です。大きなものでは、お寺の鐘や大仏さまのような金属製の仏像も鋳物でできています。普段あまり目にふれないところでは、家電製品や自動車の部品、工場の機械にも鋳物が数多く使われています。
プラスチックも溶かして固める方法で製品を作ります。プラスチックの場合は溶けても粘り気が強いので、圧力を加えて型に押しつける射出成形(しゃしゅつせいけい)という方法が多く使われます。このように、金属やプラスチックは溶かして自由な形に成型し、同じものを何個でも作ることができるので、人類文明の発展に大きな役割を果たしました。

奈良時代の国家プロジェクト、大仏さまの鋳造方法

世界遺産に指定されている奈良東大寺の大仏も、鋳造によるものです。高さが約15mあり、中は空洞になっています。銅を中心に約500トンの金属が使われ、のべ260万人の人々が動員されたと言われています。大仏が完成したのは奈良時代の752年。いったいどんな方法で、中空の巨大な鋳物を作ったのでしょう?
記録によると、大仏の鋳造方法はこんな手順でした。まず木の骨組みと土で大仏の原型を作ります。原型が完成すると、その外側に土を塗りつけて外型を作ります。外型を火で焼いて乾燥したら分割して取りはずし、内側も焼いて固めます。原型の表面を5cmほど削り取り、外型を元の位置に戻したら鋳型(いがた)の準備完了です。
鋳造が始まると、土を盛った足場に炉を設置し、木炭を燃やして銅を溶かします。原型と外型の間には5cmのすき間ができているので、溶けた銅をそこに流し込みます。全身を8段に分けて作業を進め、全身に銅を流し終えると足場の土を取り除き、作業用の穴から内部の土もかき出します。別に作った頭部をのせ、表面を金で化粧して完成です。重機や工業設備のない古代でも、工夫することで巨大な鋳物が作れたのです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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