フシギなTV

生き方を変える!? メタモルフォーシス(No32 メタモルフォーシス)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「メタモルフォーシス」のサイエンス

蝶は卵から幼虫、サナギ、成虫へと姿かたちを変えながら成長します。このような生き物の変化を「メタモルフォーシス(変態)」といいます。なぜメタモルフォーシスするのでしょう?
私たち人間にとってのメタモルフォーシスについても福岡ハカセに聞きました。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

私の夏休みの自由研究はアゲハチョウの飼育観察で、ミカンやサンショウの葉っぱに産みつけられた卵を持ち帰り、変化の様子を日記に記録しました。卵から(かえ)った幼虫はもりもり葉っぱを食べ、脱皮を繰り返し大きくなっていきます。そんな中、一番の驚きは、サナギの中で幼虫はドロドロに溶けて形がなくなり、その後、見事な翅を持った蝶が形成されたことです。

メタモルフォーシスの解説図

これほど劇的なメタモルフォーシス=変化(へんげ)を果たす生物は他にいるでしょうか?
もし、地球を探査するためにやってきた宇宙人が、アゲハチョウの幼虫、サナギ、成虫(蝶)を同時に見たとしたら、その姿のあまりの違いに、すぐには同じ生物体とは信じることができないでしょう。宇宙人を納得させるためには、少年ハカセのように蝶の一生をじっくり観察してもらうか、さもなければ、幼虫、サナギ、成虫のDNAを解析して同一のものであることを証明してみせる必要があります。

なぜ蝶はこんなにもメタモルフォーシスをするのでしょう?
その理由として、幼虫時代には安定的な食料源である植物をせっせと食べて成長しやすい形態をとり、成虫になるとパートナーを探すため、翅を持って行動できるように進化した、という仮説があります。

メタモルフォーシスの解説図

しかし、同じ昆虫でも、バッタやカメムシのようにそんなにメタモルフォーシスしないものも多数存在します。これらの生物は卵から生まれると、もう親と同じ形をしており、サナギになることはありません。
だから蝶のようにメタモルフォーシスする本当の理由は、実は科学者もうまく説明することができないのです。

一方、ヒトを含む哺乳動物は、体格や体重は増加するものの、姿かたちはそれほど劇的にはメタモルフォーシスしません。これは、親がいて食物を供給してくれたり、守ってくれたりするので、それほど生活様式を変化させなくてもいいから、と解釈することができます。

私たち人間は、蝶のように姿かたちを変えることはできませんが、自分の内面をメタモルフォーシスさせることはできます。
つまり考え方や見方、感じ方を変化させることができるのです。
私自身も、最初は遺伝子を一生懸命分析する分子生物学者として研究を進めていましたが、ミクロなパーツを調べるだけでは生命のことはわからないと気がついて、動的平衡の生命論を考えるようになりました。
勉強すること、何かを学ぶことの意味も、自分自身をメタモルフォーシスすることにあると私は思います。

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