試してフシギ

電流と磁力磁石に横取りされた音(No.233)

磁石に横取りされた音 磁石に横取りされた音

実験監修:東海大学特任教授 滝川洋二 
※監修者の役職は掲載当時のものです。
企画制作: 日本ガイシ株式会社

なんでだろう?

イヤホンのコードに磁石を当てると音が聞こえるようです。不思議ですね。

そうなんだ!

コードをよく見ると、ビニールを部分的にむいて導線を取り出し、コイル状に巻いています。そのコイル部分に磁石を当てて音を聞いていたのです。実は、この組み合わせはイヤホンのしくみにそっくりです。
イヤホン本体にも小さなコイルと磁石が入っています。磁石のつくる磁界の中で電流を流すと、電流と磁力の関係(フレミングの左手の法則)によってコイルが動きます。変化する音の信号(電流)がコイルに流れると、変化に合わせてコイルが動き、接続された振動板を動かして音を出します。音楽プレーヤーから送り出された音の電気信号は、コードの中の導線を通ってイヤホンを響かせ、また音楽プレーヤーに帰ってきます。導線の途中をコイルにして磁石を当てると、まるでイヤホンの音を横取りしたように聞こえるのです。

1. モノラルのイヤホン(長さ3m) 1個
2. ネオジム磁石
 (直径約13mm、厚さ約2.5mm) 4個
3. オーディオ機器
 (音楽プレーヤー、ラジオなど)
・カッターナイフ
・円柱状のもの
 (単3形乾電池など、
 磁石の直径と同じくらいの大きさ)
・セロハンテープ

実験で使用した材料の詳細

・モノラルのイヤホン 大創産業 φ3.5mmミニプラグ用片耳イヤホン(コード長 3.0m)
・ネオジム磁石 大創産業 超強力マグネット(4コ入)

[実験の注意]

・NGKサイエンスサイトで紹介する実験は、あくまでも家庭で手軽にできる科学実験を目的としたものであり、工作の完成品は市販品と同等、もしくは代用品となるものではないことを理解したうえで、個人の責任において実験を行ってください。
・必ず手順を読んでから工作・実験を行ってください。
・器具の取り扱いには十分注意し、けがをしないようにしましょう。
・小学生など低年齢の方が実験を行う場合は、必ず保護者と一緒に行ってください。

  • 1

    イヤホンコードの図の位置のビニールに、カッターナイフで軽く切れ目を入れ、ビニールだけを切り離します。
    ※中の導線をキズつけないように慎重に行ってください。

  • 2

    切り離した中央部のビニールに切れ目を入れ、導線をゆっくり引いてビニールを取り除きます。

  • 3

    [2]の導線を1本ずつ、磁石の直径と同じくらいの大きさの円柱状のものに巻きつけてコイルにし、ほどけないように細く切ったセロハンテープで固定します。

  • 4

    2つのコイルの巻き方向が逆になるように重ね、全体を覆うようにセロハンテープを巻きつけます。

  • 5

    [4]のコイルと磁石をテープで固定します。オーディオ機器のイヤホンジャックにプラグを差し込み、磁石を持ってコイルを耳に当てます。
    オーディオ機器を再生すると、音が聞こえてきます。

実験を成功させるコツとヒント

・イヤホンはモノラルタイプを使用してください。ステレオタイプは、コードの中の導線の構成が異なります。
・2つのコイルを重ねるときは巻き方向をよく確かめ、必ず逆方向になるように重ねて下さい。同じ巻き方向で重ねると、コイルを動かす力が打ち消し合って音が出ません。

振動板がないのにどうして音が出るの?

この実験の装置には振動板が見当たりません。それなのに、どうして音を出すことができるのでしょう? 振動板は通常コイルに取り付けられています。磁石の近くにあるコイルに音の電気信号を流すと、お互いに引き合ったり反発したりして振動します。今回はとくに振動板を設けませんでしたが、コイルを固定するのに使ったセロハンテープがその役割を果たしています。ピンと張ったセロハンテープは適度な硬さがあり、イヤホンの振動板として十分に機能するのです。振動板をもっと大きくすれば、もっと大きな音を出すこともできます。紙コップや下敷きなど、いろいろなものを振動板にして音の違いを確かめてみましょう。ちなみに、磁石を耳に当てても、かすかに音が出ているのがわかります。

電流と磁力の関係を発見したエルスレッド

現代社会を支える多くの電気機器も、電気そのものをつくる発電機も、電流と磁力の相互作用を抜きにしては成り立ちません。ところが、電流と磁力の関係を発見した「現代文明の生みの親」とも言える人物については、一般にはあまり知られてないようです。
デンマークの物理学者であるハンス・クリスティアン・エルスレッドは、1820年に大学で電気の講義の準備をしていました。電池に導線をつないだ回路のスイッチを入り・切りすると、たまたま導線の近くに置いてあった方位磁針の針が動くことに気付きます。それまで電気と磁気は無関係なものと考えられていたのでエルスレッドは大変驚きましたが、すぐに電流が磁針に作用したことを理解したと言われています。その後、学会に報告されたエルスレッドの発見は大反響を呼び、電気学の発展に大きく貢献しました。エルスレッドの名は、その功績をたたえて磁界(磁場)の強さの単位として使われています。

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