試してフシギ

重力落ちる「まと」に当たるかな?(No.169)

落ちる「まと」に当たるかな? 落ちる「まと」に当たるかな?

実験監修:東海大学教育開発研究所教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

「矢」を発射すると同時に「まと」が落下する実験装置をつくりました。「矢」を「まと」に当てるのは難しそうですが、科学的に考えると実は簡単。いったい、どこをねらえばうまく当てられるのでしょう?

そうなんだ!

落ちる「まと」に当てるには、つるした「まと」の上をねらう? それとも下? 実は、つるした「まと」そのものをねらえばいいのです。「まと」は放されると、垂直に落下を始めます。一方「矢」は発射の勢いで飛び出しますが、同時に重力にも引っぱられるので、前に進みながら落下していきます。重力に引っぱられる「まと」と「矢」は、同じ時間なら同じ距離を落下します。つまり、両方とも等しく落ちるので、最初の「まと」の位置をねらって発射すれば、命中させることができます。

※この実験は「モンキーハンティング」という名前で知られている重力の実験を家庭でも簡単にできるように改良したものです。

1.ストロー(直径6mm)1本
2.油粘土 少々
3.透明パイプ(直径10mm、長さ40cm)
4.ゼムクリップ 2個
5.輪ゴム 1本
6.アルミホイル (2cm×4cm)2枚
7.大型のマグネット付きクリップ 1個
8.鉄製のブックエンド 1個
9.スチール缶 1個(コーヒーなどの空き缶)
10.太い鉄くぎ 1本
11.エナメル線 10m(直径0.3~0.4mm)
12.単3乾電池 4本
13.乾電池ホルダー(直列4本用)
14.リード線 5m2本、20cm1本

・セロハンテープ
・ガムテープ
・はさみ
・紙やすり

実験で使用した材料の詳細

・ストロー:大創産業 500mlペットボトル用ストロー
・油粘土:大創産業 あぶらねんど
・透明パイプ:カワチ アクリルパイプ 10×1t×1000(40cmに切って使用)
・マグネット付きクリップ:大創産業 マグネットクリップ 大サイズ
・ブックエンド:大創産業 ナンバー入りブックスタンド
・鉄くぎ:八幡ねじ 丸釘(長さ125mm、太さ♯7〈4.6mm〉)
・エナメル線:ELPA エナメル線(直径0.4mm、10m)PP-07NH
・乾電池ホルダー:ELPA 電池ボックス(単3×4本)UM-340NH
・リード線:ELPA 10芯コード(5m 2本入)PP-14NH

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    ストローで矢をつくります。
    ストローを15cmに切り、片側にオモリとなる粘土を約1cmつめます。反対側をつぶしてV字型に切り、ゴムをかける部分をつくります。

  • 2

    パイプの端に、輪ゴムを結んだゼムクリップをテープでまいて固定します。

  • 3

    アルミホイルを四つ折りにし、片側をV字型にカットしたものを2つつくります。

  • 4

    ②とは反対側のパイプの端に③のアルミを固定します。

  • 5

    マグネット付きクリップでパイプをはさみ、鉄製のブックエンドに固定します。
    倒れないよう重い本などをのせてください。

  • 6

    エナメル線を鉄くぎに巻きつけ、両端約1cmの被膜(ひまく)を紙やすりではがし、リード線(5m2本)をつなぎます。
    ※リード線に乾電池をつなぎ、くぎの先にスチール缶がくっつく(電磁石になる)ことを確認しましょう。

  • 7

    くぎのとがっている方を下にして高い位置にガムテープなどで固定します。
    ※壁から5cm以上離してください。

  • 8

    発射装置、電池ボックス、落下装置を左図のように接続します。
    発射装置にはリード線を図のように固定します。

  • 9

    発射装置のアルミの先を曲げて、かみ合うようにセットします。
    通電して落下装置のくぎが電磁石になります。

  • 10

    落下装置の下にクッションになるもの(座布団など)を敷きます。窓や壁に「まと」や「矢」が当たって傷つかないよう、カーテンや段ボールなどでカバーしてください。

    くぎの先にスチール缶をくっつけて「まと」にします。

    パイプの輪ゴム側からのぞいて、「まと」が真ん中に見えるように、発射装置の向きを調整します。

    「矢」が発射装置のアルミを突きぬけると電流が切れてくぎに磁力がなくなり、「まと」が落下します。

実験を成功させるコツとヒント

・ストローの「矢」は長すぎると飛びにくく、短すぎると飛び方が不安定になります。
・透明パイプが入手しにくい場合は、太いストローをつなぎ合わせたもので代用できます。
・輪ゴムはクリップに結んでからパイプに固定してください。輪ゴムを直接パイプにはりつけても、しっかり固定できません。
・マグネット付きクリップでパイプをはさんだときにすき間ができる場合は、パイプにティッシュ等を巻いて調節してください。
・「まと」は重すぎると磁石につきにくく、軽すぎると空気抵抗の影響で不安定な落ち方をします。この実験装置では、缶コーヒーの空き缶程度がちょうどよい重さです。また、磁石につける部分が鉄なら、他の部分はどんな材質でもかまいません。
・発射する際は「矢」を7cmくらい引いて放すと、ほどよい高さで「まと」に当たります。「矢」を強く引くと上の方で当たり、弱く引くと下の方で当たります。上手に「矢」が飛ばせるようになるまで、「まと」をセットせずに何回か練習することをおすすめします。
・実験を長く続けていると鉄くぎが磁化され、電流が切れても磁力が残るようになります。その際は、電池のつなぎ方(+ - の極性)を逆にすると磁化が解消されます。

ガリレオやニュートンが明らかにした重力のはたらき

古代ギリシャのアリストテレス以来、「ものが落ちるのは重さのせいで、重いものほど早く落ちる」と考えられてきました。ところが、ガリレオ・ガリレイはそれに疑問を抱き、物体の落ち方は重さとは関係なく、同じ時間なら同じだけ落下することを実験によって確かめました。1638年のことです。このとき、ピサの斜塔から落下の実験したといわれているのは後生の創作で、実際はさまざまな斜面を使って実験したようです。
その後、アイザック・ニュートンは1687年に「万有引力の法則」を発表しました。万有引力とは、太陽も地球もリンゴも、あらゆる物体が持っている互いに引き合う力です。この万有引力に、地球の自転による遠心力の影響を加えたものが重力です。地球上にある物体は全て重力によって引っぱられるので、ガリレオが発見したように重いものも軽いものも同じように落下します。ちなみに、ニュートンが生まれたのはガリレオが亡くなった年。ガリレオやニュートンの研究によって、物理学は大きく進歩しました。

「矢」は地球の重力から脱出できる?

この実験で「矢」を強く引いて発射すると勢いよく「矢」が飛び出して、高い位置で「まと」に命中します。それでは、もっと勢いをつけて「矢」を発射したら、重力によって地面に落ちることなく、飛び続けることができるのでしょうか? 理論的には、時速約2万8千kmで発射すれば重力とつり合って人工衛星のように地球のまわりを飛び続けます。さらに時速約4万km以上で発射すれば、重力を振り切ってロケットのように宇宙に飛び出します。でも、ゴムの力でこんな速度を出すのは、とてもできそうにないですね。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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