試してフシギ

圧力と浮力(浮沈子)上がれ!下がれ!水中エレベーター(No.154)

上がれ!下がれ!水中エレベーター 上がれ!下がれ!水中エレベーター

実験監修:元東京大学教養学部特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

水の入ったボトルの中で浮いたり沈んだりするおもちゃを「浮沈子」といいます。ふつうの浮沈子はボトルを押すと沈むのですが、逆にふわりと浮き上がる不思議な浮沈子を作ることもできます。

そうなんだ!

ポイントは水と浮沈子を入れるボトルの形。円筒ではなく、だ円に近い平らなボトルを使います。円筒の場合はどこに力を加えても中の水圧が上がりますが、平らな場合は力を加える場所によって、水圧が上がったり下がったりします。ボトルの腹(広い面)を押すと、円筒の場合と同じようにつぶれて水圧が上がります。この圧力で浮沈子も少しつぶれて体積が減り、浮力が小さくなって沈みます。これはふつうの浮沈子です。逆に浮沈子を浮き上がらせるには、ボトル内の水圧を下げればいいのです。ボトルの脇(狭い面)を押すと、ボトルが丸く広がって水圧が下がります。すると浮沈子にかかる圧力も減り、中の空気がふくらんで少し体積が増えます。その結果、浮力が大きくなって浮き上がるというわけです。このしくみは、「水中の物体はその物体が押しのけた水の質量だけ軽くなる」というアルキメデスの原理を応用しています。

1. 平らなプラスチックボトル1本(500ml)
(断面がだ円に近く、力を加えても元にもどりやすいもの)
2. お弁当用のしょうゆ入れ2個
(口が大きめのタイプが向いています)
3. 乾いた砂
4. アルミホイル

・ストロー
・コップなどの容器

実験で使用した材料の詳細

・プラスチックボトル:薬用マウスウォッシュ(リステリン)の空容器1本(500ml)
・しょうゆ入れ:たれビン角 小
・乾いた砂:素材探検隊 金華
・撮影で使用した海底都市と水中エレベーターのイラスト

下記のPDFをプリントアウトしてください。

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 2つのしょうゆ入れに砂を入れます。
    先を斜めにカットしたストローを使うと入れやすい。全体の4分の3くらいまで入れる。

  • 2

    コップなどの容器に水を満たし、ふたを閉めたしょうゆ入れを入れて浮き沈みを見ます。砂を少しずつ出し入れしながら重さを調節して、A・Bの2タイプの浮沈子を作ります。
    砂が多いと重すぎて早く沈み、少ないと軽すぎて水面から浮き上がる。軽くなりすぎた場合は、浮沈子の空気を抜いて浮力を調節する。

  • 3

    ボトルに水を入れてから2つの浮沈子を入れます。空気が残らないように水をいっぱいに満たします。

  • 4

    容器の首の部分に丸めたアルミホイルを軽くつめてふたを固く閉めます。

  • 5

    まず、ボトルの腹(広 い面)を押してみましょう。浮いている浮沈子が沈みます。手をはなすと浮き上がります。

  • 6

    次に、ボトルの脇(狭い面)を押してみましょう。沈んでいる浮沈子が浮き上がります。手をはなすと沈みます。

実験を成功させるコツとヒント

・水と浮沈子を入れるボトルの形が重要です。断面の形が丸や四角いものではなく、だ円に近い平らなものを選んでください。また、力を加えても元に戻りやすい、やや固めのものが適しています。
・しょうゆ入れはどんな形でもできますが、大きめの方が砂を入れやすく、重さの調整が容易です。
・浮沈子の重さは、砂の量で大まかに調節した後、空気の出し入れで微調整すると簡単にできます。
・ボトルに水道水を勢いよく入れると空気を大量に含み、浮沈子に気泡がついて浮力に影響を与えます。ゆっくり水を注ぎ、もし気泡がついたときはボトルを軽くたたいて取り除いてください。
・上昇する浮沈子(A)は、下降する浮沈子(B)より最初の動きがゆっくりしています。あせらないで、静かに力を加え続けると、ふわりと浮き上がります。

お風呂で浮力の原理を発見

古代ギリシャのアルキメデスは、王様から王冠が純金かどうか確かめるように命じられていましたが、良い方法を思いつきません。あるとき湯船につかるとお湯があふれ出るのを見て、浮力と体積の関係(アルキメデスの原理)に気づきました。彼は王冠と同じ重さの金塊を用意し、王冠と金塊の浮力が異なる(=体積が異なる)ことを実験で確かめ、王冠が純金ではないことを見破ったと言われています。

浮力の原理の応用

潜水艇(せんすいてい)

浮力の原理を応用したものに潜水艇があります。潜水艇の中には浮力を調節するタンクがあって、潜るときには海水を入れて浮力を小さくします。浮上するときには圧縮空気でタンクの海水を押し出したり、オモリを捨てたりして浮力を大きくしています。

地震から建物を守る

水の浮力を利用して建物を地震の揺れから守る免震(めんしん)システムが開発されています。免震システムとして多く使われているのは、建物の下に免震ゴムを設置して地震の揺れが建物に伝わらないようにする方法です。一方、水の浮力を使うシステムでは、大きな貯水槽(ちょすいそう)の中に建物を造って浮力で約半分の重さを支え、残りの半分を免震ゴムで支えます。この方法では、従来のシステムに比べてゴムを小型化できるので、地震の影響をより受けにくくするといわれています。また、貯水槽の水を消火活動や生活用水に利用できるメリットもあります。

船の積荷の重さを量る

鉱石など梱包されてない積荷を運ぶ巨大な貨物船。この積荷の重さの測定に、アルキメデスの原理が応用されています。浮かんでいる船が押しのけた海水の重さ(=浮力)は、船全体の重さと等しくなります。そこで、荷物を積む前と後とで船の沈み具合を測定し、積荷の重さによって新たに押しのけられた海水の容積を計算することで、積荷の重さを割り出しているのです。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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