なんでだろう?
はかりの上にスパゲティを立てて指で押し、どれくらいの重さまで耐えられるかを量ります。長さを半分にしたら、どうなるでしょう?さらに、その半分にしたら…。何か面白い関係が見つかりませんか?
そうなんだ!
スパゲティの長さを半分にすると、耐えられる力は約4倍になります。さらに半分(最初の1/4)にすると、約16倍になります。逆に、長さが2倍になると強さは1/4、4倍になると1/16になります。つまり、耐えられる重さは長さの2乗に反比例します。柱の長さと強さの間に、このような数学的な法則があることを発見したのは18世紀の数学者オイラーです。それまでは、職人のカンに頼っていた建築物の強度が計算で正確に出せるようになり、その後の高層建築の進歩に大きく貢献しました。現代の超高層ビルにもつながる重要な法則を家庭にあるスパゲティを使って、手軽に確かめてみましょう。
1. はかり
2. スパゲティ
実験で使用した材料の詳細
・はかり:デジタルキッチンスケール QE-KE-4
・スパゲティ:昭和産業 スパゲッティ1.6mm
[実験の注意]
・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。
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1
1本のスパゲティをはかりの上に立てて、上から指でゆっくり力を加えます。スパゲティが耐えられるぎりぎりの重さになると、はかりの表示が変わらなくなるので、そのときの数字を読みとります。
※スパゲティが折れたときは、折れる直前の数字を使います。 -
2
スパゲティを半分の長さにして、同じように量ります。
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3
スパゲティをさらに半分(1本の1/4)にして、同じように量ります。
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4
3つの数字が法則にあてはまることを確認しましょう。
実験を成功させるコツとヒント
・スパゲティが折れる直前には、力を加えても、はかりの表示が変わらなくなるポイントがあります。少しずつ慎重に力を加えながら、そのポイントを見つけてください。
・はかりの上でスパゲティがすべって実験しにくい場合は、小さく切った両面テープをはかりの中心にはると、すべり止めになります。
・スパゲティはどんな太さでも実験できますが、指で押したときにほどよい力で折れるには、約1.6~1.8mmが適しています。うどんなど他の乾めんでも実験は可能です。
・実験で得られるデータには誤差が生じます。数式は目安と考えてください。
天才数学者オイラー
柱の長さと強さの法則を発見したレオンハルト・オイラーは1707年にスイスに生まれた数学者・科学者です。その業績はぼう大で、オイラーの名前が付いた法則・定理・公式は非常に多く、歴史上最も多産な研究者といわれています。彼は晩年目が見えなくなりますが、それでもすべての計算を暗算で行って論文を書き続けました。オイラーの柱の法則は、正確には「長柱の座屈(ちょうちゅうのざくつ)」の法則といいます。柱の条件によって複数の公式がありますが、その基本になるのは「柱が耐えられる重さは長さの2乗に反比例する」ということです。柱の長さと重さの関係は下の表のようになります。
4500年で5.6倍?
現在、世界一高い建造物はアラブ首長国連邦ドバイにある828mの「ブルジュ・ハリファ」。一方、紀元前2540年頃に造られた古代エジプトのクフ王のピラミッドは建設当時147mでした。この4500年の間に人類は宇宙に進出するほど技術を発展させましたが、建造物の高さは数倍にしかなっていません。実験でもわかるように、建物が高くなると柱が急激に弱くなるので、高い建物を造るのは非常に難しいのです。
古代日本の高層建築
古代の出雲大社は高さが約48m(現在の約2倍)もあったと伝えられていましたが、実在したかどうかは証拠が無く、疑問とされていました。ところが、2000年に出雲大社の境内から巨大な柱の根もとが発掘されました。直径約1.4mの杉を3本組にしたもので、平安時代の図面に描かれた柱と一致。これにより、伝承の高層建築が実在した可能性が高まりました。古代の日本人も、高い建造物を支えるために工夫して、強い柱を作っていたのですね。
NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
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