試してフシギ

力の分散痛くない針 弱くない紙(No.221)

痛くない針 弱くない紙 痛くない針 弱くない紙

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

【つまようじにプリンをのせても刺さらないのはなぜ?】

1本のつまようじは、プリンに簡単に刺さります。ところが、数百本のつまようじを束ね、その上にプリンをのせると、刺さらずにプリンを支えることができます。針のようにとがったものが刺さりやすいのは、先端に押す力が集中するから。数多くの針を束ね、それぞれの先端にかかるプリンの重さを分散してやれば刺さりにくくなります。つまようじの上にプリンがのせられるのも、たくさんのつまようじでプリンの重さを分散するからです。


【コピー用紙に人がのってもつぶれないのはなぜ?】

1枚のコピー用紙は、ほんのわずかな力で折れ曲がります。それなのに、丸めて数多く並べると人がのってもつぶれません。実は、これも力の分散によるものです。まず、紙は丸めて筒にすることで飛躍的に強度が増します。A4のコピー用紙を1/4に切って筒にすると、1本で約1kgの重さを支えることができます。その筒を30本並べて、筒にかかる力を均等に分散させられれば約30kgの重さに耐えられるというわけです。

【実験① つまようじにのせる】
1. つまようじ 1束(約850本)
2. プリン(底に穴を開けて取り出すタイプ) 1個
3. 輪ゴム 1本

【実験② コピー用紙にのる】
4. コピー用紙(A4)
※必要な枚数は手順1で計算してください。
5. 丈夫な板(40cm×60cmくらい)
・はさみ
・セロハンテープ
・体重計

実験で使用した材料の詳細

・つまようじ 大創産業 トゥースピックスボーダー(約850本)
・プリン 江崎グリコ プッチンプリン 67g×3
・丈夫な板  モノタロウ アクリル板(透明)厚さ8mm 8×300×400

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

実験① つまようじにのせる

  • 1

    容器に入ったプリンにつまようじを1本刺し、簡単に刺さることを確認します。

  • 2

    つまようじの先を上に向けて平らにそろえ、輪ゴムで止めます。その上にプリンを静かに落とします。

実験② コピー用紙にのる

  • 1

    コピー用紙を1/4に切って丸め、セロハンテープでとめて筒にします。
    ※必要な紙筒の数は、次の式で計算してください。紙筒の数=のる人の体重(kg)+ 板の重さ(kg) + 5

  • 2

    紙筒を板の大きさに合わせて等間隔に並べ、上に板を置きます。

  • 3

    体を引き上げてもらい、真上から両足同時に静かにのります。
    ※おりるときも真上に引き上げてもらいます。

実験を成功させるコツとヒント

【実験① つまようじにのせる】
・プリンの代わりに絹ごし豆腐を使ったり、つまようじの代わりに生け花の剣山を使ったりしても同様にできます。

【実験② コピー用紙にのる】
・力が加わったとき、紙筒の両端が開かないように端までテープでとめてください。
・のるときもおりるときも斜めに力がかからないように、なるべく垂直に移動してください。

力を分散させると、やさしくなる。強くなる。

力を分散させて圧力を弱めたり強度を増すしくみは、身の回りでも多く利用されています。たとえば、一般的なベッドにはコイル状のバネ(スプリング)が数百以上も使われています。一つ一つのバネが体重を分散してやさしく支えるので、心地よく眠れるのです。一方、建築の分野では、建物の重さを分散させるさまざまな工夫が使われています。日本の伝統的な木造建築では、瓦ぶきの重い屋根を多くの柱や壁で分散して支えます。そのため、鉄やコンクリートを使わなくても、大きな建築物を造ることができるのです。

自然がお手本。筒を並べたハニカム構想

今回の実験でわかるように、薄い紙でも、筒にしてたくさん並べることで大きな力に耐えられます。自然界でも、これとよく似た構造が利用されています。そう、ハチの巣です。ハチは薄い壁でできた六角形の部屋をつなぎ合わせて巣を作ります。これをハニカム(ハチの巣)構造といい、工業製品にも多数応用されています。六角形の筒は、円形の筒とほぼ同等の強度を持つうえ、すき間なく並べられる利点があります。日本ガイシにも、ハニカム構造のセラミック製品がありますよ。

(写真)排ガス浄化用セラミックス「ハニセラム(R)」

紙で、家や教会まで造った日本人建築家

2011年の地震で大きな被害を受けたニュージーランドのクライストチャーチ大聖堂に代わり、再建までに臨時で使われる聖堂が紙の筒(紙管)で造られました。設計したのは、日本の建築家である坂茂(ばん・しげる)氏。長さ20m、直径60cmの紙管を使って、700人を収容できる巨大な紙の教会が誕生しました。大きな力がかかるA字型をした屋根と壁面を兼ねた部分に98本の紙管を並べ、建物の重さを支えています。 坂氏は、これまでにも災害用仮設住宅やギャラリー、ホールなど、数多くの建物を紙管で造ってきたことで世界的に知られています。紙の筒は、適切な処理を行うことで防水性や防火性が確保でき、木材や金属に比べて低コストでスピーディーに施工できます。力を分散して強度を保てるように設計することで、一定期間のみならず恒久的な建造物にすることも可能といわれています。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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