試してフシギ

聴診器心臓の音を聴いてみよう(No.195)

心臓の音を聴いてみよう 心臓の音を聴いてみよう

実験監修:東海大学教育開発研究所所長 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

静かな場所で耳をすましても心臓の音は聞こえませんね。ところが医者は、聴診器で心臓などの音のわずかな違いや変化を聴きわけて診察します。聴診器は、身体に当てて音を拾う部分、耳にはめて音を聴く部分、そして、それらをつなぐチューブでできています。 非常にシンプルな構造なのに、どうして身体の小さな音を聴くことができるのでしょう?

そうなんだ!

音が空気中を伝わるときには、音を出すもの(音源)から四方八方に 振動が広がります。そのため、音源から遠くなるほど音のエネルギー(振動)が 急激に弱まるのです。距離が2倍になると音のエネルギーは1/4に、 距離が3倍になると1/9に減少します。聴診器は、拾った音をチューブの中に 閉じ込めて広がらないように伝えるので、音源から離れてもほとんど弱まりません。 まるで、身体に耳をぴったりつけて聴いているようなものです。 また、音を拾う部分にも工夫があります。一般的な聴診器は、目的に合わせて 表裏を切り替えて使えるようになっており、片方の面には薄い膜(振動板)が 張ってあります。身体に当てて、高い音を聴きやすくするためです。

1.吸盤(直径35mm) 2個
2.エアーチューブ50cm 2本
3.エアーポンプ用二又分岐バルブ 1個
4.お菓子の袋などの硬めのポリ袋
5.イヤホンの替えパッド 2個
・カッターナイフ
・彫刻刀(丸刀)
・セロハンテープ
・ビニール用接着剤

実験で使用した材料の詳細

・吸盤:大創産業 吸盤(横あなタイプ)4個入
・エアーチューブ スドー エアーチューブ 2m
・二又分岐バルブ 貝沼産業 2WAYバルブ
・お菓子の袋 関口醸造 お醤油屋さんのつけやき
・イヤホンパッド 大創産業 スペアインナーフィックス(白)

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    吸盤のつまみの部分をカッターナイフで切り取ります。 吸盤の内側から、元からある穴にそって彫刻刀で くり抜いて貫通させます。

  • 2

    5cm角に切ったポリ袋で二つの吸盤のうち、一つを包み、 四すみをセロハンテープで止めます。 さらに、はみ出ている角をテープで止めます。

    ※ポリ袋は、たるまないようにピンと張ってください。

  • 3

    エアチューブの一端にイヤホンの 替えパッドを差し込み、裏側からビニール用 接着剤で固定します。もう一本も同様にし、 接着剤をよく乾かします。

  • 4

    吸盤、二又分岐バルブ、エアチューブを 図のようにねじ込んで固定すれば、 聴診器の完成です。

    ※膜を張った吸盤と、そのままの吸盤は差し替えて使います。

  • 5

    膜のある吸盤で心臓の音を聴きます。 バルブを持って吸盤を身体に押し当て、 音を聴いてみましょう。

    ※バルブの栓が開いている(チューブと平行になっている)ことを確認してください。

実験を成功させるコツとヒント

・エアーチューブと二又分岐バルブは、水槽用のエアーポンプの部品です。ホームセンターやペットショップの熱帯魚コーナーで購入できます。
・イヤホンの替えパッドは、耳穴にぴったり合うサイズを選んでください。また、耳の中に抜け落ちないように、必ず接着剤でエアーチューブに固定してください。
・分岐バルブは、つまみを回して栓を開閉する構造です。聴診器から音が聞こえないときは、栓が閉じている可能性があります。分岐バルブの栓が完全に開いている(つまみがチューブと平行になっている)かどうか確認してください。

心臓の音はなぜ2拍子?

聴診器を心臓に当てると「ドドッ」という音が聞こえます。この音は、心臓が縮んで血液を送り出すときの前半の「ド」と、心臓が広がって血液を中に貯めるときの後半の「ドッ」が合わさったものです。この二つの動きがワンセットになって、心臓は休まず全身に血液を送っているのです。

船や潜水艦で使われる伝声管(でんせいかん)

映画などで、船員がラッパのような管に向かって話しているのを見たことがありませんか? あの装置は「伝声管」といって、船内で連絡するためのものです。しくみは聴診器と同じ。話し声が管の中を伝わって遠くまで届きます。故障しにくく、性能も良いので今でも一部で利用されています。

意外に新しい聴診器の歴史

患者の診察に聴診器が初めて使われたのは1816年といわれています。ただし、そのときの聴診器は、木でできた一本の筒のようなものでした。その後、身体に当てる部分がラッパ型に改良され、1850年代になって現在の形に近いY字型のチューブを使って両耳で聞くタイプが発明されました。それでは、聴診器が発明されるまで医者はどのようにして身体の音を聴いていたのでしょう? 実は、医者が患者の身体に直接耳を当てて、心臓などの音を聴いていたのです。その姿を想像すると、なんだかこっけいですね。しかも、この方法で身体の微妙な音を聞き分けることはほとんどできません。聴診器という簡単な器具の発明によって、心臓やさまざまな臓器の診察が容易に行えるようになったのです。近年では、音が立体的に聞こえるステレオ式や、電気的に音を増幅するデジタル式の聴診器も実用化されています。それでも医療の現場では、まだまだシンプルなアナログ式が主流です。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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