試してフシギ

大気圧コップはなぜ落ちない?(No.177)

コップはなぜ落ちない? コップはなぜ落ちない?

実験監修:東海大学教育開発研究所教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

ビー玉が入ったコップを薄いプラスチックのシートでつり上げています。シートとコップの間に、接着剤などは使っていません。上に置いただけのシートで、なぜ重いコップを持ち上げることができるのでしょう?

そうなんだ!

コップを持ち上げたのは空気の圧力(大気圧)です。密着するシートによってコップの中と外に圧力の差が生まれ、それがコップとシートを強くくっつけたのです。 シートをコップに置くときは、軽く押しつけて密着させるので、コップ内の空気の体積が少し減少します。そのままコップをつり上げると、シートが上に引っぱられて、コップ内の空気の体積が少し増加します。つまり、空気の密度が低くなって圧力が下がります。すると、通常の大気圧がかかるコップの外側から圧力の低い内側に向かって、シートを強く押しつける力が働くのです。

1. クリアファイル 1枚
2. 粘着テープ付きフック 1個
3. プラスチックのコップ(口の直径7.5cmくらい)数個
4. ビー玉(直径1.7cm)50個くらい
5. 割りばし 1本
6. 糸 50cm
7. カッターナイフ はさみ 定規

実験で使用した材料の詳細

・クリアファイル:大創産業 A4クリアホルダー 12枚入
・粘着テープ付きフック:大創産業 配線コードどめ 小16個入
・プラスチックのコップ:大創産業 275ml プラスチックカップ 14pcs
・ビー玉:CAMEL Brand ビー玉

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    クリアファイルの平らな部分から10cm角のシートを切り出します。

  • 2

    クリアファイルの外側だった方のシートの中央に、フックをはりつけます。 ※光沢の強い方が外側です。

  • 3

    プラスチックコップの上に②のシートを置きます。軽く押してから持ち上げると、コップがシートにくっついてきます。

  • 4

    空のコップでコツをつかんだら、オモリ(ビー玉)を少しずつ入れて試してみましょう。どれだけ重いコップを持ち上げられるかな?

  • 5

    実験を応用してつりゲームができます。フックと割りばしを糸で結び、糸がぬけないようにフックを折り曲げます。これをつりざおにして、コップをつり上げて遊ぶことができます。コップに魚のイラストをはりつけると、魚つりゲームになりますよ。 ※シートがくっつきにくい場合は、フックの反対側に消しゴムなどのオモリをつけて調整します。

実験を成功させるコツとヒント

・クリアファイルのシートは、外側と内側で仕上げの状態が異なります。多くの製品では、外側の面にフックを取り付けた方がよくくっつきます。ただし、製品によっては加工の状態が異なる場合もありますので、うまくいかない場合は内側の面にフックを取り付けて実験してみてください。
・クリアファイルから切り出したシートは、時間がたつと変形する場合があります。変形したシートはコップと密着しなくなるので、実験に使用しないでください。
・コップを持ち上げるためには、内側の空気を少し追い出す必要があります。魚つりゲームなどの際は、少し勢いをつけてシートを落とすとうまくくっつきます。

気づかないけど意外に大きい大気圧

コップをつり上げるときに変化した空気の体積は、ほんのわずかです。それなのに、200g以上のビー玉を持ち上げることができました。普段はあらゆる方向から同じ力がかかってつり合っているので、大気圧を感じることはあまりありません。しかし大気圧は、地表付近では1cm2あたり約1kg重にもなるので、密閉したコップ内の圧力が低下すると、大きな力となって現れます。 シートにかかるおおよその力を計算すると、コップの上の面積が約40cm2なので、コップの中の空気の体積がわずか1%変化しただけでも、持ち上げる力は400g重になります。

身の回りには大気圧を利用したものがいっぱい!

私たちは、日常生活でも意識せずに大気圧を利用しています。吸盤、灯油ポンプ、掃除機、ふとん圧縮袋…。これらは、いずれも内部の空気を抜いて圧力を下げることで大気圧を利用するものです。また、ストローで飲み物を飲んだり呼吸によって息を吸うのも、大気圧の利用です。肺の容積を大きくすることで内部の圧力を下げ、大気圧との差で飲み物や空気を吸い込んでいます。

大気圧を実験で見せてくれたトリチェリ

大気圧は、その場所にかかる空気の重さです。地表付近の大気圧は1cm2あたり約1kg重であるとわかったのは17世紀のことです。いったいどうやって、大気圧の存在を知り、はるか上空までの空気の重さを量ることができたのでしょう?
1641年イタリアの物理学者エバンジェリスタ・トリチェリは、一方を閉じたガラス管に水銀を満たし、水銀の入った容器の上に逆さに立てる実験を行いました。ガラス管の中の水銀は自らの重さで下がっていきますが、一定の高さになると止まります。この高さが、ガラス管の中の水銀の重さと、大気が容器の水銀面を押す力がつり合ったところです。水銀の高さは約76cmになるので、その質量から大気圧の大きさが計算できました。
水銀柱の実験装置を使って観察していると、水銀の高さが毎日わずかに上下することがわかります。大気圧は日々変化するのです。その後、大気圧と気象との関連が明らかにされ、トリチェリの実験は科学的な気象予報の出発点にもなりました。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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