試してフシギ

水の凍結膨張岩をも砕く氷のチカラ(No.203)

岩をも砕く氷のチカラ 岩をも砕く氷のチカラ

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

氷に細い溝を掘って水を注ぎ、冷蔵庫でもういちど凍らせます。すると氷の周囲にひびが入り、手で軽くひねるとふたつに割れました。ときには、凍らせている途中に割れてしまうこともあります。かたく凍った氷が、どうして簡単に割れてしまうのでしょう?

そうなんだ!

水が凍ると、その体積は約9%増加します(凍結膨張)。そのため、水を容器に閉じ込めて凍らせると、高まった圧力で、ついには容器が壊れてしまいます。実験で氷の溝に注いだ水は、周囲の氷と庫内の冷気によって冷やされ、上から凍っていきます。すると、ふたをしたような状態で凍結が進むので、次第に圧力が高まり、耐えきれなくなって氷が割れてしまったのです。
自然界でも同じような現象が見られます。岩の割れ目にしみ込んだ水が凍ると、割れ目を押し広げます。凍ったりとけたりを長い年月繰り返すと、巨大な岩もついには、ぼろぼろに砕けます。このような水の凍結膨張が、岩石の風化の一因であると考えられています。

1.水を入れる容器
※紙コップなど
2..軍手
3..カッターナイフ
・水
・湯
・冷蔵庫

実験で使用した材料の詳細

・紙コップ 大創産業 ペーパーカップ 54個入(205mL)
・軍手 大創産業 ザ手袋 軍手
・カッターナイフ オルファ オルファカッター

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    容器に約3cmの深さまで水を入れ、冷蔵庫の冷凍室で凍らせます。

  • 2

    完全に凍ったら、容器に少しずつ水をかけて氷を取り出します。

    ※急に水をかけると氷が割れることがあります。

  • 3

    軍手をはめて、湯で温めたカッターナイフで氷の真ん中に溝を掘ります。

    ※ケガの防止と、手の熱で氷がとけるのを防ぐために、必ず軍手をはめてください。

  • 4

    図の大きさまで溝が掘れたら、溝に冷水を満たして、冷凍室でもういちど凍らせます。

  • 5

    1時間くらいたったら氷の様子を見ます。周囲にひびが入っていたら、手で軽くひねってみましょう。

実験を成功させるコツとヒント

・氷の掘り始めは、湯で温めたカッターナイフで一本の線を描くように、慎重に削ってください。溝がしっかりついてきたら、カッターの刃で溝の両側の壁を削るように掘り進めます。
・溝はV字型にならないように垂直に掘ってください。溝を深く掘るほど氷は割れやすくなりますが、底の氷が薄くなりすぎると、水を注いだときに底がぬけるおそれがあります。
・再凍結させるときは、一気に凍らせるのがコツです。冷凍室をなるべく低温に設定して、途中で開閉しないでください。

やっかいな凍結膨張のチカラを有効利用

水の凍結膨張による圧力は想像以上の大きさです。寒冷地で、冬に水道管が破裂する原因も水の凍結膨張です。また、土の中の水分が凍ることによって地面が持ち上げられ、道路や鉄道、建物が深刻な被害を受けることもあります。一方で、この大きな凍結膨張力を利用することも考えられています。コンクリートに穴を開けて水を注入し、特殊な冷却器で凍らせることによってコンクリートを割る技術です。この方法を使えば、騒音や粉じんの発生をおさえて建物を解体することができるので、建設業界で注目されています。

凍るとなぜ膨張? 水は不思議な物質

日常的に身の回りで経験することなので、水が凍ると体積が増えることは当たり前のように感じるかも知れません。しかし、液体から固体に変わるときに体積が増える物質は、水以外にはごくわずかしか存在しません。しかも、常温で液体なのは水だけです。物質の体積は分子の動き方によって変わります。液体では分子が動きやすいので体積が大きくなり、固体になると分子があまり動かないので体積が小さくなるのが普通です。ところが水は、4℃のときに体積が最も小さく、固体の氷になると体積が増えるのです。
水が凍結膨張するのは、水の分子の形に原因があるようです。水の分子は、マイナスの電気を帯びた水素原子2個と、プラスの電気を帯びた酸素原子1個がくっついています。分子が自由に動ける液体では、隣の分子のプラス部分、マイナス部分と引き合ってやや密度の高い状態になります。ところが固体の氷では、分子が規則正しく整列してすき間の多い結合をつくるので、液体より体積が増加するというわけです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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