なんでだろう?
夜景の明かりが放射状にキラキラ広がっていて、きれいな写真ですね。実はこの写真、特別なカメラや機材は使っていません。身近な材料を使ったひと工夫で誰でも撮れるのです。いったい、どんな工夫をしたのでしょう?
そうなんだ!
キズをつけた透明シートをレンズに取り付けて撮影しました。シートのキズに秘密があります。細かい溝が平行に並ぶように、紙やすりでキズをつけています。溝の部分では光が乱反射して通りにくく、溝のない部分は光をそのまま通します。回折格子と呼ばれる構造です。 光は通常はまっすぐに進みますが、障害物があると遠回りして後ろに回り込む性質があります(回折)。シートの溝が障害物となるので、光は回折してシートを通過します。回折した光が隣の溝で回折した光と重なって強め合い(干渉)、新しい光の線ができるわけです。この現象は、溝の間隔が一定の細かさのときだけに起こります。
1. 透明な薄いプラスチックのシート
※お総菜パックなど(使用するカメラのレンズに合わせた大きさ)
2. 紙やすり
(2000番程度の細かいもの)
3. カメラ
※スマートフォン、デジタルカメラ、携帯電話のカメラなど、使用するカメラはどんなものでもかまいません。実験写真はコンパクトデジタルカメラで撮影しました。
・セロハンテープ
・はさみ
実験で使用した材料の詳細
・プラスチックシート:大創産業 ランチBOX大(3セット入)
・紙やすり:コーナン商事 耐水ヤスリ#2000
・カメラ:Apple i Phone(3G)
・ビジュアル撮影用カメラ:Canon PowerShot S95
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
紙やすりの折り山で、透明シートを1回だけ軽くこすってキズをつけます。このとき、紙やすりをまっすぐ動かしてください。
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2
【1】のキズの直角方向にもこすって、格子状のキズをつけます。
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3
カメラのレンズにセロハンテープでシートを固定し、夜景を撮影します。
※電球や遠くの明かりなど、点のように見える光源を撮影してください -
4
回折格子で強め合った光はキズに対して直角の方向に広がります。シートにいろいろなキズをつけて、どんな写真が撮れるか実験してみましょう。
実験を成功させるコツとヒント
・シートを紙やすりでこするときは、必ず1方向に1回だけ、軽く動かすようにしてください。キズが重複したり深く付きすぎると、きれいな光の線が現れません。
・夜景を撮影するときは、点のように見える小さくて明るい光源を撮ってください。窓の明かりやテレビの画面のような面積の広い光源は、この実験に向きません。
直進する光が回折を起こすのはなぜ?
真空や空気中で光が直進することは、よく知られていますね。ではどうして、光がシートの溝(障害物)の後ろに回り込む「回折」を起こすのでしょう? その理由は、光が電波などと同じ電磁波の一種であることを考えると理解できます。
たとえば、ラジオや携帯電話の電波は、アンテナが見えていない建物の陰でも回り込んで大体届きます。波の性質を持つ光も、同じように障害物の後ろに回り込むのです。回折格子のたくさんの隙間を通り抜けた光の波と波がぶつかると、強め合ったり打ち消しあったりする「干渉」が起こります。回折格子を通った点のような光が、キラキラ輝く光の線を作るのは干渉によるものです。
身近で見られる回折格子
自然界では、クモの巣によって光の回折が起こり、キラキラと輝いて見えることがあります。クモの巣は、数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のクモの糸で規則的に構成されているので、回折格子の役割を果たすのです。また、規則的に並んだ小さな面の反射によっても回折は起こるので、CDやDVDでは、記録面の細かいくぼみに反射した光がキラキラ光って見えます。
宇宙開発でも大活躍する回折格子
回折格子には、光を波長(色)ごとに分けるはたらきがあります。一方、天体を構成する原子や分子から出る光は、それぞれに特有の波長(色)を持っています。回折格子を望遠鏡に取り付けて天体から届く光を分析すると、どんな原子や分子からできているか、生命存在の可能性があるかがわかります。また、人工衛星や惑星探査機にも搭載され、地球や惑星の大気なども分析しています。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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