試してフシギ

備長炭電池夏の思い出に(No.06)

夏の思い出に 夏の思い出に

実験監修:サイエンスディレクター 米村傳治郎 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

キャンプやバーベキューでこんな扇風機をつくったら大ウケ間違いなし。備長炭に食塩水を染み込ませた紙とアルミ箔を巻くだけで電池に変身です。では、なぜ備長炭でつくった電池がモーターを回すのでしょうか。
備長炭とアルミ箔をリード線でつないだままにしておくとアルミ箔はだんだん薄くなり、やがて小さな穴が開いてきます。これは、アルミニウム分子が、電子を放出してプラスイオンに変わって、食塩水に溶け込むためです。放出された電子は、リード線を伝って備長炭へと流れ、備長炭の持つ微小な穴に吸着している酸素と結びつき、酸素はマイナスイオンとなって、食塩水に溶け込みます。

このリード線を伝わる電子の流れで、モーターが回るのです。ところで、この電池は炭ならば何でもよいというわけではありません。備長炭のように電気をよく通す炭でなければうまくいきません。備長炭は、高温(1000度以上)で焼いた「白炭」と呼ばれる炭の一種で、一般に炭素含有量94%以上、硬度10以上のものをいいます。低温で焼いた黒炭にくらべ、不純物が少なく、炭素結晶が緊密に規則正しく並んでいるため、炭素の層の間を電子が動きやすい。つまり電気がよく通るのです。黒炭も、もう一度高温で焼くことで、白炭と同じように伝導率を高くすることができます。伝導率が高い炭なら備長炭でなくてもうまくいくかもしれません。

備長炭電池から始まる「なぜ」。そこに科学する心への入口が待っています。

・備長炭
(キャンプ用の木炭では電気抵抗が大きいので、必ず白炭と呼ばれる高温で焼いた炭を、中でも備長炭が最適です)
・アルミ箔
(キッチン用の普通のもの)
・和紙
(今回はキッチンペーパーで代用します)
・ミノムシリード線
(ワニ口クリップのついたリード線)
・モーター(模型用の小型のものを)
・厚紙
・食塩水

  • 1

    備長炭の長さより巻き付ける和紙の幅を狭く、和紙よりもアルミ箔の幅を狭く調整しておきます。

  • 2

    食塩水に浸した和紙を備長炭の端が見えるように備長炭に巻き付け、その和紙の上から、和紙の両端が見えるようにアルミ箔を巻き付けます。このとき、アルミ箔と備長炭がどこでも接触していないことを確かめてください。

  • 3

    厚紙を長さ10センチ幅1センチに切り、中央に小さな穴をあけます。モーターの中心を厚紙の穴にはめ込みます。厚紙とモーターを回転部をテープなどで軽く留めます。モーターとミノムシリード線をつなぎます。

  • 4

    ミノムシリード線の一方でアルミを、もう一方で備長炭をくわえてつなぐと回り始めます。

  • 5

    厚紙に等間隔に色を塗って縞にしたものを回転させると写真のように同心円が現れます。

  • 6

    回転が弱くなったら、次の方法を試してみましょう。アルミの上から強く握って密着させる/食塩水を紙にたらして濡らす/リード線の接触位置を変えてみる。

プロペラが動かない

・アルミ箔と炭とは接しないようにしてください。
・キッチンペーパーとアルミ箔を巻き終えたら、炭にきちんと巻き付くように「ぎゅっ」とにぎってみてください。

発電の原理を教えて。

一般の一次電池と同じで、電極物質と電解質の関係です。
この実験では、電極はアルミ箔と備長炭(炭素)、電解質はキッチンペーパーに染み込ませた食塩水です。
アルミが溶け出してイオン化し、電子が導線を伝い備長炭に達します。今度は備長炭に吸着されている酸素がイオン化し電解液(食塩水)中に溶け出します。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

NGKサイエンスサイトは日本ガイシが運営しています。ご利用に当たっては、日本ガイシの「プライバシーポリシー」と「ご利用条件•ご注意」をご覧ください。
本サイトのコンテンツ利用に関しては、本サイトお問い合わせ先までご相談ください。

このサイトが気に入ったらシェアしてください

page top