試してフシギ

はっ水水にぬれない紙をつくろう(No.167)

水にぬれない紙をつくろう 水にぬれない紙をつくろう

実験監修:東海大学教育開発研究所教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

紙の一部に油をぬって水にひたしました。しばらくして持ち上げると、水にぬれた紙はふやけて簡単にちぎれます。ところが、油をぬった部分はやぶれにくく、しっかり形が残りました。

そうなんだ!

紙は植物の細かい「せんい」がたくさん集まってできています。紙が水にぬれてちぎれるのは、せんいの間に水の分子が入りこみ、せんい同士の結びつきを弱めてしまうからです。それでは、紙に油をぬると、どうなるのでしょう?
紙のせんいの間に油の分子が先に入りこむので、水の分子は入れなくなります。
しかも、油には紙のせんいの結びつきを弱めるはたらきがほとんどありません。そのため、油をぬった紙(油紙)は、水をはじく「はっ水」素材として昔から利用されてきました。

1.ノート、チラシ、新聞紙など(水がしみこみやすく、ちぎりやすい紙)
※紙の種類によっては、水がしみこみにくく、ちぎれにくいものがあります。コピー用紙よりも薄くてやわらかい紙が適しています。
2.食用油(サラダ油など)
3.絵筆
4.容器(洗面器やボウルなど)

※実験で使った容器や絵筆には油が付着しているので、洗剤でよく洗ってください。

実験で使用した材料の詳細

・紙:ショウワノート ジャポニカ学習帳自由帳
・サラダ油:日清オイリオ 日清サラダ油
・絵筆:大創産業 クラフト絵筆(丸筆)
・容器:大創産業 水切りザルトレイ(大)

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    紙の一部(片面でよい)に絵筆で食用油をぬります。
    ※写真のようにイラスト(カエルとヘビ)を入れる場合は、あらかじめ油性ペンで描いておきます。

  • 2

    油をぬった紙を水にひたします。

  • 3

    水でふやけた紙は簡単にちぎれます。
    ふやけた部分の紙をやさしく取り除くと、油をぬった形が現れます。
    ※水にひたしたままちぎってもかまいません。

実験を成功させるコツとヒント

・実験に使う紙は、あらかじめ水でぬらして、水のしみこみやすさやちぎれやすさを確かめることをおすすめします。薄くて水のしみこみやすい紙が適していますが、半紙やトイレットペーパーのように極端にやわらかい紙は、油でもちぎれるので実験に向いていません。
・油をぬったら、すぐに水につけてください。時間がたつと油が周囲にしみて境目がぼやけ、きれいにちぎれなくなります。また、複雑な形にぬった場合もきれいにちぎれません。
・紙には「紙の目」と呼ばれるせんいの並ぶ方向があります。紙の目の方向には裂けやすく、横方向は裂けにくい性質があるので、紙の目にあわせてちぎり方を加減してください。

紙で作る日本の伝統傘

水に弱いはずの紙で傘を作るなんて! 和傘を初めて見た西洋人は、きっと驚いたことでしょう。西洋傘は布を使うのに対し、和傘は和紙に油をぬった油紙を使うからです。ところが実際は、実験でもわかるように、油紙はすぐれたはっ水機能を持つ材料なのです。
和傘以外にも、油紙は雨がっぱや荷造り用の梱包材として重宝されてきました。現代でも医療用や金属製品のサビを防ぐ目的で利用されています。

シュッとひとふきで、はっ水

衣類などを雨から守ってくれる防水スプレーは、どんなはたらきをするのでしょう? 防水スプレーには、油と同じようにはっ水性のある「フッ素樹脂」が使われています。スプレーをかけると布の表面に一時的に薄い膜がつくられ、水をはじいてくれるのです。

自然界の「超はっ水素材」

ハスやサトイモの葉に水を落とすと、水はコロコロと転がり、決して葉をぬらすことはありません。いわば、天然の超はっ水素材です。ハスやサトイモの葉が水をはじくしくみは油紙とは少し異なり、葉の表面の構造に秘密があります。一見なめらかに見える葉の表面には、非常に細かい突起が無数にあって、水滴をつぶさないように支えているのです。これらの植物の超はっ水性を応用することで、汚れない壁やワイパーのいらない自動車のフロントガラスが作れると期待されています。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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