試してフシギ

振動モーターこすって、こすって、逆回転!?(No.184)

こすって、こすって、逆回転!? こすって、こすって、逆回転!?

実験監修:東海大学教育開発研究所所長 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

2段重ねにした大小2つのプラスチックのコップに、モール(色糸を巻き付けた針金)で作った輪がのっています。コップの側面に取り付けた凸凹をコインで素速くこすると、モールの輪がくるくる回り始めました。しかもよく見ると、2つの輪は逆方向に回っています。どうしてこんな動きをするのでしょう?

そうなんだ!

モールはせんいの細い毛が、中心の針金から放射状に生えた構造をしています。毛は少し傾いて生えているので、振動を与えるとモールの上下の動きが前後にずれる動きに変わり、同じ方向に少しずつ移動します。モールを輪にすると、前後の動きは回転運動に変化し、回り始めるのです。振動を直線運動や回転運動に変えるしくみを振動モーターといい、近年注目を集めている技術です。2つの輪が逆方向に動いたのは、毛の傾きが反対になるように輪を置いたからです。

1. カラーモール(色糸を巻き付けた針金) 2本
2. 大小のプラスチックのコップ(420mlと215mlくらい。 できれば同じ製品の容量違い) 各1個
3. 鉢底ネット 6cm×2cm
4. コイン 1個
・ニッパー
・はさみ
・両面テープ

実験で使用した材料の詳細

・カラーモール:大創産業 カラーモール4(太さ約5mm×15cm)18本入
・プラスチックコップ大:大創産業 クリアカップ 420ml(8個入)
・プラスチックコップ小:大創産業 クリアカップ 215ml(18個入)
・鉢底ネット:大創産業 鉢底ネット 細目(約30×10cm)6枚入

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    モールを曲げて直径2cmくらいの輪を2つ作ります。
    ※針金の端で手を傷つけないように注意してください。

  • 2

    鉢底ネットを小さいコップに両面テープで貼り付けます。

  • 3

    大きいコップの底の上にモールの輪を1つのせ、小さいコップを重ねてもう1つのモールをひっくり返してのせます。

  • 4

    コインで鉢底ネットを上下に素速くこすり、輪の動きを観察します。輪が同じ方向に回転するときは、片方の輪をひっくり返します。

実験を成功させるコツとヒント

・モールの輪は、出っ張りやゆがみがなく、コップの底に密着するように作ってください。
・2つのコップをしっかり密着させてください。形が合わずにすき間ができる場合は、手で押さえて密着する部分を作ってください。
・コップがツルツルしてモールが滑るときは、紙やすりでコップに軽くキズをつけると回りやすくなります。

超音波振動で動くモーターに注目

製品化されている振動モーターの多くは、振動の周波数が超音波の領域になるので、超音波モーターと呼ばれます。一般的なモーターは磁石とコイルを使っていますが、超音波モーターは電圧をかけると振動する部品を使います。構造が簡単なので小型化しやすく、カメラのオートフォーカスやズーム機能でレンズを動かすのに利用されています。また、磁気の影響を受けず電磁波も発生しないので、MRIなどの医療機器にも採用されています。

もうひとつの振動モーター

振動モーターと呼ばれるものには、実はもう1つ種類があります。携帯電話やゲーム機をブルブルさせているモーターです。こちらの方は、磁石とコイルで生み出した回転運動を振動に変えています。実験でやったのと反対の動きですね。モーターのしくみは、回転軸に中心をずらしたオモリを取り付け、わざとバランスを崩した回転をさせることで振動を起こしています。このタイプの振動モーターは、偏心モーターとも呼ばれています。

「振動で回らない」ことも大切

あれれ?振動で回転させる実験をしたのに、話があべこべです。でも、振動で回らないようにすることも、非常に重要な先端技術のテーマなのです。モノとモノを固定するネジは、通常の製品の場合、しっかりしめても振動で徐々に回転してゆるんできます。もし、電車や建物のネジが勝手にゆるんでしまったら、大変なことになりますね。振動してもゆるまないネジは、あらゆるところで求められる最先端の技術なのです。
ゆるまないネジにするために様々な方法が考えられ、世界中で多くの企業が競い合っています。その中でも、ジャンボジェットや新幹線、東京スカイツリーなどで使われ、世界的に高く評価されている製品を作っているのは、社員50人ほどの日本の企業です。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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