なんでだろう?
あれれ? 鉄製のボルトやナットといっしょに、小石が磁石にくっついて吊り上げられています。磁石につくのは鉄やニッケル、コバルトとその合金だけだったはず。この石は鉄鉱石などの特殊なものではなく、ごく普通の石です。何かトリックを使っているわけでもありませんよ。
そうなんだ!
実は、河原や海岸の石でも、磁石につくものがあるのです。場所によってかたよりはあるものの、ていねいに探せば100個に1個程度の割合で、磁石につく石が見つかります。磁石につく石の多くは、地中のマグマが固まってできた玄武岩や安山岩などの火成岩です。マグマには、磁鉄鉱などの磁気を帯びやすい鉱物が含まれています。溶けたマグマが冷えて固まるとき、それらの鉱物が地球の磁場によって磁化され、岩石全体が大きな磁石になります(残留磁気)。磁石にくっついた石は、残留磁気を帯びた岩石が、長い年月の間に風化して小石になったものです。磁石につく石には磁石と同じようにN極とS極があり、発泡スチロールにのせて水に浮かべると、ゆっくり動いて南北を示します。
1. ネオジム磁石(直径約13mm、厚さ約2.5mm)4個
2. 発泡スチロールの板(厚さ5mm程度)
3. 洗面器
4. 方位磁針
・カッターナイフ
・水
・マーカー
実験で使用した材料の詳細
・ネオジム磁石 大創産業 超強力マグネット
・発泡スチロール板 大創産業 カラーボード A1サイズ 白(厚さ5mm)
・洗面器 大創産業 オリーブ湯桶3.5Lブルー
・方位磁針 グリーンオーナメント コンパス
〈撮影用〉
・石 コーナン商事 特選黒玉砂利(30mm)
・ボルト コーナン商事 ユニクロ 六角ボルト 6×20
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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【観察編】
ネオジム磁石を4個つなぎ、
河原などで磁石にくっつく石を探します。
どんな石が磁石についたか観察しましょう。 -
【実験編】1
磁石によくくっつく石を選びます。
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【実験編】2
石の大きさに合わせて、カッターナイフで発泡スチロールを丸く切ります。
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【実験編】3
洗面器に水を入れ、発泡スチロールの上に①の石をのせて浮かべます。
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【実験編】4
10分ほどたって完全に静止したら、方位磁針で石の向きを確認し、石にマーカーで北を示す印をつけます。
※石のどの部分がN/S極であるかは、見た目ではわかりません。
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【実験編】5
石の向きを変え、10分ほど後にもういちど 石の向きを確認すると、④で示した向きとほぼ一致します。
実験を成功させるコツとヒント
・黒っぽい石は玄武岩の可能性が高いので、磁石につく石が比較的多く見つかります。そのほか、安山岩(グレー)や花こう岩(白黒まだら模様)も、磁石につく石が見つかりやすい火成岩です。
・集めた石にネオジム磁石を近づけないようにしてください。磁石につく石は磁気を帯びやすいので、強い磁石に長時間接触しているとその磁石によって磁化されることがあります。
・上記の理由で、残留磁気よりも、観察の際のネオジム磁石による影響の方が大きい場合もあります。
・石を水に浮かべるときは、気流などの影響を避けるため、石の大きさに合わせた発泡スチロールを使用してください。また、エアコンなどの風が当たらないようにしてください。
・水に浮かべた石は、机や床の鉄材、家電製品などの磁気に影響される場合があります。洗面器を鉄筋コンクリートの床にじか置きするのは避け、近くに鉄製品や家電製品のない場所で実験してください。
石に記された地球の歴史
マグマが固まるときに地球の磁場によって磁化された残留磁気は、そのときの地球の磁場の方向を示しています色々な年代の岩石を調べていくと、面白いことがわかってきました。なんと、時代によって地球の磁場は方向を変えていました。つまり、過去には南極と北極が現在と違う方向にあったのです。信じられないかもしれませんが、過去360万年間に少なくとも11回は、南極と北極が完全に入れ替わっていることが明らかになってきました。これを「地磁気逆転」といいます。地磁気逆転は、大陸移動の研究などを通じて、地球の構造や過去の変動の解明に大きな役割を果たしています。この現象を1929年に世界で初めて発表したのは京都帝国大学(現在の京都大学)の松山基範教授です。その功績から、78万年前~258万年前の磁極逆転期は「松山逆磁極期」と名づけられています。
どんな石でも磁気を持っている!?
磁石にくっつく石の多くは、比較的残留磁気の強い石です。ところが、磁石につかない石の多くも、砂粒や土さえも、わずかに磁化されて残留磁気を持っています。現代の測定技術を使えば磁気を検出することが可能なので、さまざまな研究に利用されています。 たとえば、サンゴに含まれる磁性を帯びた粒子を測定することで、過去に起こった津波を調べる研究が行われています。海底のサンゴは地球の磁場と同じ方向に磁化されていますが、津波によって移動すると、残留磁気は地球の磁場の方向とずれます。どの津波でどの石が動いたかを調べると、過去の津波の大きさや影響を知ることができます。 また、遺跡のかまど跡の残留磁気から、遺跡の年代を推定することも可能です。磁性を持つ物質は、ある一定の温度(キュリー点)以上になると磁力を失い、新たに磁化されます。これを利用して、かまど跡の焼けた土の残留磁気を調べ、知られている地磁気の変化曲線にあてはめます。この方法では、最小10年程度の誤差で年代推定できるそうです。
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