試してフシギ

コヒーラー静電気と電磁波のマジック(No.235)

静電気と電磁波のマジック 静電気と電磁波のマジック

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

静電気をパチッと放電すると、コップの中のLEDが点灯しました。

そうなんだ!

LEDに全く手を触れていないのに点灯するなんて、まるでマジックのようですね。でも、ちゃんと理由があります。 コップの中のLEDは、アルミホイルを介して電池とつながっています。アルミホイルと電池は軽く接触していますが、アルミニウムは酸化しやすく、すぐに表面が酸化膜で覆われて接触不良になります。アルミニウムの酸化膜は電気抵抗が大きいので、電流が流れなくなるのです。
それでは、放電によって何が起こるのでしょう? 放電すると電磁波が発生します。電磁波はガラスのコップを通り抜け、電池と接触しているアルミホイルの酸化膜に作用します。電池との接点には一瞬だけ高い電圧がかかるので、酸化膜に穴が開いて 電池とアルミホイルの間に電流が流れLEDが点灯します。このように、電磁波を受けると電流が流れる装置をコヒーラーといい、初期の無線電信では実際の受信機に使われていました。

1. プラスチックコップ(275ml) 2個
2. チラシなどの紙(A4程度) 1枚
3. アルミホイル
4. LED 1個
5. 3Vコイン型電池 1個
6. 小さめのガラスコップ
7. プラスチックの下敷き 1枚
8. マフラーなどのウール製品
9. 金属のフォーク
・はさみ
・セロハンテープ
・つまようじなどの細い棒

実験で使用した材料の詳細

・プラスチックのコップ:大創産業 275ml プラスチックカップ 14pcs
・アルミホイル 大創産業 アルミホイル(長さ約18m×幅約25cm)
・LED LED PARADISE 超高輝度5mm白色LED
・コイン電池 三菱リチウム電池 CR2016
・ガラスコップ 松徳硝子 うすはりオールドS
・下敷き 共栄プラスチック B5下敷乳白
・ウール製品 無印良品 ウールリブマフラー ベージュ
・フォーク ニトリ ヒメフォーク

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    まず静電気をためるコップを作ります。
    プラスチックコップに紙を巻きつけ、重なりや余分な部分を切り取って扇形の型紙を作ります。

  • 2

    アルミホイルに①の型紙を当てて切り取り、プラスチックコップに巻いてセロハンテープで留めます。これを2つ作ります。

  • 3

    10cm×20cmのアルミホイルを幅1cmに折りたたんで板状にします。これを図のように曲げて、重ねた2つのコップの間にはさんで集電板にします。

  • 4

    コヒーラー本体を作ります。LEDの足を少し開き、短い足を電池のマイナス極にテープで固定します。

  • 5

    1cm×5cmのアルミホイルをたてに二つ折りにします。
    一方の端をつまようじなどに巻きつけて筒状にします。

  • 6

    ⑤の巻いていない方を小さく折ってLEDの長い足にひっかけ、指でつぶして密着させます。巻いている方は電池のプラス極に軽く接触させ、LEDが最初は点灯するようにします。

  • 7

    LEDが点灯している場合は電池をつまようじで軽くたたいてLEDを消し、コヒーラーにガラスコップをかぶせます。

  • 8

    下敷きをウール製品でこすって静電気を発生させ、集電板から静電気コップにためます。

  • 9

    一方の手で静電気コップを持ち、もう一方の手でフォークを持って集電板に近づけます。放電するとLEDが点灯することを確認します。手順⑦~⑨を繰り返して、何度か実験してみましょう。

    ※放電すると体に電流が流れてピリッときます。 ピリッとくるのがいやな人は手袋をしてください。

実験を成功させるコツとヒント

・電池とアルミホイルは、自然な重みで軽く接触するようにしてください。電池に強く接触させると常時点灯状態になるので、コヒーラーとしてはたらきません。
・気温や湿度が高いと静電気が十分にたまらない可能性があります。また、乾燥した冬場などは静電気がたまりすぎで、放電したときにショックを受ける場合があります。手袋をしたり、こする回数を減らしたりして対応してください。
・電子ライターを使って電磁波を発生させることもできます。コヒーラーの調整に利用すると便利です。

原理は謎のまま実用化され、広く使われたコヒーラー

初期のコヒーラーには、電極の間に金属粉末を詰めたものが多く使われていました。というのもコヒーラーの原理は、19世紀末に金属粉末の電気的な性質を研究している際に、偶然発見されたからです。
金属粉末が電波を受けると電気抵抗が激減することがわかり、やがて電波の検出器に応用されるようになりました。この時点では、電波によって金属粉末が密着するためと考えられていたので、コヒーラーの名称は「密着する」という意味の言葉から取られました。実際の原理とは少し違っていたのですが、実用上は問題なく、代わりの手段もなかったので真空管が普及するまで広く使われました。悲劇的な最期を迎えたタイタニック号にも、コヒーラーを使った無線電信機が積まれていました。

実際にパチパチ火花を飛ばしていた初期の送信機

今回の実験では、電磁波を発生させるために静電気をためて放電する方法をとっています。部屋を薄暗くして放電すると、パチッと火花がとぶ様子が観察できます。実は、初期の無線電信の送信機には、これと同じ原理が使われていました。1887年にドイツの物理学者ハインリッヒ・ヘルツが「火花放電」によって発見した電磁波を利用したものです。ヘルツは、静電気を電源とし、放電によって電磁波が発生することを確かめました。ちなみに、周波数の単位に使われるヘルツは、彼の名前から付けられています。

火花放電による送信機も、コヒーラーによる受信機も多く研究者によって改良され、通信距離を伸ばしていきます。そして、1901年にはイタリアのグリエルモ・マルコーニによって大西洋を隔てた無線電信実験に成功し、無線通信の時代の幕が上がりました。テレビ放送や携帯電話につながる無線通信が、火花放電とコヒーラーによって始まったと考えると興味深いですね。

NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものです。工作の完成品は市販品と同等ではなく、代用品にもならないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。

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