試してフシギ

ハミルトンの風車風車を回す風船パワー(No.199)

風車を回す風船パワー 風車を回す風船パワー

実験監修:東海大学教育開発研究所所長 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

アルミホイルで羽根をつくった風車を風船で回してみましょう。といっても、風船の空気を羽根に吹きつけて回すのではありませんよ。 アルミホイルでつながっている、はなれた棒にゴム風船を近づけると、羽根がくるくると回り始めました。風がない室内なのに、どうして風車が回るのでしょう?

そうなんだ!

風車を回しているのは風船の静電気です。ただし、静電気が羽根に直接作用するわけではありません。ウールでこすった風船はマイナスの電気を帯びます。風船をアルミホイルに近づけるとマイナスの電気が反発し(プラスに帯電)、ホイルの反対側にマイナスの電気が集まります。それが金属の棒を通って風車の羽根まで伝わります。実は、この羽根の形に秘密があります。羽根は先端がとがった形ですね。静電気には、とがったところに集まる性質があるので、羽根の先端にマイナスの電気が集中します。すると、近くの空気の分子もマイナスに帯電するので、同じマイナスに帯電した羽根と反発します。このとき押し出された空気の反作用で風車が回るのです。このようなしくみをハミルトンの風車といい、高圧静電気を確かめる実験として知られています。

1.アルミホイル
2.ストロー 2本
3.ゼムクリップ 1本
4.ゴム風船 1個
5.マフラーなどのウール製品
・はさみ
・定規
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細

・アルミホイル 大創産業 アルミホイル 長さ24m×幅25cm
・ストロー 大創産業 ストレートカラーストロー
・ゼムクリップ アスクル ゼムクリップ大 29mm/100個入
・ゴム風船 大創産業 バールーンアート 9インチ/20個入り/ホワイト
・ウール製品 無印良品 ウールリブマフラー ベージュ

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    アルミホイルを図のように折って風車の羽根をつくります。
    羽根の中央部に、つまようじなどで小さな凹みをつけます。

  • 2

    アルミホイルを幅2cmに切って帯を3本つくり、つないでおきます。

  • 3

    ②のアルミの帯を2本のストローに同じ長さ(10cm以上)巻きつけ、巻き始めと終わりをセロハンテープでとめます。

  • 4

    両方のストローを30cm以上離して机などに垂直に固定します。

  • 5

    端を伸ばしたゼムクリップを一本のストローの先端にアルミに触れるようにテープで固定します。

  • 6

    クリップの先に羽根の凹みを合わせてのせ、バランスをとります。

    ※羽根の中央を少し山折りするとのせやすくなります。

  • 7

    風船をウール製品で10回ほどこすり、羽根と反対側のストローに近づけると、羽根が回ります。

実験を成功させるコツとヒント

・静電気の実験には湿度が大きく影響します。秋から冬にかけた、気温の低い乾燥した日がおすすめです。空気中の水分を通して静電気が逃げやすくなるので、湿度の高い夏場や雨の日は避けてください。また乾燥している冬場でも、加湿器や水分の出るガスストーブなどは使わないでください。
・部屋の中に空気の流れが起こらないように窓を閉め、エアコンや暖房器具も止めてください。
・手順通りにやってもうまく回らない場合は、アルミホイルの帯を次のように作り替えてみてください。アルミホイルを幅6cm、長さ60cmに切り、切り口が外に出ないように三つ折りにします。切り口やつなぎ目の小さな凸凹から、静電気が逃げている可能性があるからです。

宇宙探査機のイオンエンジンにも応用

ハミルトンの風車が動く原理を応用すると、宇宙空間での推進力にも使えます。それが、小惑星探査機はやぶさにも搭載されたイオンエンジンです。イオンエンジンは、空気のない宇宙空間で作動するように特殊なガスをプラスの電気を帯びた原子(イオン)にして、マイナスに帯電した電極で引きつけます。電極は網状になっていて、ほとんどのイオンは電極をすり抜けて宇宙空間へ飛び出します。このイオンの動きの反作用で、宇宙探査機が前に進むのです。

静電気はとがった先端が大好き

とがったところに集まりやすいという静電気の性質は、自然界でもしばしば観察されます。船のマストや高い塔の先端が光るセントエルモの火は、古来より怪現象として恐れられてきましたが、実は空気中の静電気によるもの。雷雲などの静電気が、船や塔のとがった部分に放電する際に、空気の分子とぶつかって発光しているのです。 この現象を積極的に利用しているのが避雷針(ひらいしん)です。一般的な避雷針は、とがった金属の棒に雷を導き、安全に地面に逃がして建物を落雷の被害から守っています。名前とは反対のはたらきなのが面白いですね。ちなみに避雷針を発明したのは、たこあげで雷が電気であると証明したベンジャミン・フランクリンです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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