試してフシギ

粘性摩擦どうすれば、ひと息でふくらむの?(No.253)

どうすれば、ひと息でふくらむの? どうすれば、ひと息でふくらむの?

実験監修:教育学博士 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

大人の身長以上もあるポリ袋が子どものひと吹きでふくらみました。

そうなんだ!

ポリ袋をつないで2m以上の長い袋を作り、息を吹いてふくらませてみましょう。
袋にぴったり口をつけて吹くと、よほど肺活量の大きい大人でも何回も息つぎが必要です。ところが、ある方法を使うと、子どもでも大きな袋がひと息でふくらみます。いったいどんなマジックを使ったのでしょう?
やり方はとても簡単。袋に口をつけずに、15cmくらい離れた位置からフーッと強く吹くだけです。一見、口をつけた方が効率いいように思われますが、実際は口を離して吹いた方が断然よくふくらむのです。
その原因は空気の粘り気(粘性)です。空気などの気体にはわずかに粘性があり、移動するときにまわりの空気との間で摩擦が発生します。これを粘性摩擦といいます。袋に口をつけて吹くと、吐いた息の分量しか送り出せませんが、少し離れて吹くと、周囲の空気を引きずってより多くの量が送られます。風船を使って粘性摩擦の効果を測ってみると、直接吹いたときの約6倍もの空気を送り出していました。だから子どもでも、ひと息でふくらむのですね。

①ポリ袋(幅20cm×長さ30cm)8枚
②ゴム風船 1個
③直径2.5cm、長さ3cm以上の筒
 (なければ厚紙を巻いて作る)1個
・はさみかカッターナイフ
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細

・ポリ袋 キャンドゥ キッチンポリ 小(幅200×縦300×厚さ0.008mm)
・ゴム風船 大創産業 バルーンアート 11インチ
・紙筒 明治 マーブルチョコレート
・紙筒用厚紙 大創産業 A4 厚紙 両面白色

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    ポリ袋1枚をのぞく7枚の底を切って筒状にし、テープでつなぎあわせます。残り1枚のポリ袋を底にしてつなぎ、細長い袋を作ります。

  • 2

    ①のポリ袋の口をテープで補強します。口を広げて机の端にテープで固定します。
    まず、15cmくらい離れて強く息を吹いてみましょう。

  • 3

    次に、風船をふくらませます。
    空気がもれないように風船のふくらみの根元を押さえながら、口に紙筒を取り付けます。

  • 4

    ポリ袋の口を広げて、風船から空気を送ります。
    ポリ袋と風船の距離を変えて、ポリ袋のふくらみ方を観察します。

実験を成功させるコツとヒント

・息を吹くときは、口をすぼめて一気に吹き出します。

飛行機や高速鉄道は、空気の粘性と戦っています

空気の粘性摩擦は、まわりの空気だけでなく固体の物質との間にも発生し、空気抵抗としてはたらきます。とくに高速で移動する飛行機や列車にとってはやっかいな存在なので、摩擦を減らすさまざまな対策がとられています。先端をとがらせた流線型の形状もそのひとつ。さらに、機体や車両の表面をなめらかにすることも、空気をスムーズに後ろに流す工夫のひとつです。

粘性摩擦を生み出す気体や液体の性質

空気などの気体だけでなく、水などの液体でも粘性摩擦が見られます。気体と液体を合わせて流体と呼び、流体には固体のように分子どうしがしっかり結びついていない、という共通した特徴があります。そのため、流体の分子は比較的自由に動き回ることができ、粘性摩擦などの流体に特有の現象を生み出しています。
流体の中で、速度の異なる2つのかたまりが接している状態を考えてみましょう。たとえば、今回の実験で行った、静止している空気に勢いよく息を吹き込んだ場合です。速度の異なる空気は完全に分離されているわけではありません。接している境界部分では、動いている空気と静止している空気の分子が自由に出入りしています。そのため、両方の空気のかたまりが同じ速度になるまでお互いに引っ張り合い、速度の速い空気が遅い空気を引きずって移動します。これが、粘性摩擦の正体です。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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