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肌の大敵?救世主?恐竜にもあったメラニン(No29 黒色)

監修:生物学者  福岡伸一 
※監修者の肩書きは掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

今回のテーマ「黒色」のサイエンス

イカ墨やクワガタムシ、ヒトの黒い髪など、自然界の黒いものに広く含まれているメラニン色素。肌に沈着すればしみの原因になり、美容の敵と考えられがちなメラニンですが、実は生物の生存に欠かせない物質なのです。恐竜の色や模様の発見にもつながるメラニンの秘密を解き明かします。

福岡ハカセのもう一言よろしいですか?

自然界の中には黒いものがたくさん存在します。番組で紹介したイカ墨やタコの墨、黒光りするクワガタムシの背中、ヒトの黒い髪や瞳、これらの黒はほとんどの場合、メラニンという色素によって作られています。メラニンは、必須アミノ酸のひとつ、チロシンという白い粉状の物質を出発材料にして何段階もの酵素反応を経て生成されます。

しみ、そばかす、ほくろなどもメラニンが皮膚に沈着して起こります。そのため、普段、私たちはメラニンを美容の敵のように考えがちですが、生物にとってメラニンは生存のためになくてはならないものなのです。

メラニンの役割は、生物の身体を強い太陽光線(特に紫外線)から守ることです。太陽光線が、皮膚のメラニンにあたるとそこで吸収され、それ以上、深いところの細胞を傷つけずに済みます。日に焼けると皮膚が黒くなるのは、皮膚が反応してメラニン色素の生産を増やすためです。このようにメラニン色素の生産量は、ある程度は環境に応じて変えることができますが、もともとは、生活する場所に応じて、生産レベルの大小が遺伝的に決まっています。遺伝的に決まっているのは、メラニンを合成する酵素の強さです。

黒色の解説図

イカのように身体の色を瞬時に変えることができる生物もメラニンを使っています。皮膚の細胞の中にメラニンを貯めている小さな袋があります。この袋は普段は細胞の中心部に小さく凝縮されていますが、外敵が出現すると袋が星状に広がって、細胞全体の色を濃くします。残念ながら人間はこんな器用なことはできません。

黒色の解説図

古代の恐竜たちの皮膚にもメラニンがあったことが近年の研究でわかってきました。保存状態のよい化石を顕微鏡で見ると、メラニンを作る細胞が帯状に分布していることが判明したのです。実は恐竜はシマウマのようにストライプや、斑点状の模様があるカラフルな身体をしていたのではないかということです。面白い発見ですよね。

黒色の解説図

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