試してフシギ

スイングバイの原理MISSION:燃料を使わず帰還せよ!(No.197)

MISSION:燃料を使わず帰還せよ! MISSION:燃料を使わず帰還せよ!

実験監修:東海大学教育開発研究所所長 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

宇宙空間を航行している宇宙機が、エネルギーを使わずに軌道を変えたり、加速や減速を行う「スイングバイ」という技術があります。ロケット噴射などの推進力を用いないのに、どうして運動の方向や速度を変えることができるのでしょう? スイングバイと同じような動きを観察できるおもちゃを作って、そのしくみを考えてみましょう。

そうなんだ!

宇宙空間をイメージした盤面に、宇宙機に見立てた鉄球を発射台から転がします。鉄球は盤上の2つの天体の近くを通ると進行方向が変化します。発射の方向や速さをうまく調節すると、鉄球を発射地点に戻すことも可能です。実は天体の絵の裏には、磁石が付けてあります。鉄球が磁石の近くを通ると、磁力がはたらいて運動の方向が変化するのです。実際のスイングバイでは、天体の重力を利用します。宇宙機が天体のそばを通過すると万有引力がはたらき、天体の大きな重力に引っぱられます。宇宙機は、その力と天体の公転速度を利用して軌道や速度を変化させているのです。

1.幅22mm以下の配線カバー(モール) 1m
2.プラスチックの下敷き(A4) 1枚
3.円形のフェライト磁石(直径20mm程度) 2個
4.鉄球(直径11mm程度) 1個
5.ジャンボ型ゼムクリップ 1個
6.コピー用紙(A4) 2枚
 ※宇宙と天体の絵はこちら
7.ストロー 3本
・セロハンテープ
・両面テープ
・カッターナイフ

実験で使用した材料の詳細

・配線カバー:大創産業 配線カバー 50cm 2本入
・下敷き:大創産業 A4サイズ下敷き 透明
・フェライト磁石:大創産業 強力マグネット 25個入
・鉄球:東急ハンズ スチール・ボール 10mm
・ストロー:友栄 カラーフレックスストロー 直径約6mm
・ゼムクリップ:アスクル ゼムクリップ超特大(100本入×10袋)

下記のPDFをプリントアウトしてください。

図案

[PDF:2.5MB]

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    配線カバーを下記の長さと数に切断し、5本を下敷きに両面テープで固定します。● 22cm×2 ● 20cm×2 ● 8cm×2

  • 2

    2個の磁石を下敷きの図の位置にセロハンテープで貼り付けます。

  • 3

    クリップを曲げて約10°の傾斜を付け、フタを取った残りの配線カバーに両面テープで貼り付けて発射台を作ります。

  • 4

    下敷きを裏返して宇宙の絵を描いたコピー用紙を貼り、磁石の上の位置に天体を描いた直径20mm程度の目印を貼ります。

    ※鉄球を使って紙の上から磁石の位置を確認できます。
    宇宙と天体の絵はこちら。

  • 5

    下敷きの3方の端にストローをセロハンテープで貼り付けます。発射台の向きが調整できるように、手前の天体に向けてセロハンテープで軽く固定してください。

  • 6

    発射台から鉄球を転がして、地球への帰還を狙います。鉄球のコースや速度(転がす高さ)を変化させ、鉄球の軌道がどのように変化するか実験しましょう。

    ※磁石の端の部分を狙うと鉄球の軌道が大きく変化します。どうしても成功しない場合は、発射台や磁石の位置を少し調整してください。

実験を成功させるコツとヒント

・鉄球の速度が速すぎると磁石の影響を受けにくいので、軌道の変化が小さくなります。磁石の近くを通過しても変化しない場合は、速度を落としてみてください。
・円形の磁石では、周辺部の磁力がいちばん強くなっています。鉄球の軌道を大きく変化させるためには、磁石のふちの外側ぎりぎりを狙うのがコツです。
・一つ目の磁石での変化が安定してきたら、それに合わせて二つ目の磁石の位置を微調整してみましょう。成功する確率が高くなります。

はやぶさも、ボイジャーもスイングバイのお世話に

宇宙探査機はやぶさの帰還やボイジャーの太陽系脱出にも、スイングバイが重要な役割を果たしました。小さな探査機が燃料を節約しながらミッションを成功させるためには、スイングバイが欠かせないのです。しかし実験でわかるように、鉄球の方向や速度が少し変わるだけで、スイングバイの結果は大きく左右されます。地球からはるか遠くの宇宙で、宇宙機を正確に制御するスイングバイの難しさが実感できますね。

惑星の公転速度を利用して宇宙機の加速や減速も

実験で使った磁石は固定されていますが、実際のスイングバイで利用する太陽系の惑星は、太陽のまわりを公転しています。軌道の計算はさらに難しくなりそうですね。でも、良いこともあります。動いている天体の重力を使ってスイングバイを行うと、宇宙機の進行方向だけでなく速度も変えられるのです。スイングバイの際に、宇宙機が惑星の公転方向と同じ方向に軌道を変えると、公転速度ぶんが足されて加速します。また、公転方向と逆方向に軌道を変えると公転速度ぶんが引かれて減速します。ボイジャー2号は木星、土星、天王星でスイングバイを繰り返して加速し、太陽系を脱出する速度を獲得しました。また、はやぶさに搭載されたイオンエンジンは、小型で効率は良いものの瞬発力に欠けます。そこで、地球を使ったスイングバイで推進力を補って小惑星イトカワに到達し、世界初の困難な任務を成功させました。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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