もっと知りたい!
溶けた熱い塩が意外なところで大活躍
固体の塩を加熱して溶かし、液体にしたものを溶融塩(ようゆうえん)または融解塩(ゆうかいえん)といいます。塩を水に溶かした食塩水などと違ってあまりなじみがありませんが、工業の分野では非常に重要な役割を果たしています。実験でもわかるように、溶融塩は電気を通しやすいという特徴があります。さらに、さまざまな物質をよく溶かし、高温でも化学的に安定しているなどの性質から、アルミニウムやマグネシウムといった金属の精練やフッ素などの化学物質の製造、金属の表面加工に利用されてきました。近年では、太陽熱発電の蓄熱材として再生可能エネルギーの普及にも貢献しています。さらに、未来のエネルギー源として期待される燃料電池の材料としても注目される素材です。

電気の強い絆で結びついたイオン結晶
イオンはプラスの電気を帯びた陽イオンと、マイナスの電気を帯びた陰イオンからなり、陽イオンと陰イオンは引き合ってくっつきます(イオン結合)。陽イオンと陰イオンが規則正しく並び、イオン結合でしっかりくっついたものをイオン結晶といいます。食塩(塩化ナトリウム)の粒を虫めがねで拡大すると、サイコロのような正六面体の結晶構造が見られます。炭酸カルシウムの結晶である大理石や、酸化アルミニウムの結晶であるルビーやサファイアも、イオン結晶の代表です。イオン結晶は非常に強力な力で結びついているので硬く、溶けにくく、常温では電気を通さないという共通の特徴があります。しかし、高温に熱して液体になると、イオンが自由に移動して電流が流れるのです。
一方、ガラスも溶けると電流が流れるのですが、食塩とはその様子が少し異なります。一般的なガラスは、主成分であるケイ素と酸素の原子が不規則につながり、そこにイオンが混じった構造なので、加熱すると原子の結合がゆるんでイオンが動けるようになります。しかし、イオン結晶ではないので電流は弱く、壊れやすいという性質があります。